竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

花火師か真昼の磧歩きを   矢島渚男

2019-08-02 | 今日の季語


花火師か真昼の磧歩きを   矢島渚男

磧は「かわら(河原)」。今夜花火大会の行なわれる炎熱の河原で立ち働く男たち。花火師を詠んだ句は珍しい。中学三年のとき、父が花火屋に就職し、私たち一家は花火屋の寮に住むことになった。だから、花火や花火師についての多少の知識はある。指の一本や二本欠けていなければ花火師じゃない。そんな気風が残っていた時代だった。工場で事故が起きるたびに、必ずといっていいほど誰かが死んだ。花火大会の朝は、みんな三時起きだった。今でも打ち上げ花火を見ると、下で働く男たちのことが、まず気になってしまう。(清水哲男)

花火】 はなび
◇「煙火」 ◇「打揚花火」 ◇「遠花火」 ◇「仕掛花火」 ◇「花火舟」
単に「花火」といえば花火師が揚げる打上花火や仕掛花火を指し、庭などで楽しむ「手花火」「線香花火」などとは別けて用いる。夏の夜空にぱっと花開く花火は見事で美しく、両国の花火をはじめ江戸時代から庶民の大きな楽しみであった。

例句 作者

あぶな絵のやうな二階や揚花火 櫛原希伊子
遠花火さらに遠きが加はりぬ 和田知子
遠花火浴後の女匂ひけり 廣瀬直人
当直医遅き餉をとり花火の夜 馬場駿吉
花火見の船らし沖にとどまれる 大星たかし
花火の夜少年の靴枝にささり 小檜山繁子
部屋中に旅装を解けり遠花火 澤田英夫
灯を消して遠き花火をもてなしぬ 和田知子
福耳と芸者がほめぬ遠花火 木暮剛平
花火果てつねより深き闇のこる 佐藤 愛