田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「BSシネマ」『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』

2023-01-09 06:14:16 | ブラウン管の映画館

『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(11)(2011.11.4.東宝東和試写室)

 世界中で愛される、少年記者タンタンと相棒の白い犬スノーウィが大活躍するベルギーの人気コミックをスティーブン・スピルバーグ監督が映画化。

 ばく大な財宝を積み、姿を消したといわれる伝説の帆船ユニコーン号。その模型を偶然手に入れたタンタンの大冒険を、原作のテイストを生かしながら、躍動感あふれるデジタルアニメで描く。ユーモアとスリルに満ちたノンストップアドベンチャーが展開する。

 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(02)同様、ソウル・バスを思わせるオープニングのしゃれたクレジットアニメーションでいきなりやられた。本編はアニメとも実写ともつかない不思議な質感が面白い。「インディ・ジョーンズ」シリーズをほうふつとさせるジェットコースターアクションの趣があり、『アラビアのロレンス』(62)を思わせるショットもある。やっぱりスピルバーグは、製作よりも自分で撮った方がいい。

TINTIN MOVIE OPENING
https://www.youtube.com/watch?v=_ZfwSyWhhGc

Catch Me If You Can (opening credits)
https://www.youtube.com/watch?v=aN715Rp4L74

 

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加山雄三の映画 その3「若大将シリーズ」

2023-01-08 07:01:48 | 映画いろいろ

若大将シリーズ

『大学の若大将』(61)(1980.8.16.)杉江敏男



 お決まりのストーリーと出演者だが、安心して見ていられるし、今時作れないような映画だし、青大将(田中邦衛)やタコ(江原達怡)など、脇役も楽しく、古き良き時代を思わせる。大学に入って現実を知った人たちが、この映画にロマンを求める気持ちは、自分もその一人なのでよく分かる。


『銀座の若大将』(62)(1976.11.14.)杉江敏男
『日本一の若大将』(62)(1978.9.8.)福田純
『ハワイの若大将』(63)(1984.1.2.)福田純
『エレキの若大将』(65)(1976.4.23.)岩内克己


『アルプスの若大将』(66)(1993.2.9.)古澤憲吾

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/27b084ac80211421a2021ec6fffffda2


『レッツゴー!若大将』(67)(1977.4.9.)岩内克己
『ニュージーランドの若大将』(69)(1977.1.1.)福田純


『俺の空だぜ!若大将』(70)(2011.5.21.日本映画専門チャンネル)小谷承靖

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2dfbae2565421711828ce19296690a98


『帰ってきた若大将』(81)(1982.4.1.)小谷承靖

 公開当時は、たのきん映画『青春グラフィティ スニーカーぶる~す』と併映されていたので見なかった。それにしても、みんな年を取ったなあというのが、この映画の第一印象。

 若大将=田沼雄一(加山雄三)も青大将=石山(田中邦衛)も、もはや中年となり、名物おばあちゃんだった飯田蝶子はすでに亡く(写真で登場)、マドンナも、星由里子、酒井和歌子の時代は昔々(今回は坂口良子とアグネス・ラム)となれば、なぜいまさら若大将なのか、という気がする。往年のシリーズも、若大将がサラリーマンになってから、がくんと人気が落ちたのではなかったのか。

 確かに、寅さん同様、分かり切った安心感を持つことは出来るし、若大将と青大将の掛け合いを見て、うれしくなったりもする。けれども、それだけなのである。

 ニューヨークマラソンのシーンにしても、当然、昔の『日本一の若大将』(62)のような、はつらつと走る若大将の姿はなく、中年になった若大将の苦しそうな走りを見せられるだけ。かつてのシリーズは、めちゃくちゃな明るさとはつらつとした加山雄三が魅力だったのに…。

 役者だって当然年を取る。若き日の思い出はそのままにして、年を取ったらそれに見合った役をやるべきだ。変なノスタルジーに浸ったような映画は、かえって昔の良さを消してしまうのではないか。頑張る中年若大将なんて…。いつもはノスタルジーに浸り過ぎる自分としては、随分と厳しい見方になった。


