『ヘルドッグス』IN THE HOUSE OF BAMBOO(2022.8.9.東映試写室)
深町秋生の小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』を、原田眞人監督が映画化したクライムアクション。
元警官の出月梧郎(岡田准一)は、愛する人が殺された事件を阻止できなかった後悔から闇に落ち、兼高昭吾と名を変えて復讐だけを糧にして生きてきた。そのどう猛さから警察組織に目をつけられた兼高は、関東最大のやくざ「東鞘会」への潜入という危険なミッションを強要される。
兼高の任務は、組織の若きトップ・十朱(MIYAVI)が持つ秘密ファイルを奪取すること。警察はデータ分析により、兼高との相性が98%という東鞘会のサイコパスな若者・室岡秀喜(坂口健太郎)とバディとなるように仕向ける。かくしてコンビを組んだ2人は、組織内での地位を上げていき、十朱のボディガードとなるが…。
アクション監修も兼ねる岡田と原田監督は、『関ヶ原』(17)『燃えよ剣』(21)に続く3度目の顔合わせだが、この映画で、初めて現代劇に取り組んだことになる。
結果、アメリカのマフィア映画、香港のノワール映画、日本のやくざ映画の、そのどれとも似て非なる、不思議な雰囲気を持った映画になっている。
また、原田監督作の特徴として、原作の大胆な改変と過去の映画からの引用がある。
原田監督は、今回影響を受けた映画として、日本を舞台に、潜入捜査官を主人公にしたフィルムノワールで、サミュエル・フラー監督の『東京暗黒街 竹の家』(55)を挙げている。だからタイトルに「IN THE HOUSE OF BAMBOO」と付くわけだ。
また、『地獄の黙示録』(79)での、カーツ大佐(マーロン・ブランド)の愛読書『THE GOLDEN BOUGH=金枝篇』からの引用もある。
ほかにも、やくざのユーモラスな生態としてのカラオケは『冬の華』(78)、ラストで3人を別々に殺すシーンを一気に見せるところは『ゴッドファーザー』(72)の影響があるのでは、と感じた。
「黒澤と小津」は「小津」、「『アラビアのロレンス』と『ワイルドバンチ』」は『ロレンス』という、兼高と室岡の好きな映画についての会話もあった。
原田監督はインタビューで、『関ヶ原』のときは『七人の侍』(54)、『検察側の罪人』(18)のときは、タイトルに付けたかったという『悪い奴ほどよく眠る』(60)と『天国と地獄』(63)、そして『燃えよ剣』は、『リオ・ブラボー』(59)と『グットフェローズ』(90)、といった具合に、意識した映画について語ってくれた。
普通の監督は、こういう話題は避けたがるのだが、原田監督は、むしろ積極的に語ってくれるところがある。今回も、インタビューをする機会がありそうなので、影響されたり、意識したりした映画について聞いてみたい。
【インタビュー】『検察側の罪人』原田眞人監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2f70a36c8c1ff0c251a5ba7989ca8cc2
【インタビュー】『関ヶ原』原田眞人監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5fa6ad3450d7047f5187df905d858b83
『東京暗黒街 竹の家』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c460ad26533b4555c5f1f8d0ddadc777