論説委員長 芦川 洋一 この国をどうする気ですか *貴方がたにこそ向いた言葉だと芥川は思う。
文中黒字化と*は芥川。
民主党という政党は、この国をどうしようとしているのだろうか。党内で、もめごとばかりおこし、ものごとは決まらず、さっぱり前に進まない。一国のリーダーだった人が、後任者をペテン師とまでののしり、「言った」「言わない」と小学生もびっくりするような内輪もめをくり広げる。
野党時代ならいざしらず、とても政権を担っている政党とは思えない姿だ。政治の劣化がどんどん進んでいく。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。2009年9月の政権交代からまだ2年もたっていない。時期はともかく、じきに3人目の首相が誕生する。ここはひとつ、民主党政権にみる「失敗の本質」を考えてみる必要かおる。
旧日本軍の失敗の事例研究をつうじて、共通する問題点を明らかにし、今日につづく組織の教訓を読みとる『失敗の本質』(戸部良一ほか著)。今や古典となった本を本箱の奥から引っぱり出して、めくってみた。
失敗の要因を分析している中で、今の民主党に通じるものがあった。戦略目的が定まっていないと、必ず失敗するという指摘だ。
以前の民主党には、はっきりした戦略目的があった。一言でいえば、自民党政治の否定だ。1955年の保守合同からつづいてきた自民党による支配体制を打ちくだくのが民主党のよって立つところだった。
09年総選挙で、民主党は大勝し、政権を樹立した。目的が達成された。では、それからの戦略目的となると、これが定まっていない。
*そうではないだろう。時の権力に依る、反民主主義そのものだった横暴に、貴方がたが、与した結果、民主党は、当代きっての国民政治家を代表の座から失う羽目になった。
それが、現状の全て。
…中略。
政治主導の旗はいいとして、あやまった理解で官僚を排除し、官僚組織を機能停止におちいらせた。今回の大震災の対応が後手に回ったひとつの理由がそこにあるというのは、かねて指摘されているところだ。
なぜだろうかと目をこらしてみると、幹部クラスに組織運営の経験のないメンバーが多いことがあげられる。市民運動家、弁護士、松下政経塾といった出身者は、組織とは別の世界で育ってきた人たちだ。
人前で解説・説明することには、たけていても、人を動かす人情の機微にはうとい。
*芥川の読者なら、芥川が、その事は、何度も指摘し続けて来たことはご存じでしょう。
不思議で仕方がないのが、事前の根回しなどなしで、いきなり会議でものごとを決めようとすることだ。
どんな小さな組織でも、事前に、うるさ型や利害関係者には耳打ちし、時には肩ももんで、スムーズな着地をめざすものだ。根回しなど否定すべき古い自民党政治ということらしいが、組織運営の知恵に欠けていると言わざるをえない。
…後略。