「権力チェックはここまで許されるのか」-。出生の秘密に迫った本誌先週号の記事に橋下徹知事(42)が怒りを爆発させた。だが独裁者になるという為政者をメディアが監視するのは当然だ。民衆を扇動する権力者はいかに生まれたのか。20人以上の証言からその半生を辿る。
今やヒトラーにもたとえられるほどの大権力者となった橋下知事。彼のツイッターには実に多くのフォロワーがいる。その発言で、目下、注目を集めているのが、本誌先週号の「『』『暴力団』の渦に呑まれた独裁者『橋下知事』出生の秘密」と題した記事に対する彼の批判である。内容は大要、次の通りだ。
〈僕は公人だから、何を言われても、しょうがない〉〈本人や成人の家族はある程度やむを得ない。しかし、子供は別だと思う〉
〈親が公人でも子供の権利は最大限尊重されるべき〉 つまり、自分の子供の存在を前面に出し、批判を展開しているのである。
しかし、権力を握り、独裁者になると過激に宣言したのは誰だったのか。そんな為政者に対し、メディアが監視を強め、その苛烈な言動の源泉を追うのは当然ではないのか。もし、彼の言い分が通れば、未成年の子を持つ為政者に対し、メディアは不祥事を報じられなくなるのではないか。
かつて橋下知事は、全く逆の発言をしていた。
昨年7月、知事はサッカーW杯で活躍したカンパ大阪の遠藤保仁選手に「感動大阪大賞」を授与した。その際、遠藤選手に会いたがっていた子供3人を知事室に入れて、引き合わせていたことが判明。記念写真を撮ったうえ、サインボールをもらっていたのだ。この一件を公私混同と批判され、彼は会見で反論した。曰く、「政治家ファミリーには制限もかかる。個人と家族は別というなら、有権者の皆さんにも考えを変えてもらいたい。政治家のファミリーとして見てもらいたい」と開き直ったうえで、「サインが欲しければ、そのお父さんに知事になってもらい、厳しい親子関係に耐えてもらうしかない」と半ば逆切れした。何かとしわ寄せを食う知事の子供には、これくらいの特権があってもいいだろうと明言したのである。
ところが、今回は、〈親と子供は別だ。日本社会の、人権尊重、子供の尊重というフレーズはど絵空事か〉(ツイッターより)
ご都合主義、ここに極まれりとは言えないか。
遠藤選手との件などについて問い質すべく本誌は橋下氏に取材を申し込んだ。すると10月31日、本誌が送付した取材依頼書と、それに対する〈回答〉が橋下氏のツイッターに掲載された。だが、そこでも彼は〈子供は違う〉と従来からの主張を繰り返すばかり。公私混同と叩かれた当時、「政治家のファミリーとして見てもらいたい」「(サインが欲しければ)子供のお父さんに知事になってもらい」などと発言したことについての納得できる反論はなされなかったのである。
ある時は白と言い、ある時は黒と言いつのる。詭弁を弄することにかけては右に出る者がいないこの権力者は、大阪の救世主となるのか。あるいは大衆を誤導する危険な扇動者なのか。本誌は、幼少の頃から今に至るまで、間近で彼を見た同級生や恩師ら、関係者20人以上から証言を得た。その肉声で辿る、変節の半生をご紹介しよう。
…後略。