すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

難解・・・意志疎通

2008-08-07 22:51:17 | うちのキヨちゃん
 うちのキヨちゃんは、話の飲み込みが悪い。耳が遠いこともあるのだが、思い込みが激しいのか全く話がかみ合わないことがある。そういうときは、私も説明に困りどんどんはまりこんでいく。
 一度はこんなことがあった。電話帳を見ていたキヨちゃんが私に聞いた。
 「後藤のゴってどう書きよった?」
電話帳で電話を掛ける相手の番号を調べたいのだが、字が分からなかったのだ。
 「後ろ」
 「う、じゃなくて、ご」
 「いや、だから後ろって字。前後ろのうしろ」
そんなやりとりの後、キヨちゃんは平然とこう聞いた。
 「ちゃうわ!それは漢字やろ?ひらがな聞きよるんじゃ。」
 「・・・・。こ・・・に点々。」
 しっかりしろ!と突っ込んだのは言うまでもない。平仮名でいいのか?平仮名で?ていうか、平仮名で「ご」が分からなければ心配である。
 先日はこんなことがあった。自宅に仕事の電話があり、急いで電話のところのノートに走り書きした。翌朝会社にメモを持っていくつもりが忘れたので、急いで自宅に電話した。
 「電話の棚に赤いノートあるやろ?」
そう聞いたら、キヨちゃんはあっさり
 「いや、ない。」
と答えた。
 どこかに移した記憶はないし、思いがけない返事にしばらく戸惑った。
 「え?そこにあるやろう。赤いノートでよ。あんまり大きくない。」
 「ないって言いよるでえ!」
 「ほな、私どこか持っていったんかえ?テーブルと、私のベッド見て。」
ありえないと思ったが、一応そう聞いた。もしも動かすとしたらそこくらいしか思いつかない。
 「もう!一回切るでよ、気が気でない!」
と切れ気味のキヨちゃん。
 しばらくしても連絡がないので、再度掛けてみる。
 「ないないない!」
電話の相手も確認せず野第一声。そんなはずはない。
 「よう見てや。赤いノートでよ。母ちゃんが自分の血圧書きよるだろ。それと同じ位の大きさで、赤いやつ。ノートって分かる?線が引いてあって、字書く奴でよ。」
 「ほなけん、赤い字で何て書いてあるんで?」
・・・・・。
 「何も。赤いだけのノート」
 「あるよ~。」
・・・・。
 「その一番後ろのページに、時間とか書いてない?」
 「あ、書いとるよ。」
 何だこの展開は。
 「だから、さっきから赤いノートがないかって電話しよったろ。」
力無くそう言った私の耳に軽快な笑い声が聞こえてきた。
 「はは~。ごめんなしゃ~いい!」
何年子供を努めても、意志疎通は困難である。

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コメント (4)
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