秋彼岸(2024.9.27日作)
猛り狂った猛暑
狂熱の夏も過ぎ
今朝は爽やか
秋彼岸の一日
向かうは冬の季節
穏やかな日和も終わり
迫り来る寒さ厳しい日々
冬へと季節は移り
変わってゆく
幾度迎えたこの季節
時の移ろい 春夏秋冬
日々生きて来たその中で
今また迎える
夏から秋 秋から冬へ
その季節
幼き日々の 春
青春の季節 夏
斜光 影さす 中年の秋
そして老年 冬の季節
春夏秋冬
自然の季節は移ろい 巡れども
人生の春夏秋冬
再び 巡り来る事は無い
枯れた草木
吹き荒ぶ木枯らし
厳しい冬
人生に於ける永遠の冬 老年
その果てに待つものは
永久凍土
死の世界
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<青い館>の女(7)
わたしは豊かなその感触に更なる記憶の底から蘇る様々な肉体を回顧する。
すると初めてわたしの身体の奥に微かな兆しを見せて欲望が芽生えて来る。
わたしはグラスを片手に持ったまま、その欲望に形を与えるかの様に豊かな感触の女の肉体を抱き締める。
わたしの心に昔日を偲ばせて、この肉体を自分の中に取り込みたいという熱気が初めて生まれる。
しかし、わたしは知っている。
それが不可能な事で、願望に終わるだけのものでしかない事を。
事実、わたしの肉体に充実感は生まれて来なかった。
そして、早くも何時、訪れるかも知れないわたしの身体の奥に潜んだ悪魔が顔を覗かせてわたしを恐怖の淵へと突き落とす。
わたしの心はたちまち、空気の抜けたゴム人形の様に萎(しぼ)んでゆく。
女はだが、わたしから唇を離すと首筋に腕を絡めたままわたしを見詰めて、
「今夜は泊まって貰えますかぁ」
と聞く。
わたしを誘う姿勢が身体全体に露わになっている。
わたしの心はそれで揺らぐ事はない。
過去に幾度も経験している事だ。
女達の使う常套手段・・・・しな垂れかかる媚態と甘え。
総ては営業の上に成り立つ偽装行為なのだ。
そして楽屋へ帰った女達は言うだろう。
「助平な奴ったらありやしない !」
わたしに取っては総てがお見通しの上の戯れ事にしか過ぎなかった。
根底に於いてわたしは女達を信用していない。
一夜のうちに気分を変える女達をわたしは数多く見て来ている。
女達への不信はわたしの意識の中では拭い難いものになっていた。ーー女達は別の世界に住んでいる。
或いはこれもまた、わたしの妻がわたしの心に植え付けたものなのかも知れなかった。
妻とわたしとの間には、生涯にわたって踏み越え難い溝がある。
妻の驕慢がわたしという人間を妻の伴侶にさせて、わたしの心の卑しさが妻の驕慢を形作った彼女の父親の財力にわたしを諂(へつら)わせ、妻に追従させたのだった。。
この国がまだ貧しかった頃、長野県の雪深い片田舎の小さな農家で五人兄妹の四番目に生まれたわたしには、豊かさと便利さへの抜き難い憧れがあった。
ーー今、北のこの小さな漁港街の怪しげな店の奇妙な部屋で、父親以上に歳 の離れたわたしを誘う年若い女には一体、どの様な事情があるのだろう ?
遊ぶ金が欲しいだけなのか ?
或いは、何かの事情で金が必要なのか ?
それとも、こういう仕事が好きなだけなのか ?
何れにしても、わたしにはどうでもいい事であったが、若い女の素直さには好感が持てた。
それに元々、わたしには今更望むものなど何も無い。少しの酒に心の鍵を解かれた気紛れ半分による遊びでしか無い。
それでわたしは女の素直さに応える様に、
「君はどっちが良いの ?」
と聞く。
女は悪びれる様子も無かった。
「それはぁ、泊まって貰った方がいいですよぉ。営業の成績が上がりますからあぁ」
と言う。
「じゃあ、泊まっていく事にしよう」
わたしは言って、すぐに一つの思いに捉われる。
明日の仕事に支障は無いのか ?
ホテルのフロントでは、わたしの朝帰りをなんと思うだろう ?
だが、それらの事は別段、気にする必要も無い様だった。
開店初日のセールは混雑するだろうから、午後になっても構わない。
フロントでは、わたしの朝帰りを何んと思おうと勝手に思えばいい。
迷いはすぐに払拭された。
「有難う御座いますぅ」
女は今度もまた、素直な喜びを身体全体で表して殊勝に頭を下げた。
女は続けて言った。
「お金はぁ前金で戴く事になってるんですけどぉ、構わないですかぁ」
わたしに取っては不都合のある筈もない金額だった。
「うん、構わないよ」
上着の内ポケットを探り、財布を取り出して一万円札を抜き取り、五万円を女に渡す。
「有難う御座いますぅ」
女は丁寧に頭を下げて両手で受け取った。
「じゃあ、ちょっと待ってて貰えますかぁ。会計の方へ連絡しますからぁ」
女は立ち上がるとまた、カーテンの向こうへ消えて行った。
「深紅の部屋ぁ、通しでお願いますぅ」
女の室内電話をする声が聞こえた。
女はすぐに戻って来た。
その夜、わたしと女は一つのベッドで過ごした。
女はすぐにわたしの衣服を脱がせに掛かり、裸の身体に触れて来た。
わたしは女の裸体を抱き締める。
その柔らかい感触がわたしを過去の記憶へと誘う乳房や腹部を自分の身体に押し当てる。
女は自ら求めて裸の身体をわたしに押し着け、その唇でわたしの唇を塞いで來る。
それをこじ開け二つの口腔を一つにする。
わたしは女の行為に任せて為すがままでいる。
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takeziisan様
コメント 有難う御座いました
今回 記事を拝見していまして 奥様 入院との事
御心労 お察し申し上げます
人間 生きている限りは何時かはこういう時が来る
それは承知の上の事でも寂しいものです
御無事の退院 心よりお祈り致します
また ブログのお仲間の死 という事で つくづく老齢を生きる境遇を
意識せずにはいられません 死の季節を生きる
そんな年代になってしまいました
どうぞブログの方も一位をお続けになる実力に敬服しながらも
その順位に拘る事無く これからも楽しい記事をお書き下さる事を願っております
何時かは訪れる人の死 生きるも死ぬも人間 最後は独り
そう自覚して生きてゆくより仕方がないようです
拙文をコピーして戴いたの事 一位のブログへのコピー 感謝申し上げます
映画「黄昏」以前にも書いたと思いますがやはり
もう一度観たい映画です 記事にもあります様に
フォンダ父娘の共演 それに名女優 キャサリン ヘップバーン
懐かしいですね
謄写版 これもまた懐かしい !
よく原稿を書きました 刷りもしました
あの黒い文字が眼に浮かびます それにしても
当時 ドイツ語 ? 片田舎と御謙遜ですがいろいろこれまでも記事を拝見して来まして
わたくしなどの居た地方より はるか進んだ環境にあったように思われます
東京から汽車で僅か二時間足らずの地方の海辺の村に居たのですが
いろいろ拝見していますと遅れを感じます
それでも あの地方で過ごした少年時代は良い思い出に溢れています
いろいろ 有難う御座いました
どうぞ 奥様の御看護と共に御自身の体調にもお気を付け下さい
一日も早い 奥様の御快癒とお二方の共に過ごす日常の戻りを
陰ながら願っております
何事に付けても 自身の残り少ない日々を思うと哀しみの感情は
他人事であっても沢山だという気がします
有難う御座いました
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