遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(530) 小説 <青い館>の女 (19) 他 人ではなく命

2025-01-12 12:11:04 | 小説
             人ではなく命(2024.12.12日作)


               ( スタッフの皆様へ
              今年もお手数をお掛けしますが
              宜しくお願い致します )



 
 人を 一人の人間として見るのではなく
 一つの命として見る
 人を 人間として見る事によって
 国々 地域 環境毎に 差別が生まれる
 あの国 この国 あの地域 この地域
 この環境 あの環境
 命に差別は無い
 どの命も一つの命
 一つの命は 一度失われれば
 再び 戻る事は無い
 どの国 どの地域 どの環境に於いても
 同じ事 誰の命も命は一つ 一つだけ
 一度断たれた命の再び戻る事は無い
 命に優劣 差別は無い




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             <青い館>の女(19)



 
 約束は生きていた。
 安堵感と共にわたしは、
「何時(なんじ)ごろ、何処で会えるのかなあ」
 と聞いた。
 わたしが自ら会う場所を指定するには、余りにこの街に付いての知識が乏しかった。
「ホテルでいいですかぁ」
 加奈子は言った。
「ホテル ?  何処の ?」 
 思わずたじろいだ。
 咄嗟に自分が今居るホテルが頭を過ぎった。
 この漁港街の小ささが意識の内にあった。
「ラブホテルなんですけどぉ、駄目ですかぁ」
 わたしのたじろぐ気配に気付いたのか、加奈子は躊躇いがちに言った。
「いや・・・、構わないよ」
 一先ずは落ち着きを取り戻してわたしは言った。
「じゃあ、時間なんですけどぉ、何時ごろがいいですかぁ」
 早速、加奈子は本題に入って明快な口調で言った。
 その口調が、仕事の打ち合わせでもしているかの様に拘りがなくてわたしは思わず笑い出しそうになった。
 お買い上げ、有難う御座います。お届けの時間は何時ごろが宜しいでしょうか・・・・
 そんな光景を思い描きながらわたしは、
「君は何時ごろがいいの ?」
 と聞いた。
「わたしの方はァ、お店の始まる時間が過ぎしまえば、何時でもいいですよぉ」
 相変わらず屈託の無い声で加奈子は言った。
「じゃあ、九時ではどうだろう ?」
 わたしは言って、突然、自分が今している事に対しての激しい嫌悪感に捉われた。
 俺は一体、こんな所で何をやってるんだ !
 自分が暗闇でごそごそ人目を避けて秘かに欲望を満たそうとしている、陰気で暗い若者の様に思えて来て惨めな思いと共に、受話器を置いてしまいたい衝動に駆られた。
 だが、受話器を置く事はなかった。
 その前に聞こえた受話器の向こうの加奈子の声がその衝動を抑えていた。
「九時ですかぁ、いいですよぉ。何処でぇ待ち合わせしますかぁ」
 加奈子は言った。 
「何処がいいのか、わたしには分からないけど」
 沈み込んだ気分のままにわたしは曖昧に言った。
「今、何処に居るんですかぁ、海岸ホテルですかぁ」
 加奈子は言った。
「そう」
 わたしは言って、ふと、不安になった。
 加奈子はわたしが居るホテルをズバリと指摘して来た。
 その思いが頭を過ぎると共に、この狭い北の街の中では総ての行動が人々の眼にはお見通しになってしまうのではないか ?
 だが、今更どうにもならない事だった。
 加奈子は、
「じゃあ、わたしが海岸ホテルまで迎えに行ってもいいてすよぉ」
 と言った。 
「いや、別の場所で会った方がいい」
 わたしは慌てて言った。
 加奈子がわたしの部屋へ来ると言ったのか、単に、迎えに来ると言っただけなのか、判断は出来なかったが、兎に角、このホテルからは出来るだけ遠い方がいいという防御の思いが先に立った。
「ホテルに近い処がいいですかぁ」
 加奈子は何故か、ホテルに拘った。
 わたしはその言葉と共に、何時だったか眼にした港の近くの公園を思い出していた。
 あの公園なら、夜の九時ともなればこの小さな港町では訪れる人も少ないのではないか ?
 安心感に満ちた思いと共にわたしは言った。
「ほら、港の近くに公園があったね、あの公園の入口で待っていてくれないか」
「港の方ですかぁ。でも、ホテルからは随分、遠くなりますよぉ」
 加奈子は不審気に言った。
「うん、構わないよ。タクシーで行くから」
 新店舗の前を通らなければならなかったが、タクシーで行くのなら人目に付く事もないだろう。
 店の閉店時間が九時なので、店員達の帰りの時間とかち合う事もないはずだ。
 それまでは、ホテルの部屋に籠っていよう。
 店長や川本部長はわたしが東京へ帰ったものと思っているだろう。
「じゃあ、わたし、それまでに行っていますぅ」
 加奈子は言った。
「ホテルはすぐ取れるの ?」
 わたしは聞いた。
「ええ、大丈夫ですぅ」
 加奈子は馴れた事の様に言った。

 タクシーが公園の入口に近付くと、街灯の灯りの切れた闇の中で、透かし見る様にしてこちらを見ている加奈子の姿が見えて来た。




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                takeziisan様


                 コメント有難う御座いました
                今年 初めてのブログです
                昨年中はいろいろ楽しい記事 有難う御座いました
                今年も宜しくお願いします
                 冬枯れ 雪景色 何処も彼処も冬真っ最中
                我が家の近くの公園も冬枯れ景色 それはそれでまた
                異なった趣の美しさがあります
                 雪景色 心洗われる様な美しさですが
                雪国 地元の方々に取っては それどころではないよ と
                苦情の一言も言いたくなるのではないでしょうか
                地球温暖化と言われながらも今年は 雪が多い様で
                その御苦労が偲ばれます
                 百名山 有名ですが わたくしは今 テレビで放映されている
                百低山登頂番組を毎週楽しみにして観ています
                これぐらいの山なら登山経験なしの自分にも登れるかなぁ
                などと思ったりしています
                 水泳 公営プール 何よりです
                継続は力なり ブログもどうか お続け下さい
                何事も駄目だと思わったらそれで終わり
                八十代九十代 元気な方々はそれぞれ何か自分で遣る事を持っています
                一日を生きる それが大切だと思っています
                 川柳 今年も楽しみにしております
                 つもり違い十ヶ条初めて知りました
                いろいろ名言がありますが 短い言葉の中にすぱりと確信を突く
                下手な百行の文章より よほど心に響くものが有ります
                下手な鉄砲数撃ちゃ当たる 何事に於いても避けたいものです
                 今年もどうぞ 宜しくお願い致します
      























 

1 コメント

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有難うございます、 (takezii)
2025-01-12 14:42:00
「ブログを続けられなくなったら、本当のおしまい」等と、毎年年初に、書き込んできましたが、来年の年初にも、同じことを書き込むことが出来るのかどうか?、
いつどうなるか分からない年寄り。
1日、1日、大事に暮らすしか無いと思っています。
今年もまた、記事中に、いただいたコメント、時々、私のブログのコメント欄に、コピペさせていただくと思いますが、よろしくお願いします。
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