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竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

寒風に声かけゆくは亡父ならむ 寺田京子

2020-12-12 | 今日の季語


寒風に声かけゆくは亡父ならむ 寺田京子

亡父の強さ逞しさをふと思う出す作者が浮かぶ
そこからつぎつぎと亡父とのさまざまな事象
いまだに亡父に励まされている自分を発見した
(小林たけし)

【冬の風】 ふゆのかぜ
◇「寒風」
冬に吹く風全般を指すが、とりわけ太平洋岸では北西や西からの季節風に代表される。しかし、語感のやわらかさは冷たさ厳しさを必要以上に強調してはおらず、むしろやさしさの窺えることさえある。

例句 作者

寒風の荷役の船尾沖に向け 右城暮石
寒風と魚のやうにすれちがふ 大木あまり
寒風に芹摘む少女見失ふ 沢木欣一
風寒し不二にもそぶく小窓かな 一茶
冬の風人生誤算なからんや 飯田蛇笏
青空に寒風おのれはためけり 中村草田男
中空に月吹上げよ冬の風 阿部次郎


馬寄せの残る参道菊日和 たけし

2020-12-11 | 入選句


馬寄せの残る参道菊日和 たけし

朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選を頂きました
鶴岡八幡宮や日光東照宮では
流鏑馬や馬追いが古式にのっとって行われます

馬寄せは走る馬を寄せる場所のことで
初夏の農村の行事でもあったというが
ここでは境内で行われるものを言っている

句意はその馬寄場を発見して参道をすすむと
菊花の展示会が催されていた
なんとも清々しい秋の日差しであったというもの

舌焼いて母ぞ恋しき大根焚 岸田稚魚

2020-12-10 | 今日の季語


舌焼いて母ぞ恋しき大根焚 岸田稚魚

句意はわかりすぎるほどに明解
中七「母ぞ恋しき」が強烈で、少し違和感があるのは
上五の「舌焼て」の因果を打ち消したものだろう
(小林たけし)


【鳴滝の大根焚】 なるたきのだいこたき
◇「大根焚」(だいこんたき)
12月9日、10日の両日、京都市鳴滝の了徳寺で行われる行事。親鸞上人の法話に対し、里人が大根を焚いて上人に供したという故事に基づく。大釜で焚かれた大根は参詣者に振舞われる。

例句 作者

大根焚く湯気の甘くて夕雀 宮津昭彦
日だまりは婆が占めをり大根焚 草間時彦
勿体なき半透明体大根焚 小川双々子
大根焚き憂き世の未練食にあり 亀山幽石

ただ一つ飛びゆく鷹のさびしさよ 長谷川櫂 「虚空」

2020-12-09 | 今日の季語


ただ一つ飛びゆく鷹のさびしさよ 長谷川櫂 「虚空」

人里で鷹をみることはまずない
芭蕉に
鷹一つ見付けてうれし伊良古崎 芭蕉 「笈の小文」
夢よりも現の鷹ぞ頼もしき 芭蕉 「鵲尾冠」
の句が残っているから当時も鷹に遭遇すれば特別の感情が沸いたと丘が得る
掲句は解釈も鑑賞も不要だろう
(小林たけし)


鷹(たか)三冬
【子季語】
のすり、八角鷹、熊鷹、鶚、青鷹、蒼鷹、もろがへり、大鷹
【解説】
ワシ、タカ科の中形の鳥類の総称で、色彩は主に暗褐色。嘴は強く鋭く曲がり、脚には強い大きな鉤爪があり小動物を襲って食べる。鷹狩に使われているのは主に大鷹である。蒼鷹(もろがえり)は、生後三年を経たたかのこと。

【例句】

鷹の目の枯野にすわるあらしかな 丈草 「菊の香」
あら浪に山やはなれて鷹の影 麦水 「葛箒」
落し来る鷹にこぼるる松葉かな 白雄 「白雄句集」
鷹来るや蝦夷を去る事一百里 一茶 「寛政句帖」
鷹とほる柿爛熟の蒼の中 飯田龍太 「春の道」
ただ一つ飛びゆく鷹のさびしさよ 長谷川櫂 「虚空」

