おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

プレゼントの結び

2010年12月05日 11時31分16秒 | 小説・短編つれづれ
トゥーサ・ヴァッキーノさん『プレゼント』(『ボッコちゃん』より)
haru123fuさん『トゥーサ・ヴァッキーノさんの「プレゼント」のつづき』
つとむューさん『続きの続きのプレゼント』
の続きです。


 今日はクリスマス。一体何年ぶりだろう? ショウタの経営するホテルでささやかなパーティーを開いている。
 ノボル、アツシ、ショウタ、メグちゃん、ミツコちゃん、ユミちゃん……小学校からのメンバーが揃った。
 本日の主役はまだ登場していない。今年二度目の晴れ舞台に、もしかしたら裏で緊張しているのかもしれないな。
「結婚おめでとう!」
 主役の登場に、全員が手に持ったクラッカーを鳴らす。拍手で迎える。
 カトーは新郎の手を握りながら、幸せそうな笑顔で応えた。
「良かった。みんな幸せになって」
 看護士の方のカトーさんが、僕の隣で呟いた。続けて僕に向かって言う。
「あなたもですよ」
「そうですね。ありがとう。カトーさんのお陰です」
「どっちの?」
「あなたに決まってるじゃないですか……いや、違うか。妹さんも含めて、みんなのお陰かな」
「その通りですね」
 みなで、山盛り出てきたショウタんとこの唐揚げスペシャルをパクついていると、ミツコちゃんがピアノの演奏を始めた。
 あ、この曲……
「さっき聞いたんだけど、カトーさん……あ、もう苗字違うか……彼女の、思い出の曲なんだって」
「ふうん」
 僕は、久し振りに、手に持った「オルゴール」のねじを巻く。
 すると……人も、未来も、ちゃんと目の前に広がっている気がした。
 そしてミツコちゃんの演奏は、相変わらず抜群に上手だった。

サンタクロースの石川さん

2010年12月05日 01時58分24秒 | 小説・短編つれづれ
 石川さんは悩んでいた。
 今の世の中、何をプレゼントすれば子供達は喜んでくれるんだろう?
 石川さんは、今年の夏にフィンランドでサンタクロースの世界公式資格を取得したばかりである。
 資格を取る際、妻は意外と応援してくれた。しかし、友人の評価はさっぱりだった。
『気でも違ったか。今の子供は親に直接クリスマスプレゼントをねだるくらいだぞ。サンタクロースなんぞ、コスプレの一種だとしか認識しておらん』
 しかし石川さんは、子供たちに夢を与えたかった。それが若い頃からの夢だったのである。
 そうして仕事をリタイアした後、サンタクロースになる決心をした。海外に何ヶ月も滞在した。そして、血の滲むような努力をした。
「そうだ、このアイデアがいい」
 どうやらプレゼントの案が固まったらしい。
 石川さんは真っ赤なコスチュームに身を包み、家の屋根の上にのぼった。
 体はサンタクローズの衣装そのまま、ただし、頭には赤いほっかむりをしている。
 そして、片腕には千両箱のようなものを抱えている。
「ほうら子供たち、プレゼントだぞう~」
 千両箱の中から、石川さんは赤くて長いものを沢山ばらまいた。町中の屋根から屋根に飛び移り、至る所にそれを撒いた。
 しかし子供たちは、家の外に出てこない。
 そりゃそうである。12月の真冬の最中、夜に家を出て、靴下なんぞをわざわざ取りにくる子供が、いるわけがない。
「あんたそりゃ失敗するよ」
 落胆して自宅に戻った石川さんは、妻と話していた。
「しかしウチのご先祖の五右衛門様は、ああやって一般庶民に贈り物を与えていたのだぞ」
「それは小判をばらまいたって話でしょうが。靴下なんて撒いても、今の子供は見向きもしないでしょう?」
「靴下を贈ろうとした私の気持ちがお前に分かるのか?」
「わかりますよ。その靴下を枕元に置いてもらって、サンタクローズを信じる気持ちを子供たちに思い出させようって寸法でしょう」
「むぐ。その通り」
「で、もちろんその靴下の中に入れるプレゼントは用意してあるんで?」
「それは子供たちの親のすることだ」
「あんた馬鹿でしょ」
「いんや、俺は石川五右衛門だ……ゴホゴホ」
「風邪ですか? 顔が赤いですよ」
「あとはトナカイに任せよう」