『異動辞令は音楽隊!』(2022.7.28.オンライン試写)
部下に厳しく、犯人逮捕のためなら手段を選ばない捜査一課のベテラン刑事・成瀬司(阿部寛)。高齢者を狙ったアポ電強盗事件を捜査する中で、強引な捜査を繰り返した結果、広報課内の音楽隊への異動を言い渡される。
嫌々、音楽隊を訪れた成瀬を待っていたのは覇気のない隊員たち。ドラム担当となった成瀬は仕方なく参加するが、刑事だった頃がなかなか忘れられない。そんな中、音楽隊廃止の話が持ち上がる。
音楽隊のメンバーを、清野菜名(トランペット)、高杉真宙(サックス)、板橋駿谷(チューバ)、渋川清彦(パーカッション)、酒向芳(隊長・指揮者)らが演じ、捜査一課の若手刑事を磯村勇斗が演じる。監督・脚本は『ミッドナイトスワン』(20)の内田英治。
物語の骨子は、時代に取り残された男の再生だが、そこに、彼を取り巻く音楽隊員、刑事、家族の点描も入れ込んでいる。刑事ものと音楽ものを合体させたことで、多少もたつくところもある。
だが、同じく楽団員に扮した俳優たちが実際に楽器を演奏したという水谷豊監督の『太陽とボレロ』と比べると、話の転がし方や人物の見せ方、音楽を媒介とした群像劇としては、この映画の方が上だと感じた。そして、ラストに流れる「イン・ザ・ムード」はやはり名曲だった。