下顎に鮭の言い分下り簗 たけし

2020-12-08 | 入選句


下顎に鮭の言い分下り簗 たけし



12月4日 朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生先生の選を頂きました

黒羽町の簗終いの頃の実景

下り簗に打ち上げられている鮭を見ました

下顎がぐっと突き出ている貌に目をとらわれました



鮭も季語ですが

鮭と簗はどちらも欠かせないところです

下り簗は簗終いでもと思っていりところです

黴けむりラストノートに遺す嘘 たけし

2020-12-07 | 入選句


黴けむりラストノートに遺す嘘 たけし


村上鬼城顕彰第34回全国俳句句大会はコロナ禍の影響で
大会式典は中止、作品集が送られてきた

掲句が佐怒賀正美先生の選をいただきました

黴けぬり
この季語を知っていくつかの句を試しましたが
始めて日の目をみた感じです

ラストノートは造語ですが
読み手がエンディングノート他、それぞれに解していただければと思っています

3

まのあたり地かげりゆく寒さかな 八木絵馬

2020-12-06 | 今日の季語


まのあたり地かげりゆく寒さかな 八木絵馬

冬の落暉は本当に早い
時計に時刻を念頭に行動していると
思わぬ失敗をする
用事を済ませての帰路である
一足ごとに辺りは暗くなってくる
同時に寒さもおそってくる
(小林たけし)


【寒し】 さむし
◇「寒さ」 ◇「寒気」 ◇「寒冷」
漠然と、寒いこと、またその程度を言い、寒き朝、寒き夜などと用いられる感覚的な冬の季語。しかし、「寒」の字を付した熟語は秋・春にも多く、さらに転じて貧しさ、賤しさを現すこともある。用例には「寒さかな」を座五に据えたものが多い。

例句 作者

ある夜月に富士大形の寒さかな 飯田蛇笏
くれなゐの色を見てゐる寒さかな 細見綾子
てのひらに群盗伝の寒いかな 松澤昭
ひかり降る寒さへ犀の口ひらく 岡田一実
ふろしきのなかの近江の寒さかな 松澤昭
まのあたりみちくる汐の寒さかな 久保田万太郎
をちこちの薄暮寒気に洗はるる 松澤昭
ローソクの一本ふえし寒さかな 国兼よし子

枯芝や金の茶壷の二坪ほど 石口りんご

2020-12-05 | 今日の季語


枯芝や金の茶壷の二坪ほど 石口りんご

この枯芝、おそらくは雑草の芽は一つも無いのだろう
金の茶壷、おろそかにするわけもない
拙宅でも新築した家の庭に芝生を敷いて
よく手入れをしていたものだが
しばらくすると雑草に手をやくようになり思案の種になった
作者の健闘を祈る(笑)
(小林たけし)


庭園・築山・堤防などに土留め、あるいは装飾用として植えられた芝は、夏は青芝として涼風がわたるが、冬になるとすっかり褐色に枯れ、冷たい風にさらされる。しかし、風のない日の冬の日差は暖かく、何とも懐かしい日向の匂いに包まれる。

例句 作者

枯芝を尻に背中につけてをり 高浜虚子
枯芝のそこらも夜となりにけり 長谷川春草
芝枯れてねむりさだまる石の数 木下夕爾
枯芝へ犬放ちたり吾も駈け 蓬田紀枝子
枯芝は眼をもて撫でて柔かし 富安風生
枯芝にいのるがごとく球据ゆる 横山白虹
枯芝にイベント案山子倒されある 林英男
枯芝を転つてゆくビスケット 石﨑多寿子


いちまいの銀箔のごと寒波来る 富川直芳

2020-12-04 | 今日の季語


いちまいの銀箔のごと寒波来る 富川直芳

目に見えるはずもない寒さを
おしよせる波のようだと表現する
日本人の感性は深くきれいで雅な感じさえする
作者はそれに重ねてその波を銀箔と捉える
これに勝る表意を知らない
(小林たけし)


寒波】 かんぱ
◇「寒波来る」 ◇「冬一番」
マイナス30度、40度といったシベリヤ付近の寒気団が日本列島まで南下してくると、急激に気温が低下する。これが何度も周期的に波のように押し寄せるのである。一気に5度も10度も気温が下がることも珍しくない。大景を詠んだ作例が多い。

