文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

「令嬢たちのロシア革命」斎藤 治子著…朝日新聞6月19日15面より

2011年06月19日 15時57分06秒 | 日記
次代の女性の社会的役割牽引

評・保阪 正康  ノンフィクション作家  文中黒字化は芥川。
 
さいとう・はるこ
36年生まれ。元帝京大教授。ロシア現代史、国際関係史。

本書を読み進むうちにある感情が熟成されてくる。ロシア革命に至る道筋に顔を出す五人の女性が生き生きと描写され、まるで評伝のような手法が用いられている。

著者自身、「歴史学の枠すれすれ、あるいは枠を越えてしまったかもしれない」と書いているが、一般読者にはこの手法こそむしろ著者の意図が正確に伝わるように思える。

五人の女性(生年は1869年から84年まで)は、ロシア社会を含めヨーロッパ社会を代表する知性と行動力をもっているのだが、貴族やオペラ歌手、文官などの家庭で独自の基礎教育を受けた共通点をもっている。

その知的環境を知らされると、彼女たちはロシア革命によって自らの信念(女性の自立や社会主義による男女差別の是正など)が果たされたわけではないが、少なくとも20世紀の女性の社会的役割の牽引者になったことは疑い得ない。


五人の一人、イネッサ・アルマンドはレーニンを師と仰ぎつつ、しだいに愛情を寄せるようになるが、家庭を捨て、革命家として自立を目指す中に垣聞見える実像を著者は好意的に描く。

革命が成ったあとの1920年秋に46歳で病没するが、死直前の日記を引用しつつ、「レーニンと革命と(前夫との)子どもたち、この三つがイネッサの中では一つに溶け合っており、彼女の生きる力であった」と書く。レーニンの悲しみの記述も十分にうなずける。

ロシア革命はドイツから戻ったレーニンが、いわゆる「四月テーゼ」を示し、これが契機となり十月革命が実る。民衆にこのテーゼを知らしめる役を果たしたコロンターイとスターソワという二人の女性の役割は大きいと著者は指摘する。

その人生にも、革命理論と実践の研ぎ澄まされた融合がある。最終章で五人の女性が、革命後どのような人生を辿ったかが描かれる。各様の姿にロシア革命の悲劇も宿っていて考え込む。
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「逆パノプティコン社会の到来」ジョン・キム著…日経新聞6月19日21面より

2011年06月19日 15時20分27秒 | 日記
ネットによる市民の監視力描く

編集委員 関口和一  文中黒字化、芥川。

ジョン・キム
▼著者は73年韓国生まれ。慶応大准教授。米ハーバード大客員教授。

内部告発サイトの「ウィキリークス」、ソーシャルメディアによる中東での反政府運動、ソニーを襲った謎のハッカー集団「アノニマス」。

いずれもインターネット時代を象徴する出来事だが、世界各地で起きたこれらの事象は実は根底でつながっている。本書はその因果関係を解き明かした本だ。

副題に「ジョン・キムのハーバード講義」とあるように、韓国生まれの学者が米国での研究をもとにネット社会の今の姿を描いた。

「パノプティコン(全展望監視システム)」は18世紀に英国で考えられた監獄所で、中央の看守塔を独房がぐるりと囲み、看守だけが受刑者を監視できる仕組み。

「逆パノプティコン」はその逆で、一般市民が政府を監視できる時代がやって来たと指摘する。

内容はウィキリークスに多くを割いているが、本書の特徴はそうした告発サイトと既存メディアとの連携に焦点を当てた点だ。ウィキリークスは当初、自らネットで情報を公開していたが、途中から有力紙に情報を流し、関心を高めようとする。

既存メディアも彼らを利用し、結果的にガラス張りの情報社会が生まれたという。
その象徴が「ストライザンド効果」だ。米女優のバーブラ・ストライサンドがネット上の航空写真に自分の邸宅が写っているのに文句を付けた結果、かえって話題となった事件だ。

ネット上の張り紙に過ぎない告発情報も、既存メディアが喧伝することで、社会を動かす原動力になると解説する。さらに既存メディアの届かないところにも情報を伝播させたのが、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアだ。

