なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

大腿ヘルニア

2019年08月21日 | Weblog

 8月11日(日)に内科医院から鼠径ヘルニア疑いの75歳女性が当院救急外来(外科)に紹介された。外科は大学病院からバイトで来てもらっている若い先生だった。

 鼠径部に腫瘤を認めて、用手還納はできなかった。鼠径靭帯の下から脱出しているため、大腿ヘルニア嵌頓が疑われた。腹部造影CTを行って、左大腿ヘルニア嵌頓と確定診断された。外科の常勤医が診察して、手術になった。

 外科医はすぐわかるが、内科はヘルニアは苦手で、鼠径ヘルニアか大腿ヘルニアか自信がない。

 CTを見せてもらうと、冠状断で鼠径靭帯の後方(背側)から腸管が出ているので、大腿ヘルニアで間違いない(最初の冠状断が前側で、次の冠状断がそのすぐ後方)。水平断面で大腿静脈の近傍内側から出ていて、大腿静脈はやや圧迫されているので、大腿管からの脱出とわかる。(鼠径ヘルニアは鼠径靭帯の前方(腹側)から腸管が脱出する)

 

 初版から購入している「ここまでわかる急性腹症のCT」に記載あり。良書です。

 ここまでわかる急性腹症のCT 第3版

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tree-in-bud appearance

2019年08月20日 | Weblog

 5月初めに他院から、26歳女性が当院呼吸器科外来(外部の病院から)に紹介された。そちらの病院の職員で、入職時の健診でT spot陽性となっての紹介だった。

 喀痰塗抹検査は3日間陰性だった。胸部X線では見逃してしまいそうだ(CTを見てからだと左上肺野に陰影)。胸部CTでは左S1+2背側に複数の小結節と細気管支につながる粒状影(tree-in-bud appearance)を認めた。

 担当した先生が自分の病院に入院させて、気管支鏡検査を行った。気管支肺胞洗浄液で抗酸菌(ガフキー2号)を認めて、結核菌PCR陽性と判明した。

 抗結核薬4剤が開始されて、一時的に皮疹が出たりしたが対症的に対応できて、順調に予定通りの治療が継続されている。

 そちらの病院は事情があり、入職時の結核検査をT spotにしたらしい。当院でも入職時の検査にT spotを導入したいと考えているが、予算の関係でまだしていない。

 

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胆石・胆嚢炎

2019年08月19日 | Weblog

 日曜日の午前9時過ぎ90歳女性が救急外来に搬入された。前日に嘔吐して、嘔気が続いているという訴えだった。腹痛は訴えなかった。内科の日直は外部の先生だった。

 腹部は平坦・軟で圧痛はなしと判断された。血液検査で白血球数7300と増加はなかった。肝機能・腎機能・電解質は正常域にある。CRP検査は抜けたようだ。吐き気止めを処方して帰宅としていた。

 同じ患者さんが午後11時過ぎにまた救急搬入された。今度は右上腹部痛を訴えていた。同部位に圧痛を認めていた。血液検査では白血球12400、CRP12.5と炎症反応の上昇があった。肝機能検査はやはり正常域にあった。

 腹部CTで胆嚢が著しく腫大して壁肥厚もあり、内腔に複数の結石があった。胆嚢周囲に腹水貯留を認める。胆嚢結石・急性胆嚢炎だった。総胆管結石は肝機能正常からはなさそうだ。外科の当直だった常勤医が診察して、外科で入院となった。意識は清明で、バイタルは安定している。

 今日の昼に外科医に訊くと、午前中にMRCPを行って総胆管結石がないことを確認したそうだ。患者さんは認知症もなく、バイタルに問題ないので、午後から緊急手術をする予定になった。後で、内科の先生(元外科医)に画像を見てもらうと、術後管理が大変かもと言われた。

 胆嚢炎では肝機能がまったく正常でわからないこともある。この患者さんは以前の検査で、白血球3000~5000なので、後で見ると7300は上昇していた。CRPが抜けていなければ、5~10くらいの値を呈していたかもしれない。結果がわかってからなので、何とでもいえるが。

