『男はつらいよ 寅次郎と殿様』(77)(1983.4.12.月曜ロードショー)
久しぶりに、寅さんの姿に笑いながら泣かされてしまった。おいの満男のために買ったミニこいのぼりと、トラと名付けられた犬をめぐる一悶着は傑作だった。お節介を焼いて、気が付けば自分はただの道化者になってしまう悲しさ、それなのに相手に気を使ってしまう優しさ、言いたいことが言えずに終わってしまう歯がゆさ、そんな自分を嘆いてしまう弱さ…。この映画の寅さんはいつにも増して悲しく、愛おしく感じられた。
さて、今回は殿様役でアラカンこと嵐寛寿郎が登場するから、冒頭の夢の場面は鞍馬天狗だった。彼と寅=渥美清と、執事役の三木のり平が繰り広げる“喜劇”はなかなか面白かった。
この日は、二か国語放送ということで、随時英語版も聴きながら見ていたのだが、声優たちが、オリジナルの間の取り方やセリフ回しをきちんと踏襲して、ほぼ完璧に演じていたのには驚いた。寅さんの世界は外国人にも通用するのか。まあ、考えようによっては、山田洋次の描く世界は、フランク・キャプラ的だと言えなくもないが。