チュニジアやエジプトなどの反政府運動は、専制君主の悪事をウィキリークスがあばき、ソーシャルメデーアがそれを広め、つぶしにかかろうとするとハッカー集団が襲撃にかかるという構図がある。

ソーシャルメディアで誕生した米オバマ政権は「ネットの自由」を掲げたが、皮肉にも自らの挙動を監視されるジレンマに陥っているという。今は政治がやり玉に挙げられているが、矛先は次に企業にも向けられると警鐘を鳴らす。

ネット社会のからくりを知るには格好の本といえよう。
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「経済成長とモラル」ベンジャミン・M・フリードマン著…日経新聞6月19日19面より

2011年06月19日 14時53分45秒 | 日記
生活水準と民主性の正相関説く

ベンジャミン・M・フリードマン
▼著者は44年生まれ。英ケンブリッジ大で修士号、米ハーバード大で博士号。80年よりハーバード大教授。マクロ経済学、特に金融面を重視した研究で著名。

<評>慶応大学教授 池尾 和人  文中黒字化は芥川。

 経済活動とモラルとは、往々にして対立しかねないものである、あるいは、少なくとも独立したものであるとみなされがちである。

しかし、本書の主張はそうした見方とはきわめて対照的なものである。啓蒙思想の伝統に則って、モラル (道徳)的社会とは、機会が開放されていて、異質性に寛容で民主的な社会であると定義した上で、膨大な
歴史的事例に基づいて本書は次のように主張する。

すなわち、「生活水準が持続的に改善された国々は、開放的で寛容な社会を維持し、民主的な諸制度を拡大・強化しようと努めることが多い。しかし、多くの市民が向上を実感できていない場合は、社会はより硬直的になり、デモクラシーは弱まってしまう」。

ただし、原著には欧州や発展途上国の事例も包含されているが、本訳書ではそれらは省略されており、アメリカ史に関わる記述がもっぱらの構成となっている。それでも事例は十分に多様で豊富なものであって、本書の主張の説得力は損なわれていない。しかも平易かつ闊達な記述で、長さをいとわずに読める。

もっとも、「衣食足りて礼節を知る」的なメインの主張以上に、評者にとって一層興味深いと思われたのは、その例外や逆の側面について論じている部分である。

例えば、第7章「極端な例外としての大恐慌」では、限定的な景気下降のときには防御的になる人々も、社会の真の危機に際しては、その道徳的資質を発揮したことが述べられている。

この事例は、本書の主張に対する反例というより、むしろ経済成長に対する基本的に肯定的な本書の見通しを支持する事例といえる。また開放的で寛容な社会ほど、教育機会の拡大を通じて人的資本形成を促すことになるので、より経済成長が高まるといった逆の因果関係の可能性もある。

教育の改善を中心に、公共政策として何をなすべきかを論じた最終章も示唆に富んでいる。

アメリカのリベラルで最も良質の知性による考察である本書を読むと、単に多くのことが学べるだけではなく、何か前向きで楽観主義的な勇気が与えられる感じがする。
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とぼけた政治家に巻き込まれたくない 藤巻健史…週刊朝日6月24日号より

2011年06月19日 14時37分25秒 | 日記
…前略。

ニヤッとできないどころか怒りさえ感じるのが、今回の首相の不信任決議案をめぐるドタバタ騒ぎだ。

本当にとぼけたヤツらだ。だましたヤツが悪いのか、だまされたヤツが悪いのか、そんなことはどうでもよい。日本はあらゆる意味で国家存亡の危機である。真剣になるべき時は真剣になれ!


財政が極度に悪化した段階で大震災が起きた。これだけの危機なのに、国力の通信簿である円は強く、国の借金返済能力につながる長期金利は超低位で安定。株価も暴落したわけではない。それをもって、「市場は先を読む。日本国の将来は明るい」と分析する人がいる。それが正しければ、こんな結構な話はない。

しかし、コップが机の端から1センチのところにあろうとも1メートルの遠くにあろうとも、コップの中の水は同じように平穏無事で危機に気がつかない。

だが、コップが机から落っこちたら大変なことになる。日本の市場は残念ながら、机の端から半分飛び出しながらも、かろうじて落ちていないコップの中の水と同じ状態だと私は思っている。

政争に明け暮れているとぼけた政治家たちのせいで生命はもちろん財産を失うのはまっぴらだ。今こそ、自分で自分の財産を守らなくてはならない。それには外貨建て資産への分散投資が必要だ。火災保険の加入と同じ発想だ。

「日本国没落」が杞憂に終わった場合、国力の通信簿である円は強含む。1ドル=80円で買った米ドルは60円になっているかもしれないが、その損は支払った火災保険料ととらえるべきだ。

火事が起こらなくても火災保険料をむだにしたと怒る人はいない。
もし国家存亡の事態が現実になれば1ドル=1千円になる可能性もゼロではない。そのようなとき、仕事や財産を失っても、1千円になったドルを売り、その売却益で生活が保障される。その時こそ、外貨資産を買っておいてよかったなと思うだろう。外貨資産という保険が功を奏したことになる。

ちなみに、1ドル=1千円というのは、あくまでも「可能性はゼロではない」と言っているにすぎない。

「可能性がある」と言っているわけではないので、ご注意願いたい。班目春樹・原子力安全委員長の発言が「再臨界の可能性がある」から「再臨界の可能性はゼロではない」に修正されたことを思い出してほしい。

「1ドル=1千円の可能性がある」、すなわち可能性が高いと理解されては、私のディーラーとしての人生が終わってしまう。あしからず。
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忘れられない一冊 親友の顔が一瞬に曇った…週刊朝日6月24日号より

2011年06月19日 14時25分07秒 | 日記
張競 ちょう・きょう=1953年、上海生まれ。明治大学教授。著書に『海を越える日本文学』など。

書物をめぐる記憶はつねに快い気持ちを伴うものとは限らない。ときには不意の痛みをよみがえらせることもある。

小学校時代にはY君という無二の親友がいる。ともに登下校し、放課後も一緒に宿題をしたり、遊んだりしていた。Y君は顔立ちが可愛くて、数学の成績も抜群にいい。それだけでも女子生徒にモテるが、彼はなんと小学校の低学年から子役とし。て映画に出演していた。

小学校を卒業した後、運良く同じ中学校に進学した。中三のある日、彼は何か重大な秘密でもあるように僕を呼び出し、途轍もなく面白い小説がある、と言って一冊の本を貸してくれた。表紙をみると、ツルゲーネフの『初恋』であった。

そのとき、まだ文化大革命の真っただ中で、『初恋』はいうにおよばず、ツルゲーネフという作家の名前も初耳であった。ところが、読み始めたら止まらなくなった。それまで見たことも聞いたこともなかった情緒世界で、恋愛とはこんなに美しく、清らかなものなのか、と夢想を膨らませていた。

大方の若者が夢想するのにとどまったが、早熟のY君はいち早く夢を現実のものにしようとした。もともと女子生徒の憧れのまとであったから、恋人ができるまでにはそう時間は長くかからなかった。桃色の噂が広まったのはいいが、約一年後、学校から懲戒処分を受けた。

あろうことか、彼は同級生の女子生徒を妊娠させてしまったのだ。
当時、青年学生の思想改造の一環として、高校生も全員、年に1ヵ月ほど農村に働きに行かなければならない。Y君が寝泊まりしている村は僕が泊まっていた村から徒歩一時間もかかるところにあった。

ある日の夜、僕のところに訪ねてきた彼は、部屋の一角に腰を下ろし、いつものように雑談しはじめた。何かの拍子に『初恋』の話を持ち出すと、なぜか彼の顔は一瞬に曇り、さりげなく話題をそらした。

数日後に、思いもよらぬニュースが飛び込んできた。Y君は上海市内で自殺したという。馴染みの料理屋で大好きな焼き鮫子と小龍包を食べてから帰宅し、殺虫剤を二本も仰いだ。