 こうして並べてみると、そのほとんどが東宝の映画。彼は紛れもない東宝のスターだったのだと改めて感じた。

 

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加山雄三の映画 その2

2023-01-08 06:29:11 | 映画いろいろ

 『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(62)稲垣浩/浅野内匠頭

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/44e9e5a29e9474fc38ae2552b42562cc


『名もなく貧しく美しく』(61)松山善三
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b3f56334db4ea13233ab7af4d3b21513


『恐怖の時間』(64)岩内克己

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2c0b5eb82f6657f6da00c32adba769d5


『バンコックの夜』(66)(1982.8.21.)千葉泰樹

 医学部のインターンを終え、バンコックに赴任した修一(加山雄三)は、富豪の令嬢(張美瑶)と出会い、愛し合うようになるが…。日台合作のメロドラマ。

 どうしても、この時期の加山雄三は“若大将”に見えてしまう。この映画のラストは、悲恋になっているのだが、前半の快調なテンポは、まさに“若大将調”の明るい青春ものとしか映らない。

 まあ、今時はこんなタッチの恋愛映画は見られないし、加山のような人畜無害的なキャラクターを持った俳優も見当たらない。

 その意味では、古き良き時代を懐かしむには絶好の映画だが、悪くいえば、ただそれだけといえなくもない。でも、そう言い切ってしまうのは酷かな。なぜって、俺自身、結構楽しく見ていたのだから…。


『八甲田山』(77)(1977.7.7.千代田劇場)森谷司郎

 恐らく、日本映画史上でも、上位にランクされると思われる力作。雪中行軍を通して描かれる人間の苦しみ、愛情、友情、リーダーの在り方。自然の恐ろしさ、厳しさ、自然に対する人間の無力さなどが、リアルに描かれていた。ラストの「雪中行軍での生存者も日露戦争で全員戦死」の字幕は、改めて戦争の無情さや空しさを感じさせる。

 主役の高倉健、北大路欣也はいずれも熱演。加山雄三の珍しく抑えた演技が印象的。悪役・三國連太郎はさすが。軽快に雪中を行く、秋吉久美子の案内人も印象に残る。そして、ラストとの緒形拳のアップの表情がすごい。


 

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加山雄三の映画 その1

2023-01-08 06:00:42 | 映画いろいろ

 年末の紅白歌合戦への出演を最後に、ステージからの引退を表明した加山雄三の出演映画で、見たことがあるものをちょっと調べてみた。


岡本喜八監督

『独立愚連隊西へ』(60)(1989.1.18)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/33ecbe7aae28d00f1a8c5984f542ae49


『戦国野郎』(63)(1992.1.25.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8d86539ccfdb091293ddcc1611aed05b


『日本のいちばん長い日』(67)(1974.8.16.ゴールデン洋画劇場)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4eaf78cafbb73ab170b60b362cb49387


成瀬巳喜男監督

 『乱れる』(64)(1976.12.19.日曜映画劇場)

 監督・成瀬巳喜男、脚本・松山善三。戦争で夫を亡くした後も、嫁ぎ先の酒屋に留まり、家のために懸命に尽くしてきた森田礼子(高峰秀子)。義弟の幸司(加山雄三)から愛の告白をされた礼子は、悩んだ末に、幸司と共に逃避行の旅に出る。果たして2人の運命は…。

 2人がたどり着いた銀山温泉の風景、そして思わず絶句させられるような、やるせなく衝撃的なラストシーンが心に残る。まさに"ヤルセナキオ"の真骨頂。加山が、一途に義姉を慕う幸司役を見事に演じた。


『乱れ雲』(67)(1976.5.30.日曜映画劇場)(1999.1.)

