文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

新中国へ生みの苦しみ…日本経済新聞6月12日(日)3面より

2011年06月12日 15時25分51秒 | 日記
編集委員 吉田忠則

インフレに不動産バブルに10%近い成長率--。

中国経済は相変わらず過熱退治と減速懸念の間で揺れているように見えるが、実は根底で先の見えない変化が始まりつつある。

中国株の上海総合指数は4月に3000を超えてから下がり始め、最近は2700台で低迷している。中国の証券会社に聞くと「金融引き締めのせい」。足元はそれで説明がつく。

ただ2007年秋に6000を超えた上海指数は世界同時不況で1600台に落ちた後、3000を超すとはじき返され続けている。株価が景気の先行指標なら、一貫してさえない指数は何を示すのか。社会には奇妙なムードが漂う。

「共産党がなければ新しい中国はない」。5月上旬、内陸の中核都市、重慶の大学で学生の歌声が響いた。毛沢東時代に歌われた革命の歌である「紅歌」だ。キャンペーンを進めているのは重慶市共産党委員会の薄煕来書記。来秋の党大会で党の中枢に入ると目されている一人だ。

「紅い重慶」の動向は全中国の注目を集めている。

昨年11月には大学生が農民と寝食を共にして働き、工場で汗を流し、軍隊で訓練する制度を始めると重慶市政府が発表した。時代錯誤にみえるこうした動きが必ずしも猛反発を受けないのは、党の圧力のせいだけではない。庶民に広がる「昔は貧しくても平等だった」
という思いがある。

中国はりーマン・ショック後に経済規模で日本を抜き、一段と存在感を強めた。だが巨額の景気対策は格差を増幅し、不平等な社会の実態をあからさまにした。2ケタ近い高成長を続ける国が、年5%前後の物価上昇に神経をとがらすのも、庶民の不満の高まり抜きには理解しにくい。

一方でいくら昔が懐かしくても、計画経済に戻れるわけではない。

中国人民銀行(中央銀行)は今年4月から「社会融資総量」という指標を公表し始めた。一定期間に社会に供給された資金の総額と内訳を指す指標で、1~3月は融資の比率が全体の約5割にとどまった。

かつては大半が融資だった。代わって増えたのは株式や社債、保険などを通じたマネーだ。人民銀の幹部は「融資量だけで金融と経済の関係を示すことはできなくなった」と強調する。行政命令で融資を増減させるだけでは経済をコントロールしにくくなる。

中国はおよそ10年ごとに大きな節目を迎えてきた。1989年の天安門事件で国際的に孤立したが、92年の小平の南巡講話で市場経済ヘカジを切った。01年には世界貿易機関(WTO)に加盟した。「世界の工場」が姿を現した。

さらに10年。ファンネックス・アセット・マネジメント(東京・千代田)の肖敏捷チーフーエコノミストは株価の低迷について「人万が興奮するような明るい材料がない。中国は次の時代への生みの苦しみの中にある」と語る。

課題ははっきりしている。平等な社会、効率的で公平な経済を目指す。「安くて豊富な労働力」は過去のものになり、成長率さえ高ければよしとする時代は終わりつつある。中国と切り離せなくなった世界経済もまた、中国の歴史的な変化の影響を免れない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ナショナリズムと想像力」…朝日新聞6月12日(日)13面より

2011年06月12日 15時21分06秒 | 日記
「ナショナリズムと想像力」ガヤトリ・C・スピヴァク〈著〉
 評・中島 岳志 北海道大学准教授・アジア政冶

自由や平等、民主主義などの諸価値を実現するためには、ナショナリズムの想像力こそ有用だとする「リベラル・ナショナリズム」論に注目が集まっている。

セーフティーネットが崩壊する中、再配分への動機づけとして「同胞への愛着や信頼」を活用しようというのだ。社会民主主義者のようなリベラリストが、ナショナリズムの機能を再発見しようとしている。

しかし、スピヴァクの主張は異なる。彼女は国家による再配分を維持・強化しながら、ナショナリズムを放棄する道を模索する。

現在の国家は、ネイション・ステイト(国民国家)という形態をとる。これは国民主権の実現を目指したフランス革命によって誕生した。
ナショナリズムは「国家は国民のもの」という主張によって政治化し、絶対王政を崩壊させた。

