それにもう一つ、日本の政治過程とアメリカの政治過程とを比較するうえで重大なことがある。
アメリカにおいて異常で矮小な人物が権力を握っていてはならない。
アメリカ人は、かかる人物が権力の座にあることを許さない。何としてでも引きずり下ろそうとする。このことである。
この点、どんな異常な人にでも、どんな阿呆にでも、権力を預けても平然としている日本人とは根本的に違う。
「日本国民に告ぐ,小室直樹」ワック出版,P114-115より抜粋
「日本の総選挙に、香港も興奮」。
弊社の香港駐在記者が、日経MJ紙にこんな記事を送ってきた。
総選挙といっても永田町と関係ないことは、今さら言うまでもないだろう。
9日の夜に東京・武道館で開かれた、あのイベントのこと。
▼「選抜総選挙」。アイドルグループ、AKB48のメンバーをランク付けするファン投票だ。
日本では国民的な行事めいてきた開票の模様が、海のかなたでも生中継されたのだという。
会場となった繁華街の映画館には、およそ700人の若者が集まったそうだ。
普段、映画を見るときの4倍以上の入場料を払って。
▼4年に1度の米大統領選挙は、しばしば「制度化された革命」と形容される。
確かにAKB48の総選挙からも、革命の持つ熱気のようなものを感じとれる。
当選した候補者、じゃなかったランクが上がったメンバーたちのうれし涙と、ランクが下がったメンバーの悔し涙。
それをわが事のように感じるファンたち。
▼振り返れば、衆院選で民主党が大勝したのは2年近く前。
あの時は「制度化された革命」を日本でも、という熱気がこの国を覆っていたように思う。
残念ながら、今となっては幻滅が日本を覆っている。
選挙のたびに人気を高め、海外にまでファンを広げるアイドルたち。
永田町の方々は、せめて爪の垢でも……。
6月14日、日経新聞1面、春秋より。