田中雄二の「映画の王様」

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『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

2022-08-27 10:50:55 | 新作映画を見てみた

『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022.8.26.オンライン試写)

 10月25日、月曜日の朝。プレゼン資料の準備で徹夜明けの吉川朱海(円井わん)は、後輩の2人組から「僕たち、同じ1週間を何度も繰り返しています」という報告を受ける。

 ところが、タイムループからの脱出の鍵を握ると思われる永久部長(マキタスポーツ)は、いつまでたってもタイムループに陥っていることに気付いてくれない。朱海たちは“上申”を利用して、次々に同僚たちにループを気付かせ、最後は部長に届くように画策するが…。

 「もう仕事なんて放り出してしまいたい」「新しいスキルを身につける、いい機会かも?」「仕事がうまくいくまで繰り返して、最高の状態で転職する」…。

 社員たちのさまざまな思惑が交錯する中、また同じ月曜日がやって来る。果たして彼らは“チームプレー”で部長に事を気付かせ、タイムループから脱出することができるのか…。

 同じ時間を何度も繰り返すタイムループは、描き方によっては、まさに“ネバーエンディング・ストーリー”にも成り得る面白さがあるし、同じシーンを何度も撮り直せたり、後で編集もできる映画向きの素材だともいえる。

 だから、例えば『恋はデジャ・ブ』(93)『タイムアクセル12:01』(93)『ターン』(01)『ミッション:8ミニッツ』(11)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)などの佳作が生まれている。

 また、最近では、ホラーに転用した『ハッピー・デス・デイ』(17)、主人公を加えた3人が巻き込まれる『パーム・スプリングス』(20)、アクションゲーム感覚の『コンティニュー』(21)など、新機軸のタイムループものも登場してきた。

 竹林亮が監督したこの映画は、それらとも違い、舞台をオフィスに限定し、タイムループの原因が主人公にはない、巻き込まれるのはオフィスの全員、1日ではなく1週間が繰り返される、といった新たな種類のタイムループを描いているところが面白い。タイトルが長過ぎるのが惜しまれるが、また1本、タイムループものの佳作が生まれた言っても過言ではない出来だ。

 何だか、若き日、編集プロダクション時代の徹夜作業で生じた妙な連帯感や達成感を思い出して懐かしくなったが、今時もこんなブラック会社が存在するのかとも思わされた。

 『夏へのトンネル、さよならの出口』『地下室のヘンな穴』、そしてこの映画と、図らずも非現実的な“時間”を扱った映画を続けて見たので、妙な心持ちになっている。

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『地下室のヘンな穴』

2022-08-27 00:25:32 | 新作映画を見てみた

『地下室のヘンな穴』(2022.8.26.オンライン試写)

 平凡な中年夫婦のアラン(アラン・シャバ)とマリー(レア・ドリュッケール)は、怪しげな不動産業者に案内され、郊外に建つ一軒家を下見に訪れる。

 購入すべきか迷う彼らに、不動産業者は、この家の地下室に空いた穴に入ると「時間が12時間進み、肉体が3日分若返る」と話す。夫婦は半信半疑のままその家に引っ越すが、やがてマリーは穴に入ることにのめり込んでいく。

 監督・脚本のカンタン・デュピューの映画は、これまで見たことがなかったが、殺人タイヤを描いた『ラバー』(10)や鹿革男の狂気を描いた『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』(19)などの、独創的な作風で知られ、フランスの鬼才(あるいはスパイク・ジョーンズ)と呼ばれているらしい。それらに違わずこの映画も相当変だ。

 表向きは、いかにもフランス映画らしい、エスプリの効いたブラックでシュールな艶笑コメディだが、その根底には、若さを取り戻すために穴に入り続けるマリー、アランが勤める保険会社の社長ジェラール(ブノワ・マジメル)が日本で受ける人工ペニスの手術などの滑稽な姿を通して、老いや衰えに対して抗う姿が描かれる。穴のからくりを一切明かさないのもフランス風だ。

 

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