カヤの実 丘陵地に自生

東松島市上下堤地区の、丘陵地の裾の水路沿いを歩いていて、急斜面を見上げると、
林内に丸い果実を付けた針葉樹が、何本か生えているのが見えます。
幸い小高木でしたので、手近に針葉や果実を観察でき、それがカヤ（榧）の実である
ことはすぐに判りました。寺社の境内によく植えられている木で、実は食べられます。
自生の北限は宮城県で、沿岸に程近い低山の、急斜面や崖地などに自生が見られます。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　二枚とも2017.8.11撮影
カヤの実は、かつてはよく食べられた栄養価の高いナッツです。
また寄生虫駆除にも服用されたようです。

ここでは食べることでの健康効果について記します。
カヤの実に含まれる主な成分は脂肪油やタンパク質、トコフェロール（ビタミンE）です。
脂肪油にはパルミチン酸・オレイン酸・ステアリン酸・リノール酸などが含まれているため、
カヤの実を継続して１日に３〜５粒食べると、血中の悪玉コレステロールが減少して、動脈
硬化や高脂血症の予防・改善が期待できます。

また、カヤの実特有の成分であるシアドン酸には、血清中の中性脂肪および肝臓の中性脂肪値
を低下させ、多種の不飽和脂肪酸によって引き起こされる血小板の凝集作用を抑制する効果の
あることが、ラットによる実験で明らかになっています。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　017.8.11撮影

イチイ科カヤ属の常緑針葉樹。樹高25mほどの高木で雌雄異株。
宮城県以南の本州～九州に分布し、丘陵～山地に自生する。
成長は遅いが樹齢は数百年と長く、各地の社寺などの巨木が知られている。
成木の樹皮は淡灰褐色で、浅く縦に裂け、薄く剥落する。
材は淡黄色で水に強く耐久性があり、大木の柾目は美しいので碁盤、将棋盤として珍重される。
幹は直立し、枝は水平に開出する。
葉は線型で長さ２～３cm、枝に２列に付く。葉質は革質で固く、先が針状に尖るため触ると痛い。
葉表は濃緑色で光沢がある。葉裏には白色の２筋の気孔線があるため、緑白色に見える。
花期は5月。雄花は前年枝の葉腋に多数付く。球形で淡黄緑色をしているが、花期には白褐色に
なって花粉を出す。雌花は緑色をした球形で、枝先の新枝（葉）の基部に数個つく。胚珠に繋がる
珠孔から受粉滴を分泌し、これが花粉を捉えると胚珠に導き受精する。
裸子植物なので、実ではなく種子が直接枝に付く。明緑色の仮種皮が種子を包み核果状になる。
長さ２～３cmの卵形で、翌年秋に紫褐色に熟す。
種子は淡褐色の楕円体で、かつては油を絞ったり食用とした。