 交通事故で夫を亡くした女性(司葉子)と加害者の青年(加山雄三)が、許されない間柄でありながら、引かれ合っていく姿を描く。

 成瀬巳喜男の遺作となった『乱れ雲』が、妙に心に染みた。初めて見たのは高校生の頃だったので、この映画で描かれた男女の愛憎の機微(まさに別名ヤルセナキオの本領発揮!)など分かろうはずもない(いまだに分からないか)。

 もっとも、この映画で描かれたような、夫を失った女性の自立など、今は珍しくもない(夫がいても自立する)のだから、この映画を初めて見る若者たちには、いかにも古くさい映画として捉えられてしまうかもしれないなあ。

 加山雄三は、頑張っているが、時々若大将に見えてしまうところもあった。


黒澤明監督

『椿三十郎』(62)(1979.10.25.蒲田宝塚.併映『隠し砦の三悪人』『用心棒』)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9b82cd9ed7edf5a2245107033de223ea


『赤ひげ』(65)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/83c26034db6cf9fde5a303eb2f538096
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/26bccad59a259cfe75f68aa0e4fe0010
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/48cd11470d0e2ece91ad9b0601a2dd2c


戦争もの 

『太平洋の翼』(63)(1979.4.3.)松林宗恵

 東宝演技陣に、若き日の渥美清、西村晃などが加わった戦争悲喜劇。女優は星由里子ただ一人。


『青島要塞爆撃命令』(63)(1978.10.11.蒲田宝塚.併映は『火の鳥』)古澤憲吾

 第一次大戦中の青島の戦いで、ドイツ軍に立ち向かった海軍航空隊の活躍を描く。意外な拾い物。東宝に戦争映画の名作がたくさんあるのを忘れていた。複葉機からのレンガや釘の投下シーンが、いかにも古めかしくて面白い。主要メンバーは誰も死なないし、深刻にならずに見られる楽しい戦争映画。


『連合艦隊司令長官 山本五十六』(68)(1968.8.目黒京王東宝)丸山誠治 
『日本海大海戦』(69)(1973.9.30./10.7.日曜映画劇場)丸山誠治 
『激動の昭和史 軍閥』(70)(1976.12.30.)堀川弘通


『零戦燃ゆ』(84)(1987.8.15.ゴールデン洋画劇場)舛田利雄

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/84b1fe88b1f99c0a45c829a5121770ca

 


 

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『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』

2023-01-07 06:18:00 | 新作映画を見てみた

『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』(2022.12.22.東宝東和試写室)

 映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発し、#MeToo 運動の火付け役となった2人の女性記者による回顧録を基に映画化した社会派ドラマ。

 ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は、大物映画プロデューサーのワインスタインが、数十年にわたって、複数の女性たちに行った性的暴行について取材をする中で、彼が、これまで何度も記事をもみ消してきた事実を知る。

 被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や、暴行によるトラウマによって声を上げられずにいた。問題の本質が映画業界の隠蔽体質にあると気づいた記者たちは、取材を拒否され、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する。

 ブラッド・ピットが製作総指揮をし、監督は『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』のマリア・シュラーダー。実際の被害者の一人であるアシュレイ・ジャッドが、本人役で登場する。

 新聞記者が大きな事件の真相を暴く、しかも実話の映画化という形式は、例えば、『大統領の陰謀』(76)(ワシントン・ポスト/ウォーターゲート事件)、『スポットライト 世紀のスクープ』(15)(ボストン・グローブ/カトリック司祭による性的虐待事件)、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17)(ワシントン・ポスト/アメリカ国防総省の最高機密文書)、『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(17)(ナイト・リッダー/イラク戦争の大量破壊兵器捏造問題)など、枚挙にいとまがない。

 ところが、そのほとんどが、男社会の新聞社が舞台で、男性記者が活躍するというパターンだった。それに対してこの映画では、事件の内容もさることながら、2人の女性記者が中心になっている。そうした変化からも、これはまさに”今の映画”だと思わずにはいられなかった。

 記者が、単なるスクープ狙いではなく、本当に対象者の身になって取材し、それを記事にした。だからこそ、被害女性たちも声を上げたのだ。これが男性記者だったら、こうはいかなかったはずだ。否、そもそもこの事件を記事にしようと考えただろうかということ。これは報道の根幹に関わる問題でもある。

 この映画、娯楽的に見ても、全体的にテンポがよく、2人の女性記者の日常生活の描写や、サスペンスフルな話の展開という点でも見事なものがあった。キャリー・マリガンが、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20)とは180度違う役柄を演じていたので驚いた。

