クリエーターの佐藤雅彦さんが書いた本に「毎月新聞」というのがあります。
私は古本屋で出会ったのだが、この本が捨てられない。
それは巻頭の文章がとても印象的で、読み返すたびに背筋を伸ばしてくれるものがあるからです。
それは昨日ここにアップした「言わざるを得ない」に共通した感じでして、
なんとも変えようのない世の中の変化に個人がじりじりしている・・・それです。
「じゃないですか禁止令」
と見出しのついた小文は、1998年に書かれたもので、
最後にこう締めている。
言葉はまわりで使っていると知らないうちに自分もつかっているように、とても感染力の強いものである。
つい癖になってしまうものである。しかし、それによって、無意識に私たちが大切にしなくてはいけないことを
損なっているとしたら、それはとても危険なことなのである。
佐藤さんにそう言わしめたのは、この文章が書かれた日よりも4年ほど前に、
会社に来ていたアルバイトの若い女子大生が発した言葉だからだ。
仕事用に集めていた資料を観て彼女がこういったそうだ。
「これ余ってたらもらってもいいですか。ほら、私たち学生って、こういうレアものに弱いじゃないですか」
佐藤さんは思ったそうだ。
「えっ、弱いじゃないですかって、そんなこと知らないよ・・・」
ほしいものがあるのならほしいといえばいいのに、
個人的な欲望を一般論に置き換えているところに疑問を抱かれた。
ずるい言い方ともいわれている。
一般論とせずに、なぜ自分の要求を言えないのか。
いわざるを得ないも、おおむね一般論を語り、ではどう判断したかを聞き手に想像させるところが、
とてもずるい言い方だと思う。
だからもう一度最後に佐藤さんの文章を載せて置こうと思う。
気になりながらも世の中に流されてしまい、本質が見えなくなりがちな今の自分に活を入れるために、
「無意識に私たちが大切にしなくてはいけないことを損なっているとしたら、
それはとても危険なことなのである。」