駅を降りて西から東に抜ける地下道を歩く。
向こうから男子高校生が薄っぺらなカバンを手に提げ足早に向かってきて、すれ違う。
よくずり落ちないなー、と、腰にベルトの位置。心配して見る。腰パン? 何て言うのか? こういうの。
その向こうから、明らかに老人と思しき人物が、重そうな紙袋を両手に抱え、ゆっくりとこちらに歩いてくる。腰よりさらに下、膝の少し上まで下げたズボン。あらぬ物が見え隠れ……、いや見えるだけで全く隠れてない。気持ち悪い!! ワイセツ物陳列罪(刑法第175条)だ。
ふと、相当昔のことを思い出す。
阿仁金爺さんの若い頃だ。
歌舞伎町裏の交番で、彼もワイセツ物陳列罪でしょっ引かれそうになったことがある。
何もそんな悪辣な行動で見せつけようなどと、彼はしていなかったし、ただ普通に歩いていた。それなのに……。
彼のからだ全体をワイセツ物と勘違いした通行人がいて、交番に通報したものだった。
なるほどーと思った交番の警官も、これでは罪にはならないと判断して、彼を無罪放免した。
そう言われてみると、顔が亀に似ているし、エラが張っている、そして目がいやらしい。なるほどこれかー、と僕は納得する。
どちらかというと、昔よりシワシワになってしまった今の方が亀さんに似ている阿仁金。
もう、歳も歳だから彼のことを通報しないで、そーっと遠くから見守っていて欲しい!!!
大丈夫、これは昔みた夢だったから。