今回ご紹介するのは「f植物園の巣穴」(著:梨木香歩)です。
-----内容-----
『家守綺譚』『沼地のある森を抜けて』の著者が動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす長編小説。
月下香の匂ひ漂ふ一夜。
植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。
前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神(おおげつひめのかみ)……。
人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。
自然とその奥にある命を、典雅でユーモアをたたえた文章にのせてえがく、怪しくものびやかな21世紀の異界譚。
-----感想-----
古風な文章の、怪しさの漂う物語です
歯の痛い主人公が、歯医者に駆け込んだところから物語は始まります。
この歯医者、かなり奇妙な歯医者で、白衣を着た歯科医の家内がいつの間にか犬に変身しています。
犬の姿でせっせと働く歯科医の家内に驚く主人公。
歯科医曰く、「前世が犬で、忙しくてなりふり構っていられなくなると、犬の姿に戻る」とのこと。
冒頭から怪しい物語になっていました。
歯医者で処方された薬を飲み、眠りにつく主人公。
眠りにつくと今度は夢の中での話が展開されていきます
その夢は実に不思議で、次から次へと場面が切り替わり、謎の人物達が出てきます。
ナマズのような神主であったり、カエルのような子どもであったり、この世ならざる雰囲気の人達ばかりです。
真夏の夜の香り、月下香。
この言葉は興味を惹きました。
真夏の夜の香り。。。実在する植物でもあり、どんな香りなのか気になるところです。
月下香は主人公の妻・千代の好きな花でもあったとのことです。
そしてこの物語には「千代」という名前の人が三人も出てきます。
一人は妻の千代、一人は主人公の家に仕えて幼き日の主人公の面倒を見てくれた千代、もう一人はスターレストランの女給・御園尾千代。
特に妻の千代と幼き日の主人公の面倒を見てくれた千代の二人は、何度も断片的に語られていき、物語が進むにつれその姿が見えてきます。
そこで目が覚めた。
この言葉が表すように、主人公は常に歯医者と夢の中を行ったり来たりしています。
そして行ったり来たりしながら、自分の過去を段々と思い出していきます。
蝶の幼虫が食べる葉の種類はそれぞれ決まっているというのは興味深かったです。
アゲハチョウはミカン科の木のみを食します。
ダイダイやキンカンがミカン科で、意外なことに山椒もミカン科の木とのことです。
モンシロチョウの食草はアブラナ科で、大根やキャベツや菜の花を食べます。
私は小さい頃よく祖父と一緒に畑に行っていたのですが、そこには大根やキャベツ、菜の花があったのでモンシロチョウがたくさん飛んでいたし、芋虫もいました。
しかしアゲハチョウはこの畑ではあまり見なかったなと思いました。
どこかから飛んできて通りがかったりはしたかも知れませんが、モンシロチョウのように大根やキャベツとヒラヒラたわむれているような姿は見たことがないです。
物語の後半になって、ようやく主人公の名前が分かります。
その名は佐田豊彦。
名前が出てきてから、にわかに物語はクライマックスに向けて動き出していきました。
佐田豊彦が最初は「カエル小僧」と描写していたカエルのような子どもも、その正体が誰であるのか分かります。
佐田豊彦はどんどんと、自分の過去のことを思い出していきます。
どうやら主人公はあまり自分の過去を顧みないで突き進んできていたようです。
この物語は自身の過去を振り返る物語なのだと思います。
椋(むく)の巨木の大きな巣穴が、怪しの物語への入り口となっていました。
最後まで読んでみると「なるほどそういうことか」と納得する終わり方となっていました。
梨木香歩さん、独特な雰囲気の作品を書く面白い作家さんだなと思います
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
※図書ランキングはこちらをどうぞ。
-----内容-----
『家守綺譚』『沼地のある森を抜けて』の著者が動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす長編小説。
月下香の匂ひ漂ふ一夜。
植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。
前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神(おおげつひめのかみ)……。
人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。
自然とその奥にある命を、典雅でユーモアをたたえた文章にのせてえがく、怪しくものびやかな21世紀の異界譚。
-----感想-----
古風な文章の、怪しさの漂う物語です
歯の痛い主人公が、歯医者に駆け込んだところから物語は始まります。
この歯医者、かなり奇妙な歯医者で、白衣を着た歯科医の家内がいつの間にか犬に変身しています。
犬の姿でせっせと働く歯科医の家内に驚く主人公。
歯科医曰く、「前世が犬で、忙しくてなりふり構っていられなくなると、犬の姿に戻る」とのこと。
冒頭から怪しい物語になっていました。
歯医者で処方された薬を飲み、眠りにつく主人公。
眠りにつくと今度は夢の中での話が展開されていきます
その夢は実に不思議で、次から次へと場面が切り替わり、謎の人物達が出てきます。
ナマズのような神主であったり、カエルのような子どもであったり、この世ならざる雰囲気の人達ばかりです。
真夏の夜の香り、月下香。
この言葉は興味を惹きました。
真夏の夜の香り。。。実在する植物でもあり、どんな香りなのか気になるところです。
月下香は主人公の妻・千代の好きな花でもあったとのことです。
そしてこの物語には「千代」という名前の人が三人も出てきます。
一人は妻の千代、一人は主人公の家に仕えて幼き日の主人公の面倒を見てくれた千代、もう一人はスターレストランの女給・御園尾千代。
特に妻の千代と幼き日の主人公の面倒を見てくれた千代の二人は、何度も断片的に語られていき、物語が進むにつれその姿が見えてきます。
そこで目が覚めた。
この言葉が表すように、主人公は常に歯医者と夢の中を行ったり来たりしています。
そして行ったり来たりしながら、自分の過去を段々と思い出していきます。
蝶の幼虫が食べる葉の種類はそれぞれ決まっているというのは興味深かったです。
アゲハチョウはミカン科の木のみを食します。
ダイダイやキンカンがミカン科で、意外なことに山椒もミカン科の木とのことです。
モンシロチョウの食草はアブラナ科で、大根やキャベツや菜の花を食べます。
私は小さい頃よく祖父と一緒に畑に行っていたのですが、そこには大根やキャベツ、菜の花があったのでモンシロチョウがたくさん飛んでいたし、芋虫もいました。
しかしアゲハチョウはこの畑ではあまり見なかったなと思いました。
どこかから飛んできて通りがかったりはしたかも知れませんが、モンシロチョウのように大根やキャベツとヒラヒラたわむれているような姿は見たことがないです。
物語の後半になって、ようやく主人公の名前が分かります。
その名は佐田豊彦。
名前が出てきてから、にわかに物語はクライマックスに向けて動き出していきました。
佐田豊彦が最初は「カエル小僧」と描写していたカエルのような子どもも、その正体が誰であるのか分かります。
佐田豊彦はどんどんと、自分の過去のことを思い出していきます。
どうやら主人公はあまり自分の過去を顧みないで突き進んできていたようです。
この物語は自身の過去を振り返る物語なのだと思います。
椋(むく)の巨木の大きな巣穴が、怪しの物語への入り口となっていました。
最後まで読んでみると「なるほどそういうことか」と納得する終わり方となっていました。
梨木香歩さん、独特な雰囲気の作品を書く面白い作家さんだなと思います
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
※図書ランキングはこちらをどうぞ。