田中雄二の「映画の王様」

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『ブレット・トレイン』

2022-08-06 13:36:36 | 新作映画を見てみた

『ブレット・トレイン』(2022.7.15.ソニー・ピクチャーズ試写室)

 なぜかいつも不運な出来事に遭遇してしまう、運の悪い殺し屋レディバグ=てんとう虫(ブラッド・ピット)。ブランクからのリハビリを兼ねて彼が請けたミッションは、東京発の超高速列車内でブリーフケースを盗み、次の品川で降りるという簡単な仕事のはずだった。

 ところが、盗みは成功したものの、なぜか殺し屋たちから次々と命を狙われ、列車から降りるタイミングを逸してしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デス(マイケル・シャノン)が待ち受ける終着点・京都へ向かってばく進していく。

 伊坂幸太郎の『マリアビートル』を、『デッドプール2」(18)のデビッド・リーチ監督が映画化したクライムアクション。

 まず、思わず「これが日本なのか! 新幹線なのか!」と口走ってしまうようなイメージに驚かされ、失笑させられるのだが、これは、例えば、ひと昔前の、無理解故に妙な日本を現出させた映画とは違い、意図的に様式化し、誇張した日本のイメージなのだとは思う。アンドリュー・小路と真田広之の親子もそうだ。だから笑って見ていられるのだ。

 そして、一見バラバラで雑多な登場人物たちが実は関りがあるところ、入り乱れる時間軸、ディテールへのこだわり(例えば「ステイン・アライブ」「時には母のない子のように」「500マイルもはなれて」「上を向いて歩こう」といった曲の挿入)、バイオレンス満載のオフビートな悪ふざけなど、クェンティン・タランティーノの諸作をほうふつとさせるところがある。

 ただ、原作は未読なので、はっきりとしたことは言えないが、ノンストップの閉ざされた列車内で繰り広げられる別々のドラマが、実はつながっているという、アイデアの面白さを、消化し切れていないように感じた。

 ブレット・トレイン=弾丸列車を舞台にした映画としては、タイプは違うが、『新幹線大爆破』(75)の方が出来がいいと思った。
 
 サンドラ・ブロックとチャニング・テイタムがチョイ役で登場するのは、『ザ・ロストシティ』にブラピが出たことへの返礼らしい。車掌役でマシ・オカ、そしてリーチ監督ゆかりの“あの男”も顔を出す。

コメント
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