理由ははっきりわからなかったが、恋愛をめぐるトラブルによるものらしい。
悔やまれる、早過ぎる死であった。
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私が彼等の突然のキャンペーンを「おためごかし」と断ずる理由

2011年06月19日 14時12分03秒 | 日記

孫正義が突然主導し、それに賛同すると称する軽薄な首長や議員たち、あるいは結構な有名人達が繰り広げるキャンペーン(例えその中に幾人かのたいじんの名前があったとしても)…原発を廃止して太陽光発電等のエネルギーに切り替えようというキャンペーンには、私は与しない。
何故かは言うまでもない。
原発が駄目であれば火力発電に向かうのが当然だろう。
増してや地球温暖化などという、いい加減で、きちんとした学術的検証がなされていない話が火力発電までも悪役としたわけなのだから。
およそまともな知性の持ち主ならば、フクシマの後に直ちに、国家の為に石炭や天然ガスの確保、及び発電準備に向かうのが、まともな大人というものだろう。
現在の技術的なレベルでは、太陽光発電や風力発電で各国が必要としている電力を賄うことが出来ないのは幼稚園児のレベルでも分かる話だ。
肝心の一番大事な、過程が抜けているのだ。
そういう論説を、私は、おためごかしと言うのだ。
だから、絶対に、彼らに与する事はない…例え、そこにたいじんの名前があってもだ。

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まだまだ元気?また視察…朝日新聞6月19日4面より

2011年06月19日 13時29分21秒 | 日記
菅直人首相は18日、東日本大震災による液状化被害を受けた千葉県習志野、浦安両市を視察した=写真、河合博司撮影。浦安市内で記者団に「大きな被害があることが改めて分かった」と語った。

…後略。

3月11日以降、テレビを見ていた人間の誰もが…つまり、ほとんど日本国民のすべてが知っていた事を、3ケ月以上も経った今頃になって、このような感想を平然と漏らす無知性、無神経。

(以下文中敬称略)

このような者を首相にした、朝日新聞の論説委員、星浩と、このような者を突然、自分の思いつきに、とことん利用しようとしているソフトバンクの孫正義達の罪は海より深い。

芥川は、上記両名は人間としても最低だと思う。
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フランク・ロイド・ライトと日本人…日経新聞6月19日16面より

2011年06月19日 13時20分00秒 | 日記
帝国ホテル旧本館ロビー

…前略。

助手を務めた建築家アントニン・レーモンドの自著によると、ライトが装飾に注いだ情熱は並々ならぬものだったようだ。

「窓枠も、家具も木や石の彫刻も、じゅうたんもカーテンも、あらゆるもののデザインが、枯れることのない泉のように、彼の手の中からはとばしり出たのである」 (「自伝 アントニン・レーモンド」三沢浩訳)

愛知県の常滑にあった「帝国ホテル煉瓦製作所」にテラコッタのスケッチやレンガの見本などを送り付け、満足いくものが東京に届けられると、さらに複雑なデザインの見本を送ったという。

「日本の職人の器用さに触発されて、発想をどんどん豊かにしていったのではないか」。2005年、同製作所が使った土を探しだし、帝国ホテルのテラコッタなどを復元したINAXライブミュージアムの後藤泰男学芸員はそう話す。

帝国ホテルのために同製作所が製造したテラコッタやレンガは最終的に400万個を数えた。
ライトは自らの建築と装飾について独自の考えを持っていた。建築はただのシェルターではなく、周囲の自然とつながり、変容していく生命体のようなものととらえていたのだ。

装飾も単なる飾りではありえない。植物が花を咲かせたり、実をつけたりするのと同じように、「内側から表出するもの」だ。光と水、空間を求めて成長する植物は、周囲の環境と出合い、その場固有の形を造り出していく。建築と装飾の理想をライトはそこに見いだした。

1955年、「タリアセン」と呼んだ自らのスタジオで、ライトが建築を学ぶ若い弟子たちに語った美しい言葉を引こう。知人が海岸で拾い集めたという貝殻を贈られたライトは、その小さな「家」にすっかり魅了された。