しかし、ナショナリズムは国民の凝集力を高めるために、想像上のナラティブ(物語)を装う。忘却されていた歴史が発見・想起され、特定階層の文化が国民文化として称揚される。その力学が文化的・民族的他者を排除し、国民を同化する。

スピヴァクの見るところ、国家はあくまでも「抽象的な構造体」であり、個人の実存的なアイデンティティとは別ものである。だから、国家はネイションから脱皮し、「シヴィツクーステイト(市民国家)」へと転換する必要がある。

スピヴァクは、ナショナリズムの「魔法」を解くために、「比較文学者の想像力」を重視する。この想像力は、あらゆる言語表現を等価的なものと見なす視点を育成し、単一的ネイションに還元されないアイデンティティを構築する。

ナショナリズムは無用の長物なのか。国家機能を維持しながら、ナショナリズムを放棄することなど可能なのか。

「私は完全にユートピア主義者です」と断言する彼女の議論は、ユートピア的であるがゆえに論争的である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

共通の尺度皆がプロ意識…日本経済新聞6月12日(日)7面より

2011年06月12日 15時15分29秒 | 日記
日立製作所社長 中西 宏明社長
グループ36万人、どう使いこなす?


日立製作所が世界規模で人材活用を進めようと新たな人事制度を導入する。世界900社超のグループ会社で働く全従業員36万人の人材データベースをつくり、管理職以上の評価基準も世界で統一する。報酬の仕組みも変える。その狙いを中西宏明社長に聞いた。

――なぜ世界規模の人材管理が必要なのか。
「海外展開を進めるには、グループ間の人材交流を活発にして日立の文化をグローバルなものに変えないといけない。日本は世界の一地域でしかないとの意識改革も必要だ。終身雇用など日本の特殊性を否定する必要はないが、海外に押しつけてもうまくいかない」 

「仕事への積極性で日本人に勝る現地社員は多い。彼らをうまく使いこなせないと、必ず経営に遅れが出る。だから現地に司令塔機能を持たせ、経営させることが大事になる。優秀な経営幹部層を世界から見つけ出したいとの思いもある」 

――人材データベースや世界共通の職務評価制度を導入する狙いは。
「採用、評価、処遇、教育の各種施策を、これからグローバルで統一していく際の基礎情報になるのがデータベースだ。今後、日立グループとして注力していく(環境配慮型都市開発などの)パッケージ型インフラ輸出には多様な人材を適所に集める必要がある。その際にデータベースが役立つ。今は誰がどこにいるかわからない状況だ」

――報酬の仕組みはどう変わるのか。
「日本の部長級が米国法人に異動して副社長になっても、報酬を日本の基準で決めると米国人の副社長より低くなる。実際、私かハードディスク駆動装置(HDD)をつくる米国子会社のトップだった時、優秀な日本人の部下を米国に呼び寄せようとしたら嫌がられた。共通の評価制度を導入すれば、こうした状況も変わる」
「日本の給与体系もいずれ、この仕事ならこの賃金という職務給に近づくと思う。外国人と同じ体系になれば、日本人がプロ意識を持つようになるはずだ。それも狙いの一つ。居心地が悪いと思う人がいるくらいがちょうどいい」

――企業にとり人事情報は機密のはず。上場子会社の独立性が失われないか。
「日立製作所はクループ会社が海外進出する際に、人材面など様々な支援サービスを提供したいと考えてる。どんな人材構成で攻めるべきか提案したり、必要なら日立本体や別のグループ会社の人材を引き抜く支援もする。グループ会社は自分の業界内で勝ち残るために、グループ内の人材をどんどん使ってほしい」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国会は一年中働こう…日本経済新聞6月12日(日)2面より

2011年06月12日 15時07分51秒 | 日記
<前文略>

ここ何年かの政治の動きを踏まえれば、通年国会にする利点として、首相がいつ辞めようが、すぐ国会で新首相を選べることを挙げてもいいかもしれない。

国会が1年中開いている通年国会はいいことばかりではないか。

(編集委員 西田睦美)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする