『快盗ルビイ』(88)
楽しくおしゃれな犯罪コメディー
1980年代は『お葬式』(84)の伊丹十三、『麻雀放浪記』(84)の和田誠など、異業種監督がブームとなった時代でした。この映画は和田誠の監督第二作です。
ヒッチコックが大好きな彼が、ヒッチコックがテレビの「ヒッチコック劇場」で好んで用いたヘンリー・スレッサーの連作短編を巧みに脚色。
男同士の泥棒コンビという設定を男女に変えて、必ず失敗する犯罪計画をコミカルに描き、犯罪映画でありながら、楽しくおしゃれなミュージカル仕立てのロマンチックコメディに仕立て上げました。
いっぱしの泥棒を気取るうら若き女性に小泉今日子。彼女に振り回される純情なサラリーマンに真田広之を起用。小泉をアイドルとしてではなく、真田をアクションスターとしてではなく撮り、名古屋章ら達者な脇役を適材適所に配しました。
そしてビリー・ワイルダーの映画のようにディテールに凝り、往年のハリウッド・ミュージカルの香りまで漂わせる大サービスを発揮。小泉と真田のデュエットまで聴かせます。
和田監督の名人芸と映画マニアぶりを堪能してください。ちなみに、和田監督によれば、小泉は加賀まりこ(『麻雀放浪記』のヒロイン)に似ているから起用したとのことです。