読書日和

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「わたしの彼氏」青山七恵

2014-06-07 11:41:06 | 小説
今回ご紹介するのは「わたしの彼氏」(著:青山七恵)です。

-----内容-----
大学2年の繊細美男子、鮎太朗。
美人で怖い姉3人。
女たちはみな彼に恋をする。
けれどいつも鮎太朗が振られてしまう。
何もしていないのに包丁で刺されたり、貢がされたりする。
彼を慕い続ける可愛い同級生には、どうしても心が惹かれない―。
恋は理不尽。恋は不条理。
だけど、ひなたを走りたくなるくらいあったかい気持ちになるのは、何故なのだ?

-----感想-----
大学2年の中里鮎太朗には三人の姉がいます。
長女の藤子、次女のゆり子、三女の桃子。
長女と次女は結婚しています。
このうち、鮎太朗が悲しい時にお茶をしに行くのが次女のゆり子の家。
鮎太朗は冒頭からリリーという女性に振られてしまいました。

この物語は鮎太朗の女難の物語です。
すごくモテるのに、変な女性ばかり寄ってきて、最後には皆鮎太朗の元を去っていってしまいます。

リリーに振られた後、鮎太朗は児鳥(こどり)美津子さんと付き合い始めます。
公民館に勤める人で、鮎太朗の姉のゆり子が自伝を書こうとして、相談を受けた鮎太朗が自伝執筆補助のアルバイト募集をかけた結果やってきたのが児鳥美津子さんでした。
この児鳥美津子さんと付き合うことになったものの…最後は散々な結末になりました
包丁で刺されるというのは衝撃的だったなと思います。
そして包丁で刺されて入院する羽目になったというのに「彼女は悪くない」と言いまた彼女に会いに行きたいと思っている鮎太朗を見ていたら呆れてしまいました。

次に鮎太朗が付き合うことになったのが、サッちゃんという女子高生。
三女の桃子がインストラクターをするスポーツジムに通っている子です。
このサッちゃん(栗田聡子)、最初は良い感じの子かなと思ったのですが、「今すぐ来てくれないと死ぬ」と鮎太朗に電話をかけてきたり、鮎太朗に色々なものを買わせて貢がせたりと、最悪な女でした。
30万4000円もする高価なネックレスをねだってもいました。
鮎太朗はその高価なネックレスを買ってプレゼントするために弁当屋と歯科医院でアルバイトを二つ掛け持ちして働いていました。
大学の講義も休んでいます。
サッちゃんが最悪なのは当然として、私は鮎太朗にも相当呆れてしまいました。
なぜこんな最悪女のためにそこまでするのか?と思いました。
包丁で刺された時も思いましたが、鮎太朗は自分がどんな酷い目に遭っても相手をかばってばかりでちょっとおかしいと思います。
「恋は盲目」という言葉がありますが、鮎太朗の場合は生来の性格が相手をかばってしまうのかなとも思いました。
そしてモテる分、こういった女難に遭いやすいようです。

そんな鮎太朗を常に付けまわしている子がいます。
大学の同級生で、「テンテン」と呼ばれる新野さんです。
私はテンテンと聞くと、中学生の頃に「週間少年ジャンプ」で連載していた「花さか天使テンテンくん」が思い浮かんできます。
なぜ新野さんの愛称が「テンテン」なのか、作中では明らかになりませんでしたがとても気になるところです。
新野さんは鮎太朗にものすごく好意を持っています。
しかし肝心の鮎太朗が振り向いてくれません。
どう見ても包丁で刺した人や色々貢がせた人より断然良いと思うのですが、鮎太朗的にはテンテンはあくまで友達で、恋人としては見られないようです。
恋愛の難しいところだと思います。

鮎太朗の女難のほかに、テンテンの叶わぬ恋もこの物語の重要な要素になっているなと思いました。
どちらもハッピーエンドにはならず、テンテン以外の女性と付き合う鮎太朗と、鮎太朗だけに目が行くテンテンの、どうしても通わない両者の心がよく表れた物語となっていました。


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