里山の野草と花木 宮城県北トレッキング

宮城県北部の山野を歩き回り、季節ごとの草花や果実を撮影し、その特徴や自生地の環境等について記録する。

エビヅル 小粒な野生ブドウ

2018-09-11 | 日記
登米市中田町上沼地区の北部、集落の北側に大きな溜池があって、その堤下の
山際に、つる植物が濃密に絡みあった一角があります。
初めはノブドウかと思ったのですが、葉の切れ込みや鋸歯がどことなく丸みを帯びて
いますし、葉が厚そうでポッテリした印象です。何よりも今の時季なら生っている
はずの、ノブドウらしい実が見られませんから別物でしょう。

念のため葉の間を覗き込むと、小粒なブドウが房になって垂れ下がっています。
東北地方で小粒な野生ブドウと言えば、サンカクヅルかエビヅルでしょう。
サンカクヅルは何度か観察し、記事もアップしていますが、葉がもっとシンプルな三角
形状ですから、この野生ブドウはエビヅルということになります。
私にとっては初見ですね。




                              二枚とも2018.9.2撮影

中世以前は葡萄を「えび」と読んだようで、これが野生の葡萄類の古名だったわけです。
栽培種のブドウが我国に入ってきたころから、「ぶどう」と呼ぶようになったのだとか。
伝統色に葡萄色(えびいろ)がありますが、現代風に表現すれば赤紫色のことです。
ブドウの色は黒紫色だと思いがちですが、それは果実の皮の色で、布をブドウで染めると赤紫色
に発色するのでしょう。伝統色は、その多くが布を染めたときの色なのです。

エビヅルの分布域を調べると本州~九州となっていますから、東北地方も分布域に含まれます。
ただ、宮城~岩手県ではかなり珍しい植物です。ある記事によれば「エビヅルは暖地に多い」と
ありますから、珍しくて当然なのかも知れませんね。
宮城県より南の新潟県中越地方では、山地では稀で海岸寄りに多いとのこと。


                                  2018.9.2撮影

ブドウ科ブドウ属のつる性の落葉木本で、本州~九州に分布する。雌雄異株。
丘陵~山地の、日当たりのよい林縁や崖地、道路沿いなどに自生する。
巻ヒゲで他物に絡みついて高みによじ登る。樹皮は縦に裂け、皮目はない。小枝は帯赤褐色の
綿毛に覆われる。葉は単葉で互生し、葉身は卵形~広卵状三角形で長さ8~16cm、3~5浅裂し、
各裂片には低い鋸歯がある。葉先は鋭頭または鈍頭、基部は心形。
葉の表面は濃緑色で葉脈上に毛がある。裏面は赤褐色で全面にクモ毛がある。
花期は6~8月、花は葉と対生し、長さ6~12cmの円錐花序を出し、黄緑色の小花をつける。
花弁は5個だが、開花と同時に落ちる。両性花の花序は雄花序より小形で花はまばら。雄花は
雄しべが5個で長く、両性花の雄しべは短い。
果実は球形の液果で直径6mmほど、黒紫色に熟し食べられる。
種子は暗赤褐色のラッキョウ形で、長さは4mmほど。


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