 高齢者の救急外来受診時は頭部CT・胸腹部CT・心電図をセットでとってしまうのも好ましくないが、何だかわからない時にはけっこうやっている(これも、高齢者用の一種の「破れかぶれセット」)。

 (後日記)

 手術をした外科医に訊くと、胆嚢が頸部で捻転していいたそうだ。胆石・胆嚢炎で胆嚢が腫脹したことによって、二次的に捻転したのではないかという。その目で見ると、胆嚢壁はあまり造影されていなかった。

 

 

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葉間胸水

2019年08月18日 | Weblog

 木曜日に救急当番の外科医から呼ばれて、先週の土曜日に続いて一過性の意識消失で搬入された高齢男性の入院手続きをしていた。

 救急室に循環器科医も来ていて、慢性心不全の急性増悪の74歳男性を診ていた。東京に仕事で行った時に狭心症の症状で受診して、PCIの治療を受けたそうだ。さらに三枝病変に対して来週末にCABG予定になっていた。

 その日は前日からの息切れ・胸部違和感で当院を受診していた。どんなものかと画像を確認してみた。両側に胸水貯留を認めたが、右葉間胸水もきれいに?貯留していた。教科書的な画像、という話。

 

(後日記)

 治療により葉間胸水は消失して、vanishing tumorとなった。右胸水はまだ残っているが、患者さんの希望(正確には推奨を無視)で退院していった。増悪の可能性は伝えていた。

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何の肺炎?

2019年08月17日 | Weblog

 金曜日の午後に、救急当番をしていた外科医から連絡が来た。咳込んで呼吸困難?になって救急搬入された36歳女性の診察を依頼された。

 3週間前の先月末から、咳・痰が続いていた。体温測定はしていないが、少なくとも高熱はないようだ。搬入時の体温は36.7℃だった。呼吸数は26回になっていたが、一過性の頻呼吸でその後は落ち着いていた。

 今月初めに長崎県から当県に引っ越してきた。今日は隣の県に出かけて、自宅まで戻る途中で、咳き込みから呼吸困難になって、救急要請をしたのだった。確かに咳込みといえるような咳はしていたが、その時は過呼吸になったのもあるようだ。

 胸部聴診上は異常がなく、喘鳴やラ音(crackles)は聴取されない。アレルギー性鼻炎があるが、今回夜間明け方の喘鳴はないそうだ。

 血液検査では、白血球7800・CRP0.6という値で、これだけから考えると、感冒後の咳の遷延のようではある。しかし、そうではない。胸部X線でははっきりしないが(心陰影の背側)、CTでは左下肺野に浸潤影がちゃんとある。急性肺炎だ。

 症状が出てから、当県に引っ越してきて、夫の実家が隣の県(今日出かけた県ではない)にあり、そちらのクリニックを2軒受診していた。まず耳鼻咽喉科を受診して、セフェム系第3世代の内服薬が処方された。効果はなかったという。次に内科を受診して、レボフロキサシン(クラビット)が処方された。2日内服して、めまいが生じて、子供の世話もできないくらいだったそうで、薬のせいと判断して内服を中止していた(正しい判断)。

 マイコプラズマの迅速試験、肺炎球菌尿中抗原は陰性だった。マイコプラズマだと合いそうな経過・検査所見だが、確定はできない。当院は移動途中で運ばれただけなので、居住している市内(県庁所在地)の病院に紹介してほしいという。

 住所を訊いたが、どこがいいかわからず、わかりやすい医療センターの呼吸器内科に紹介とした。来週の火曜日以降しか受診できないというので、その間抗菌薬内服を処方して経過をみる。

 何を選ぶか迷ったが(オグサワ?マクロライド?テトラサイクリン?)、マイコプラズマ狙いでマクロライドのクラリスにしてみた。

 

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油断できない熱中症

2019年08月16日 | Weblog

 先週の土曜日の早朝に、当直だった内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が、救急搬入された81歳男性を入院させていた。奥さんの話によれば、自宅内は温室状態だったそうで、熱中症と判断された。

 バイタルサインは体温が37.7℃だったが、その他は問題がないように思われた。炎症反応の上昇、CK上昇、腎機能障害はなかった。入院して点滴500mlを2本くらいで良くなるだろうと見込まれた。入院後の食事摂取も良かった。

