もう一人の自分の視点
家族と人生を見詰めたナンニ・モレッティ監督作。映画監督マルゲリータ(マルゲリータ・ブイ)は、母が余命わずかと知り、仕事をしながら兄(モレッティ)と共に看病するのだが…。
マルゲリータが直面する問題は、モレッティ自身の体験が反映されているという。それを兄役=もう一人のモレッティが見ているということになる。加えて、モレッティいわくの「記憶なのか、夢なのか、それとも現実なのか。すぐには分からない物語形式」がユニークだ。
「教師だった母が研究や仕事に捧げた年月が死によって無になる」と考え、空しさを感じるマルゲリータ。母の教え子を登場させ「決してそうではない」とするラストシーン。この変化はモレッティ自身が母に対して抱いた感慨の反映なのだろう。
カトリーヌ・ドヌーブとスーザン・サランドンを合わせたような外見から、不思議な魅力を醸し出すブイ、エキセントリックな主演俳優を演じたジョン・タトゥーロが好演を見せる。キューブリック、フェリーニ、アントニオーニ、ペトリ…などに関する“映画ネタ”も語られる。