「ディア・ドクター」なりたい自分に近づけるように

「ディア・ドクター」★★★★オススメ
笑福亭鶴瓶 、瑛太 、余貴美子 主演
西川美和 監督、2009年、127分



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「山間の小さな村のただ一人の医師が失踪した。
村の医療を支える希望の存在が、
実はニセ医師と分かるが、
本当はそんなことは重要ではないような、
人の存在の真実と嘘をあぶり出す。」


もう逃げ切れないほど追い詰められたとき、
男は医者の白衣を脱ぎ捨てて
なんとか「のようなもの」を演じていた場所から
逃げ出した。

人はきっと「なりたい自分」になろうと
努力しているハズ、
そして日々、その理想に近い自分を演じている、
こうありたい、このように人に見られたい、
いつか本当にその姿に一致するかもしれない、
もしかしたら、その場所には手が届かないかもしれない、
でもそんなこと誰にも分からないのだ。

自分だけで生きているなら、
自分のままで良いだろう、
でも誰かと触れ合うとき、
こうありたい自分が生まれる。

この映画はそんな人間の心の奥底を
ふと覗かせる、
のどかな農村のゆったりした時間の中でも
その見えたか見えないかの
魂の部分はドロドロと固まることがない、
だから心底怖いのだ。
だから忘れているような振る舞いをするのに
かさぶたにもならない傷が
ぱっくりと口を開けて赤い血の色を一瞬見せる。

忙しさに忘れた振りをしていても、
「こうありたい自分」は常に頭のどこかにあり、
偽りの部分がいつか「本当に」なる日が
来るようにと祈りながら過ごしているのかもしれない。

地方の医療問題を考えさせられるが
ここに描かれているのは
システムとかじゃなく、
人間の心の問題だった。

この西川美和 監督は、前作の
「ゆれる」　←　過去の記事を参考に
という作品で、才能がある人っているんだなと
感じたが、この新しい作品でも
同様の感想を持った、
そして素晴らしいのは伝えたい事を明確に持ち、
それを伝える才能の持ち合わせていることだ。

鶴瓶もよかったが、余貴美子の演技も素晴らしかった。

★100点満点で75点★


soramove
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この作品では瑛太はもうひとつだった、彼の心の変化が
もうひとつ伝わらなかった、何かひとつくらい印象的なエピソードが欲しかった。


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