 翌々日(振替休日)の月曜日に40.3℃まで体温が上昇した。連休明けの火曜日には38℃台に下がってきていたが、血液検査で異常値を呈していた。

 白血球はむしろ減少して(2800)、CRP4.7と上昇していた。血小板が8.6万と減少した。CK 1878・AST 88・LDH 385と入院時に正常域だった筋原性酵素の上昇を認めた。腎機能の悪化はなかった。

 患者さんはというと、普通に会話ができて重症感は感じなかったが、食欲は低下した。他の感染症が併発してようには見えず、熱中症による横紋筋融解と判断された。点滴を増やして経過をみることにした。

 翌日の血液検査で少し軽快して、今日の検査ではかなり正常域に近づいている。食欲不振は2日だけで、その後は完食していた。連休の最初でなければ翌日に血液検査を再検していたのだろうが、入院時に軽度の所見だったので、油断した形になった。

 1~2日遅れて、横紋筋融解の症状が出現したということなのだろう。熱中症そのものの本は持っていないが、一冊買って調べておいた方がいいようだ。(熱中症の予防の話が多く、病態・治療の話は少ないらしいが)

 

 

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食物が詰まった?脳梗塞?

2019年08月15日 | Weblog

 振替休日だった月曜日に80歳男性が救急搬入された。食べていたこんにゃくを喉に詰まらせて、チアノーゼを呈した。居合わせた人がなんとか取り除いてチアノーゼは軽快した。掃除機で吸引したらしい。

 救急搬入時、開眼はしているが、発語はなく、コミュニケーションはとれなかった。右共同偏視を認めた。家族の話では、普段は話もできて、右不全麻痺はあるが歩行できるそうだ。

 頭部CT、さらに頭部MRIの検査で、陳旧性の多発性ラクナ梗塞を認めるが、脳出血や新規の脳梗塞は認めなかった。窒息しかけたということで、搬入は外科扱いで日直の外科医が担当していた。低酸素によって脳障害が生じた可能性を考えたようだ。内科の日直をしていた、内科の若い先生に相談して内科入院となった。

 入院後も入院時の意識状態が続き、回復は見られなかった。頭部MRIを再検すると、右中大脳動脈領域に梗塞巣がまだらに出現していた。そしてMRAで右中大脳動脈の閉塞を認めた。他の脳血管も動脈硬化が目立っていた。

 搬入時の頭部MRI検査の時は、頭が動いてしまうので、MRI拡散強調画像で所見がなかったこともあり、放射線技師さんはMRAは動いて無理ですと報告していた。 

 脳梗塞として治療を開始したが、右中大脳動脈の本幹なので、大きな脳梗塞に進展する可能性がある。ただ、脳血管の動脈硬化から、狭窄をカバーするバイパスができているのでは、とも考えられた。

 また頭部MRIを再検したが、梗塞巣は広がっていた。MCA領域全体ではないが、さらに進行する可能性もある。

 この患者さんは、他県からお盆の行事で家族といっしょに当地に来ていた方だった。かかりつけの病院があり、脳血管障害やリハビリを行っている病院だそうだ。今週は主治医不在ということだが、家族は転院を希望されていて、病状が許せば来週中に搬送したい。

 喉に詰まらせたことと脳梗塞は、どういう前後関係になるのだろうか。

 

 

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菊池病疑い

2019年08月14日 | Weblog

 今日の内科新患は内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が診ていた。高熱で受診した24歳女性が菊池病ではないか、と相談された。当方は内科再来を診ていたが、お盆の期間でいつもよりは予約が少ないので余裕があった。

 患者さんは39~40℃の高熱で受診した24歳女性で、前回入院の時に担当した方だった。膀胱尿管逆流症があり、以前片側の手術をされたが、手術していない方の膀胱尿管逆流から急性腎盂腎炎になった。

 尿培養で腸球菌(Enterococcus faecalis)が検出され、複雑性尿路感染症らしい菌だった。手術をした病院の泌尿器科に紹介していたが、今月末に手術予定になっていた。

