読書日和

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「終末のフール」伊坂幸太郎

2009-07-15 00:07:26 | 小説
今回ご紹介するのは「終末のフール」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。
そう予告されてから五年が過ぎた頃。
当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。
仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。
彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。
家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。
はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?
今日を生きることの意味を知る物語。

-----感想-----
八年後に小惑星が衝突して人類は滅亡すると宣告されたら、人はどんな気持ちになるのだろうと思いました。
やはり、絶望に打ちひしがれるのでしょうか。
この物語の中では暴動に走る人たちがたくさんいました。
自分が恐怖しているのを認めたくなくて、暴れて気を紛らわそうとしているようでした。
暴れたところで小惑星が衝突するという事実は変わりようがないのですが、それでも暴れずにはいられないのかも知れません。
また、ここぞとばかりに自分の暴力衝動を爆発させるような人もいました。
食糧の強奪や殺人があちこちで起き、世界は無法地帯になってしまいました。

この物語は小惑星の衝突が発表されてから五年が経過したところから始まります。
一時はパニックから暴動に走っていた人たちも、暴れたところで何の解決にもならないと気付き始め、一時的な小康状態となっていました。
その奇妙な小康状態の中、仙台のとあるマンションに住む人たちが、残り三年の人生をどう過ごしていくかが描かれています。
その中で子供を産むか産まないかで悩む夫婦の物語がとても印象に残りました。
長年望み続けた子供がやっとできたのに、人類の滅亡が迫っているという状況。
仮に産んだとしても、生まれてくる子供は二年くらいしか生きられません。
それならばいっそ、産まないほうが良いのではと悩んでいました。
絶望的な状況下でどういった決断をするのか、興味深かったです。

それと、どの短編に出てくる人も、何となく死を受け入れている雰囲気がありました。
もうどうにもならないのだから、あと三年を楽しく生きようということだと思います。
マンションの屋上に櫓(やぐら)を立てて、小惑星衝突後の大津波で街が飲み込まれていくのを見物しようとする面白い人もいました。
最後はその櫓も飲み込まれてしまいそうな気がしますが、どうせ死ぬなら街が飲み込まれるのを見物してから…ということなのかも知れません。

ある短編に出ていた人が別の短編にひょっこり登場したりする、伊坂さんらしい作品間リンクも見られました。
マンションの住人同士が少しずつつながっていて、その見事なまでのつながりぶりから、もしかすると全員どこかでつながっているのではと思いました^^
また、短編によってはちょっとしたどんでん返しがあったのも良かったです。
予想外の展開が待っているのも伊坂さんの真骨頂なので、それがあると読んでいてワクワクしてきます
全体として見ると絶望的な状況でもどこか希望の感じられる作品だったと思います。


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