村上春樹さんの大ベストセラー小説が原作の映画「ノルウェイの森」を観に行ってきました。
-----内容-----
親友・キズキを自殺で失ったワタナべは、東京で大学生活を送り始める。
ある日、ワタナベは偶然にキズキの恋人だった直子と出会い、毎週直子と東京の街を散歩するようになる。
しかし、直子の20歳の誕生日、精神的に不安定になった直子と夜を共にする。
それ以来、ワタナベは直子と連絡がとれなくなってしまう。
さらに喪失感が深まり心を病んだ直子は、京都の療養施設に入所していたのだ。
直子に会いたくても会えない状況の中で、ワタナベは大学で出会った不思議な魅力を持つ女の子・緑にも惹かれていく。
-----感想-----
冒頭からしばらくの間は、松山ケンイチ演じる主人公ワタナベの語りで淡々と物語が進んでいきました。
序盤早々に親友・キズキが自殺したことから激しい喪失の物語が始まります。
その後ワタナベは偶然キズキの恋人だった直子と再会するのですが、この場面は何だか唐突でした。
歩いていたらいきなり目の前に直子がいましたしね。
直子役の菊地凛子さんは直子の今にも消えてしまいそうな儚さを上手く演じていたと思います。
キズキの死で精神がおかしくなり、時折発狂したり錯乱したりするのも、迫真の演技でした。
緑が登場したところから雰囲気が一変し、会話がリズミカルになりました。
ここは良いターニングポイントになっていたと思います

ワタナベ君の独特の言い回しもここを境にたくさん出てきました。
一例を挙げると、
「べつにかまわないよ。僕は時間のあり余ってる人間だから」
「そんなに余ってるの?」
「僕の時間を少しあげて、その中で君を眠らせてあげたいくらいのものだよ」
こんな感じです。
クールで軽妙な、ノルウェイの森の作品世界の一つを担う大事な部分だと思うので、ワタナベ君の雰囲気が上手く表現されていたのは良かったです。
松山ケンイチさんはさすがだなと思います。
それにしてもワタナベ君は、随分多くの女の人と寝ていました。
ちと寝すぎじゃないのか?というほど。。。

原作を読んだときも思いましたが、映画で観るとますます目につきますね。
この部分を無視してレビューを書けなくもないですが、他の方のレビューを見ると結構触れているようですし、私も触れるとしますか。
ワタナベ君には永沢さんという親しい上級生がいて、よく永沢さんに誘われてナンパに出かけたりしていました。
はっきり言ってかなり遊んでいるのですが、ワタナベ君のクールな性格と作品に漂う切なさや哀しさのせいか、あまりそんな風にも見えないのが不思議なところです。
遊びたくて遊んでいるというより、惰性で遊んでいるような感じですね。
永沢さんの恋人のハツミさんという人が作品内で唯一、二人のそういった行動を咎めていて、この人だけは圧倒的にまともに見えました。
でもこの人には悲しい未来が待っているんですよね…
合計4人の人の死があるので、作品世界は喪失感に満ちています。
それを何もかも受け止めたのがワタナベ、ワタナベにとっての希望の光のようになったのが緑、喪失感そのものになったのが直子といった感じです。
ワタナベ君はクールな性格のおかげで淡々とこなしているように見えますが、実際は大揺れだったのではと思います。
後半で号泣している場面があったのは印象的でした。
その後、圧倒的な喪失感の中でワタナベ君は最期、前を向こうとしていました。
直子が療養していた寮の同室人・レイコさんがワタナベ君にかけた「幸せになりなさい。死んでしまった人の分まで」といった旨の言葉もワタナベ君を後押ししてくれたと思います。
その後のワタナベ君がどうなったのかは分かりませんが、きっと希望を持って人生を歩んでいったのではと思います。
※小説「ノルウェイの森(上)」のレビューを見る方はこちらをどうぞ。
※小説「ノルウェイの森(下)」のレビューを見る方はこちらをどうぞ。