 今回は3日前の日曜から高熱があって、尿路感染症と思ってそちらの病院を受診していた。セフェム系第3世代の抗菌薬内服を処方されたが、高熱は続いていた。

 今日の尿検査では尿混濁はなく、尿検査で亜硝酸塩・白血球反応は陰性で、細菌も陰性だった。尿路感染症の発熱ではない。発熱以外の症状としては、前頸部リンパ節~下顎リンパ節の腫脹があり、圧痛があった。扁桃は発赤があるが、白苔はない。肺炎もなかった。

 表在エコー検査を行うと、頸部~下顎部のリンパ節が多数(左右それぞれ20以上)腫脹していて、最大は左下顎部のリンパ節で28㎜×8mmだった。

 血液検査では、白血球減少(3600)、肝機能障害(AST 172・ALT 79・LDH 333・ALP 271・GTP 43)を認めて、CRPは1.8と軽度上昇だった。血沈は検査してなかった。溶連菌とインフルエンザウイルスの迅速試験は陰性。

 確かに亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)が考えらえる。念のため、血液培養2セットと尿培養を提出してもらって、プレドニンを開始することにした。尿路感染症を来しやすい方なので、抗菌薬内服も併用とした(前回の尿培養を考慮してAMPC)。

 プレドニンの使用量と期間はフィーバー國松こと、國松淳和先生の推奨で行うことにした。プレドニン30mg/日から開始して、5日おきに5mgずつ漸減する、30日投与のコースだ。


 

 

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血液ガスの値が良すぎる

2019年08月13日 | Weblog

 COPDで通院している73歳男性が7月初めに、肺炎併発によるCOPDの急性増悪で入院していた。喫煙は継続していて、禁煙はしていない。

 内科の別の先生が担当していて、肺炎は軽快治癒したが、低酸素血症が続いて酸素吸入をやめられなかった。ちょっと相談された時はまだ5L/分で、その量で在宅酸素にもっていくのも難しいという話になった。

 肺炎が軽快していくにしたがって酸素飽和度の上昇を期待するしかない。酸素2L/分くらいになったら在宅酸素療法を導入する方針だった。酸素3L/分まで来たが、リハビリで動いた時には酸素5L/分が必要になる。

 呼吸器科外来に来てもらっている先生にコンサルトされた。肺炎の病巣が器質化しているのではないか、ということでステロイド(プレドニン20mg/日)を投与することになった。また患者さんは認知症もなく、やる気がないわけでもないので、労作時には酸素増量で呼吸器リハをもっと進めることにもなった。

 ところで、病棟でその呼吸器科の先生が、う~んと悩んでいた。室内気で測定して血液ガスの結果がおかしかった。PaO2が137になっている。酸素飽和度はちゃんと?70%に下がっている時に。

 これは、単に測定する器械が壊れているんじゃないですか、と伝えた。検査室にある血液ガスの器械で測定した値だった。同じ検体を院内の別の血液ガスの器械(手術室にある器械)で測定すると、普通にPaO2が36.9と出た。これが正しいはずだ。

 検査室に伝えて確認してもらうと、カセットの不備で、それを交換したらすぐに治ったそうだ。なんでも1か月に1回は確認しているそうだが、毎週はしていない。

 

 

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一発診断 第10回~偽性腹壁ヘルニア、亜急性壊死性リンパ節炎症(菊池病)

2019年08月12日 | Weblog
CareNeTV
一発診断
第10回 39℃の発熱と右頸部に痛みと腫脹がある33歳男性
 
Script illuness19
68歳男性
現病歴:
数日前から右側腹部のヒリヒリ感があり、其の後、ぶつぶつが出て痛痒いため受診
身体所見:
デルマトーム(Th10~11)に一致した神経痛と水泡を伴う浮腫性紅斑→帯状疱疹
2週間後 数日前から急に右横腹が膨らみ、便秘になったため受診→同領域に帯状疱疹による色素沈着
腹部CT:腹腔内病変(-)ヘルニア(-)
一発診断:偽性腹壁ヘルニア
 
