私は市場に入った。
活気のある、いい市場だ。
メインストリート(?)を歩いていると、右から左から、いろんな店のおいちゃんおばちゃんに声を掛けられる。
そんな店は繁盛していて、ひっきりなしに野菜や魚、肉などが客の手に渡っていく。
私は、そんな喧騒の中でしばらく歩いていると疲れてしまい、人気の少ない路地に足を踏み入れた。
そんなひっそりとしたたたずまいを見せる通りにも、やはりここは市場であるから店があって、でもそこに客はほとんどいない。
店の奥には、おばあちゃんが一人ぽつねんと座っていた。
私はそのばあちゃんに店先から声を掛けた。
「おばあちゃん、お薦めは?」
すると、ばあちゃんは私の顔をジロリとにらみ、しばらく動かない。
私が業を煮やして次の言葉を発しようとすると、ばあちゃんは立ち上がってヨタヨタ歩き、トマトを一個手に取って、私の方に見せた。
「持ってきな」
私はおばあちゃんの言ってる意味が分からず、不思議そうな顔をしていたのだろう。
「袋に詰めてやるから、持って行きな」
ばあちゃんはのんびり、トマトを茶色い麻袋の中に入れて、私にくれた。
「美味かったら、またおいで。代金はその時でいいよ」
私はまだ、不思議そうな顔をしていたのだと思う。
「たまにこういう事がないと、やってらんないんだよ」
ばあちゃんは、顔をクシャッと真ん中で抓んだように、笑った。
私は市場から家に帰る途中で、いただいたトマトにかぶりついたが、とても美味かった。
その時、自分だけの宝物を見付けたような気がした。
活気のある、いい市場だ。
メインストリート(?)を歩いていると、右から左から、いろんな店のおいちゃんおばちゃんに声を掛けられる。
そんな店は繁盛していて、ひっきりなしに野菜や魚、肉などが客の手に渡っていく。
私は、そんな喧騒の中でしばらく歩いていると疲れてしまい、人気の少ない路地に足を踏み入れた。
そんなひっそりとしたたたずまいを見せる通りにも、やはりここは市場であるから店があって、でもそこに客はほとんどいない。
店の奥には、おばあちゃんが一人ぽつねんと座っていた。
私はそのばあちゃんに店先から声を掛けた。
「おばあちゃん、お薦めは?」
すると、ばあちゃんは私の顔をジロリとにらみ、しばらく動かない。
私が業を煮やして次の言葉を発しようとすると、ばあちゃんは立ち上がってヨタヨタ歩き、トマトを一個手に取って、私の方に見せた。
「持ってきな」
私はおばあちゃんの言ってる意味が分からず、不思議そうな顔をしていたのだろう。
「袋に詰めてやるから、持って行きな」
ばあちゃんはのんびり、トマトを茶色い麻袋の中に入れて、私にくれた。
「美味かったら、またおいで。代金はその時でいいよ」
私はまだ、不思議そうな顔をしていたのだと思う。
「たまにこういう事がないと、やってらんないんだよ」
ばあちゃんは、顔をクシャッと真ん中で抓んだように、笑った。
私は市場から家に帰る途中で、いただいたトマトにかぶりついたが、とても美味かった。
その時、自分だけの宝物を見付けたような気がした。