『怖がる人々』(94)(1994.5.9.渋谷松竹セントラル)
『麻雀放浪記』(84)『快盗ルビイ』(88)と快調に連作した和田誠が、今回はオムニバスホラーを撮るということで、期待大であった。ところが、見る前に売店で買い物をした際に、係員から「こんなに客が入らない映画は初めてですよ…」と嘆かれてしまった。
「そんなはずはない」と思いながら見始めたのだが、実際、なかなか盛り上ってこないし、見ていてあまり面白さを感じない。公開前、和田誠の周囲では好評で、「相変わらずうまい」という評もあったし、本人も自信ありげだったので、この結果はかなりショックだった。
思うに、これは黒澤明の『夢』(90)同様、本来つながるべきオムニバスがつながらず、「箱の中」の現代故の恐怖、「吉備津の釜」の現代と過去の交錯、「乗越駅の刑罰」の不条理の畳み掛け、「火焔つつじ」の文芸性、「五郎八航空」のドタバタという、5本の違った話を一気に見せられたような疲れを感じさせられたからだろう。
従って、個々の話の出来は悪くなく、ディテールへのこだわりも見られるのだが、総体的には印象がぼやけてしまうのである。和田誠ともあろう人が…と思うと失望が隠せない。
【後記】この後、メイキング本『怖がる人々を作った人々』を読んでみたのだが、この映画への評価が変わることはなかった。