気仙沼市本吉町津谷地区南部、丘陵の裾に沿った集落道を歩いていると、山側法面の枯葉の
間から、何かの根生葉らしきものが覗いています。枯葉を除けて観察すると、クサノオウで
すね。二年草で5月頃から花を咲かせるので、冬のうちから根生葉を広げて日差しを受け、
養分を蓄えているのでしょう。
クサノオウを漢字表記すると「瘡の王」で、皮膚病(瘡)の治療に効果があることから名付けら
れたようです。茎を折ると黄汁が出るので「草の黄」とする説もあるようです。
二枚とも2020.1.22撮影
クサノオウは生薬名を白屈菜(はっくつさい)と呼び、漢方では薬草として利用され、鎮静作
用や知覚末梢神経を麻痺(鎮痛)させる作用があります。
茎や葉を傷つけると橙黄色の汁が出てきますが、これにはアルカロイドのケリドリン、プロ
トピン、サンギナリン等が含まれていて毒性も強く、多量に服用した場合には頭痛、冷汗、
悪心(おしん)、血圧降下、めまい等の中毒症状があるので、民間での服用は危険です。
民間では専ら外用薬として用いられており、 湿疹には乾燥させたクサノオウの煎じ汁で患部
を洗い、疣(いぼ)やたむしには生のしぼり汁を塗ると効果があるようです。
2020.1.22撮影
ケシ科クサノオウ属の二年草で、北海道~九州に分布し、草丈は30~80cm。
日当たりの良い山裾の斜面や草地、道端や空地などに自生する。
秋に散布された種子はすぐに発芽し、ロゼット状の根生葉を形成し越冬する。
根生葉は長い柄のある羽状複葉で、小葉は5~7枚。
茎、葉など全体に長い白毛が生え、白っぽく見える。茎を傷つけると橙黄色の汁が出る。
葉は長さ7~15cm、幅5~10cm、1~2回羽状に分裂し、葉先も裂片も円い。
葉裏は白色を帯びる。脈上の毛は長くて目立つ。
花期は4~7月、花は茎頂の散形花序に数個付く。花は直径2cmほどの4弁花で、花柄は細長い。
萼片は2個、開花とともに落ちる散萼であり、開花した花の裏には萼が無い。雄しべは多数。
雌しべは2個、花柱が短く、子房が長くて曲がり、胎座は2個。
果実は長さ3~4cmの蒴果。
種子は長さ1.2~1.5mm、大きな種沈がつく。種沈は長さ1~1.4mm。
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