『プラトーン』(86)(1987.5.22.松竹セントラル)
アメリカ映画が、それをどれほど忠実に描こうが、残念ながらわれわれ日本人にベトナム戦争の真実や本質は決して分かりはしない。だから、数多く作られてきた戦地物、あるいは帰還兵の心の病を描いた映画を見ても、その中のどれが、最もベトナム戦争の本質や残した傷の深さを的確に捉えていたのかも、本当のところは分からないだろう。
ただ、アメリカ映画の優れたところは、良かれ悪しかれ、一つの視点や思想から描くのではなく、様々な角度や、それぞれの監督の視点や思想から描く幅の広さである。その点、この映画は『地獄の黙示録』(79)の哲学的な難解さや、『ディア・ハンター』(78)のベトコンの描き方のまずさ、といった弱点がなく、最前線の兵士たちの姿のみが記憶に残るように作られているのだ。
ジャングルで生死の境をさまよい、人間性を失った兵士たちが、たとえ生きて故郷に帰っても、普通の暮らしに戻れるはずもなく、『タクシードライバー』(76)のトラビスや『ランボー』(82)の主人公のような悲劇が起こるのも当たり前、という気がしてくるほど、兵士たちの描き方にはすさまじいものがあった。その点では、他のベトナム戦争物とは一線を画す。これは、自身も従軍経験があるというオリバー・ストーンが正直な思いを反映させた結果だろう。