村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」を呼んでいる途中。
まだ、1巻の前半なのだが、面白い。
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」までは大体読んでいたし、好きだったのだが、それ以降ビッグになりすぎてなんとなく手が出なくなった。
その後、古本屋で「海辺のカフカ」を買って、まったく意味が理解できず放棄してしまって以来縁がなかっがのだが、この間仕事の途中にふと立ち寄った古本屋で「ねじまき鳥」全3巻が300円で売っていたので、買って読み始めたら面白い。
自分は深読みしたりする能力はあまりないので、ストリー展開が面白ければそれでいいのだけれども、「ねじまき鳥」を読んで改めて感じたのは、村上春樹のレトリックがすごく楽しい。
2箇所引用すると、まず加納マルタという女性との会話の中で、マルタが名刺を主人公に差し出す。
ところがこれが「加納マルタ」という名前だけしか記載されていない代物なのだ。
実物のイメージが文章の中に挿入されている(羊をめぐる冒険でも羊男の絵が文中に確か挿入されていた)。
何これ?みたいに主人公が名刺をひっくり返して裏面を確認したりする描写も面白いのだが、そのあと加納マルタがその名刺について、パッと聞いても納得のいかない説明をする。
それに対して主人公はとりあえず「なるほど」と返事をするのだが、そのあとのレトリックがおかしくてたまらない。
(引用1始まり)「なるほど」と僕は言った。その意味のない相槌は、「ガリヴァー旅行記」に出てくる空に浮かんだ島みたいに、テーブルの上空にしばらくのあいだ虚しく漂っていた。(引用1終わり)
よくこんな表現を思いつきますね、と思う。
続いては2つ目。
主人公が奥さんとなる女性の実家に結婚の申し込みに行ったときの両親の反応について。
(引用2始まり)実際に僕が結婚の申し込みに彼女の家に行ったとき、彼女の両親の反応はひどく冷たいものだった。まるで世界中の冷蔵庫のドアが一度に開け放たれたみたいだった。(引用2終わり)
これも面白い。
やりすぎたら、読書の流れを切ってしまうような表現だが、ぎりぎりで面白い表現になっていると思った。
村上さんもこういったレトリックを書くのは楽しいのではないか、と思った。
ウンウン苦しんでひねり出しているのではないと、なんとなく思う。
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