読書日記

いろいろな本のレビュー

恋人  佐藤洋二郎  講談社

2008-06-29 20:57:30 | Weblog

恋人  佐藤洋二郎  講談社


 若い時に知り合った年上の離婚暦のある女性。男は結婚を熱望するが、女は拒否。男は作家志望で、持込原稿を出版社に持ち込むが採用してもらえない。三十年後に女の生地である函館で会いましょうという約束をして、二人は別れる。そして三十年経って男は函館に着き約束の場所に向かう。その途中で回想にふける。果たして女は現れるのか。まるでテレビドラマの脚本のようだ。今までの佐藤の作品に見られた緻密な構成が無いような感じだ。女が結婚を拒否した理由は最後に明かされるが、安物の推理小説のようでいまいち。
 若い頃は年上の女性にあこがれることは大いにありうる。しかも美人で離婚暦のある人ときたら、もうこれはたまらない。森進一にも「年上の女」というのがあるぐらいだから、一つの真理といってもいいのではないか。しかし「年上の女」が魅力的なものとして意識されるのは、悲しい別れがあってのことで、めでたく結婚してしまうとこれまた別の話になる。単調な日常の中でその魅力はだんだんと減殺していくことは確か。トホホ、もっと若い人と結婚すればよかったということになる。時間の経過というのは本当に残酷なものだ。