『遥かなる大地へ』(92)(1992.9.4.スカラ座)
19世紀末、アイルランドの農家の青年ジョセフ(トム・クルーズ)は、地主の美しい娘シャノン(ニコール・キッドマン)と恋に落ち、新天地アメリカへ渡って夢をかなえようとするが…。
公称では『アラビアのロレンス』(62)以来の本格的な70ミリ映画で、映画史上初となるパナビジョン・スーパー70ミリ方式で撮影されたとのこと。また、クルーズとキッドマンの夫婦共演で、アフター・スピルバーグの旗手として期待されるロン・ハワードの監督作という点に興味が湧いた。
前半はジョン・フォードをほうふつとさせるアイリッシュ魂の話から移民の話になり、次はストリート・ファイトの話になり、ここでちょっと悲恋ムードを漂わせ、クライマックスは『シマロン』(31・60)のような土地獲得競争(ランドレース)が展開し、最後はフランク・キャプラのような奇跡のハッピーエンドと、よく言えば波瀾万丈でサービス満点だが、まとまりに欠けるところが惜しい。また、70ミリが生かされたのは、最初の海とラストの荒野の風景だけだったという気もした。
少々意地悪な見方をすれば、夫婦共演という点が、結局は仲のいいところを見せることに付き合わされただけか、と感じさせ、素直に映画に入る込めない雰囲気を作っていたことも否めない。となると、フォードやキャプラへの愛着を示しながら、今一つに終わったハワードに同情してしまうところもある。
【今の一言】クルーズとキッドマンはこの後『アイズ ワイド シャット』(99)でも共演し、過激なラブシーンが話題になったが、結局離婚し、今は別々の道を歩んでいる。夫婦共演の映画は珍しくないが、一体どんな気持ちで演じているのだろうと毎度思わされる。ロン・ハワードには『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)公開の際に、インタビューをする機会に恵まれたが、あまりの好人物ぶりに驚かされた。