「この美しい、無限の変化に富んだたくさんの小さな『家』をよくえてごらん。確かに貝という下等生物の家ではあるけれど、このささやかな例証は、生命の驚くべき発露だとは思わないかね? 目眩がするほどの多種多様なフォルム、その着想はとこから来るのだろうか?」 (ライト「有機的建築」三輪直美訳)

様式にこだわり、ただの「物体」になってしまった人間の住居を嘆きつつ、ライトはさらに続ける。
「貝に刻まれた模様や、素晴らしいフォルムは、すべてが貝殻の成長につれて、内側から発せられる生命の力によって形成されるエネルギーの触発なのだ。(中略)原理が生きているかぎり、無限の多様性へ向かう道を閉ざすものはなにもない。この小さな美を見なさい。小さくていとおしい固有性を!」
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IHI 三菱重工 川重 主力機エンジン開発参画…日経新聞6月19日1面より

2011年06月19日 13時01分13秒 | 日記
エアバス向け 炭素繊維を活用
4000機分、1兆円見込む


【パリ=松井健】IHI、三菱重工業、川崎重工業の3社が、欧州エアバスの小型航空機用エンジンの国際共同開発に参加する。2016年に商業運航を始める最量販機種の次期モデル向けで、開発費は1000億円規模。

日本3社が提供する軽量・高強度の炭素繊維複合材料の技術を民間機エンジンに初めて本格採用する。

巨額の資金と高度な技術を必要とする航空機開発は国際共同開発の流れが加速しており、日本勢は強みを持つ素材技術を武器に存在感を高める。(航空機エンジンの国際共同開発は3面「きょうのことば」参照)

開発を主導する米エンジンメーカーのプラット・アンド・ホイットニー(P&W)、独MTUと最終調整に入った。経済産業省系の財団法人、日本航空機エンジン協会 (東京・港)を窓口に米欧メーカーと開発費の分担比率や技術提供の範囲を詰めている。

エンジンはエアバスが開発中の120人から180人乗りの小型旅客機 「A320neo」に搭載する。国内線や短距離の国際線に使い、先進国だけでなく新興国でも需要が増えている。エアバスは今後15年で4000機の受注を見込み、エンジン販売・整備だけで1兆円超の売り上げになるとされる。

日本側はIHIなどが研究開発してきた炭素繊維の採用を提案し、米欧側も大筋で合意した。アクリル繊維などからつくる炭素繊維は東レなどの日本企業が世界シェアの7割を握る。

これを樹脂と混ぜ合わせて焼き固め、複合材料とする。エンジンに空気を取り込む回転翼部分とその周辺への採用を想定している。航空機エンジンの部材はチタンが主流だが、炭素繊維を使えば軽量化ができ、燃費性能を1割程度高めることが可能とされる。

硬度も高く、飛行中の鳥の吸い込みなどにも耐えられる。米ボーイングやエアバスは主翼など機体には炭素繊維複合材料を採用済み。より高い水準の耐熱性や耐衝撃性を要求されるエンジンに使うことで、技術水準が一段と高まり、自動車や高速鉄道などでも採用が広がる可能性がある。

日本政府は幅広い産業での利用が見込めるとして、炭素繊維複合材料の開発支援を続けてきた。今回の国際共同開発への参加も「日本のお家芸の技術が世界で生きる」(経産省)と後押しする考え。

部品などに加工する際に手作業が多く、加工にかかる時間が長い点などが課題だが、商業化に向けて生産量が増えればコスト削減などが進みそうだ。

▼炭素繊維複合材料炭素繊維に樹脂を混ぜた材料で、鉄に比べて強度が10倍、軽さは4分の1程度。金属疲労がなくさびないなどの特性を持つ。繊維の編み方や、これを成型・加工する技術に三菱重工業など日本企業は優れているとされる。

航空機の機体材料では従来のアルミニウムに代わって主流になりつつあり、米ボーイングや欧州エアバスの新型機では5割以上の割合で使われる。
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