人は老いるという存在の現象をなかなか素直に認めることができな
い、それは先に若さという経験を先にしているから、どうしても否
定的に感じてしまう、だから齢をとると自分の年齢は自分にふさわ
しくない、実年齢よりもっと若いと思いたがるもの、それは老いる
ことは敗北、若さだけが価値があるという風潮がどこかにあるから
だろう。
「現在〇〇歳、でも気持ちはちっとも変わってない」
「若さとは心の持ち方次第だよ」
日常でもTVでもこういう光景は見かける、そういう人の真意は
「お元気ですね、年齢より若いですよ」という言葉を待ってるのが
なんとなくわかる、でも人間は時間とともに老いていくことは確か
である、肉体も知力も衰える。
若い時のようにシワのない肌は美しい、けれど失われたものに執着
するのは苦しみを生むだけ、青春の喜びや肉体の充実はその時期に
与えられた特権的な幸福なのかもしれない。
生きるというのは齢をとること以外のなにものでもない、それでも
魂が最も活動するのはこの老後のような気がする、だから無理にア
ンチエイジングなどしないで老いていく肉体そのものを受け入れる
ことこそ大切だと私は思っている。