偽性腹壁ヘルニア
概念:
・帯状疱疹にみられる、デルマトームに位置した欠損のない腹壁の膨隆
・後根神経節の炎症が前角・前根に波及することで運動神経障害が生じ、腹壁筋の筋力が低下することで生じる
・帯状疱疹の3~5%でみられる
・皮疹が出現して2~6週間以内に出現(平均3.5週で出現)
・男性に多い(4倍)
・Th11領域で最も多くみられる
・立位や息みで腹部が膨隆する
・腹圧の低下
・自律神経障害による腸管運動の低下→便秘・偽性腸閉塞(約20%)
・約89%の症例が2~18影地以内に完全に治癒する(平均4.9か月)
・帯状疱疹の運動神経障害の程度により、側彎や歩行障害を来すことがある
鑑別診断:
糖尿病性胸部神経根障害
・糖尿病性神経障害のひとつ(体幹ニューロパチー)
・胸神経の分布に一致した胸腹部の痛み・感覚異常
・運動枝が障害されると腹筋が弛緩し、腹部が局所的に膨隆する
・体重減少を来すこともある
一発セオリー:
帯状疱疹罹患後に腹部が膨隆してきたら・・・
偽性腹壁ヘルニア

これはまったく経験がない
 
Script illuness20
33歳男性
現病歴:
39度の発熱と頸部痛を訴えて受診
身体所見:
・扁桃の腫脹、白苔の付着はない
・右頸部に発赤、熱感、腫脹、圧痛を認め、後頸部リンパ節の腫脹(+)
検査所見:
・白血球3000/μL(異形リンパ球3%)、CRP6.0mg/dL、LDH400IU/L
一発診断:
亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)
 
亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病
概念:良性の非化膿性リンパ節炎
病因:はっきりわかっていない
・ウイルス感染
・自己免疫
・アレルギー
疫学:
・40歳未満に多い
・やや女性に多いと言われていたが、最近の報告では性差なし
症状:三徴
1.発熱(35%)
2.圧痛を伴うリンパ節腫脹(100%)
・0.5~4cm大(約90%)(ときに6cm)
・自発痛(約60%)
・片側性(約90%)
・後頸部(約90%)>鎖骨上窩、腋窩、鼠径
・両側性・全身性(約3%)
→縦隔・腹腔内・後腹膜はまれ
3.白血球減少(43%)
そのほかの症状
・倦怠感(7%)
・関節痛・筋痛(7%)
・肝脾腫(3%)
・その他:寝汗・体重減少・嘔気・嘔吐・下痢・腹痛
検査所見:
・白血球減少(43%)
・異型リンパ球(25%)
・血小板減少
・フェリチン上昇
・貧血
・血沈亢進(70%の患者で60mm/Hr)
・肝胆道系酵素上昇:とくにLDH
治療:
・数週~数か月以内に自然軽快
・消炎鎮痛薬で対症療法
・症状が強い場合もしくは経過が長い場合:ステロイドの内服(0.4mg/kg/日)(20~30mg/日)投与のタイミングの明確な基準がない
消炎鎮痛薬で症状が改善した場合は施行するまでに至らないため。確定診断されないまま治癒する
予後:
・再発例あり(3~4%)
・SLEに移行することがある(約3%)
:108人のうち15年間で2人が発症
:108人のうち5年間で3人が発症
   ↓
再発の過程で抗核抗体が陽性化することがある
注意すべき併発疾患
・SLE
・無菌性髄膜炎
・成人スティル病
・多発性筋炎
・抗リン脂質抗体症候群
・甲状腺炎
・自己免疫性肝炎
一発セオリー:
若年成人で発熱、圧痛・自発痛を伴う後頸部リンパ節の腫脹、白血球減少、LDH上昇をみたら・・・
亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)

 これは数例経験がある。症状が軽度で外来治療で軽快した症例もあった。整形外科クリニックの看護師さんが、当院の内科外来を2回受診して、その都度鎮痛薬などが処方されたが、症状が続いた。以前当院に勤務していた先生だったので、常勤医が診察するよう電話が来て話を聞いただけでわかるくらい症状が典型的だった。入院後に外科リンパ節生検してもらった症例もある。全例女性で、症例が少ないのでその後にSLEを発症したというのは経験していない。

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