例句 作者

ぱりぱりの星が落ちそう寒波くる 十河宣洋
双頭の蛇解け脛をのぼる寒波 瀧春樹
寒波急日本は細くなりしまま 阿波野青畝
寒波来るばりばり破く包装紙 田中朋子
寒波来る夜の闇にゐて眼(まなこ)病む 大西岩夫
寒波来る日本列島軋ませて 中島美代子
月煌々寒波の都会砂漠めく 井上純郎
海融けがたしまなじりに寒波急 諸角和彦
片足立つ鷺しんしんたる寒波 石黒英進
百獣の雄叫び分だけ寒波来る 長内博

子が泣いて秩父夜祭凍てにけり 濱口たかし

2020-12-03 | 今日の季語


子が泣いて秩父夜祭凍てにけり 濱口たかし

夜もすがらにぎやかしい秩父夜祭
だれもが祭に興じて時を忘れ
12月の寒気も感じない
ふと子供の泣き声で我に返る
半端でない寒さに気づかされた
(小林たけし)


【秩父夜祭】 ちちぶよまつり
◇「秩父祭」(ちちぶまつり)
12月3日。埼玉県の秩父神社の例大祭。京都の祇園祭、飛騨高山の高山祭と並ぶ、日本三大曳山祭の一つ。名物の秩父屋台囃子や花火が上がり、近郷近在から多くの人々が集まる。夜には神社からお旅所へと神輿の渡御が行われるが、ぼんぼりや提灯をつけた絢爛豪華な屋台がお旅所下の急坂を次々と曳き上げられる場面は、この祭りのクライマックスとなっている。

例句 作者

桑枯れて秩父夜祭来りけり 岡田水雲
火の祭り過ぎゆくこんにやく玉煮つめ 高島 茂

マフラーやうれしきまでに月あがり 岸本尚毅

2020-12-02 | 今日の季語


マフラーやうれしきまでに月あがり 岸本尚毅

欲しかったマフラーを手に入れて
弾む心で夜道を歩く
冬の満月がこうこうとして明るい
作者の息遣いまで感じられる
吐く白い息もみえてくる
(小林たけし)


【襟巻】 えりまき
◇「マフラー」
防寒のため首に巻くもの。毛糸、絹、毛皮などが素材。現在は「マフラー」の呼称が一般的。

例句 作者

襟巻やうしろ妻恋坂の闇 小川千賀
襟巻やしのぶ浮世の裏通り 永井荷風
汽車にねむる襟巻をまきかへにけり 川上梨屋
襟巻の紅きをしたり美少年 尾崎紅葉
襟巻やほのあたたかき花舗のなか 中村汀女
襟巻の狐の顔は別に在り 高浜虚子
襟巻や思ひうみたる眼をつむる 飯田蛇笏
風の子となるマフラーの吹流し 上田五千石
襟巻の狐が抱くナフタリン 桃澤正子
霧ひらく赤襟巻のわが行けば 西東三鬼



もらい泣き多くなりしや十二月 根岸敏三

2020-12-01 | 今日の季語


もらい泣き多くなりしや十二月 根岸敏三

今年の身の上を話す友
語る人はみな不幸の話ばかり
もらい泣きしながら
身のしあわせをかみしめているのだろうか
その幸せはその人には伝えられない
(小林たけし)


【十二月】 じゅうにがつ(ジフニグワツ)
概ね仲冬に相当するが、1年の締めくくりの月でもあり、初旬・中旬・下旬と次第に年の瀬の雰囲気も色濃く加わる。寒さも日増しに深まる印象がある。

例句 作者

「わだつみ」は青年のまま十二月 植木里水
うしろから大きい何か十二月 山崎聰
くれぞーるのように鳴り出す十二月 山本敏倖
するすると縄引かれゆく十二月 山崎聰
なだらかにため息落ちる十二月 今川峻宗
ジャンパーが似合ふ漢の十二月 倉田しげる
一日を粗削りして十二月 田中朋子
一月に最も遠い十二月 花谷清
七曜の駆け足で来る十二月 藤本紀久子
仏壇の花が蝋化す十二月 星野明世