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加山雄三の映画『零戦燃ゆ』

2023-01-07 04:40:50 | 映画いろいろ

『零戦燃ゆ』(84)(1987.8.15.ゴールデン洋画劇場)

 ゼロ戦のパイロット(堤大次郎)と整備士(橋爪淳)との友情を通して、ゼロ戦の歴史と太平洋戦争の流れを描く。加山雄三が、ゼロ戦開発の海軍側主務者の下川万兵衛海軍大尉を演じる。

 また、8月15日が近づくと、昨日の『子象物語 地上に降りた天使』(86)や、この映画のような、戦争映画が放送され、1年の数日間だけ、戦争について考える日々がやって来る。

 だが、もはや多くの日本人が戦争についての意識を失っており、アメリカ映画が描くベトナム戦争もののような、緊張感や切実さを、日本の戦争映画に求める方が無理な話なのではと思う。

 従って、この映画も、東宝お得意の戦争映画の1本として見てしまえばよかったのだが、柳田邦男の原作ということで、ゼロ戦にまつわる『ライトスタッフ』(83)的な描き方を期待してしまったのがいけなかった。

 第二次大戦を扱えば、悲劇の敗戦国日本という大前提があり、それが良くも悪くも日本の戦争映画を空々しく見せ、風化させるという、逆効果を生むことを忘れていたのだ。いいかげん、作り手たちは、そこに気が付いてくれないものだろうか。

 その前提を取り去れば、もっと違う形で、広い視野から戦争の罪悪や空しさなどを、捉えることが出来るはずだ。監督・舛田利雄、脚本・笠原和夫のコンビは、日露戦争を描いた『二百三高地』(80)では、それをやってのけたはずなのにと、戦争を知らない俺にいわせるようじゃ駄目だよねえ。

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加山雄三の映画『戦国野郎』

2023-01-07 02:01:14 | 映画いろいろ

『戦国野郎』(1992.1.25.)(63)

 甲斐の武田家を離反し、武田家の忍者たちから命を狙われながらも、城持ちになることを望み、さすらいの旅を続ける若き忍者・越智吉丹(加山雄三)の活躍を描く。

 『岡本喜八全作品』という本の発売を記念して、一時途絶えていた、「ビデオによる岡本喜八復習週間」を復活させてみた。前回の最後が、ちょっときつかった『血と砂』(65)だったので、今回は、小品ながら、東宝青春路線+時代劇=和製ウエスタンといった感じがするこの映画を選んでみたが、これが大正解の快作だった。

 黒澤明が和製ジョン・フォードなら、この岡本喜八は和製ジョン・スタージェスか。いや、この快調なコミカルタッチはバート・ケネディか。

 実際、加山雄三のお気楽ぶりは若大将以上だし、今は「水戸黄門」の風車の弥七になった中谷一郎が、かつて持っていた危うい魅力、またもや怪演を披露する佐藤允の木下藤吉郎など、岡本演出は冴えわたっている。

 ただ、最近の「全ての作品が素晴らしい」というような、岡本喜八の持ち上げられ方は、何だかサミュエル・フラーやデニス・ホッパーのそれとも似ている感じがして素直にうなずけないものがある。

 実際、岡本喜八の魅力は、突拍子もなく面白い映画を作る半面、見事な失敗作も作ってしまう危うさにあると思う。その分、出来がいい方に出会えたときのうれしさが倍増するといったところではないか。そんな気がするのだが。

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加山雄三の映画『独立愚連隊西へ』

2023-01-07 00:02:51 | 映画いろいろ

『独立愚連隊西へ』(60)(1989.1.18)

 軍隊のハミ出し野郎が集まった“独立愚連隊"。彼らは、北支戦線で全滅した連隊の軍旗を求めて、敵の真っただ中に飛び込んでいく。軍隊の象徴たる軍旗に命を懸けることの虚しさを描いた加山雄三の初主演作。

 またもや岡本喜八監督作である。彼の戦中派としての、戦争に対する屈折した思いや憎悪は、すでに『肉弾』(68)などで見せられてはいたが、噂通り、この映画はその最たるものであった。

 しかも、そうした重いテーマを、半ばコミカルに、アナーキーに描き、加えて、アクション映画としての面白さも持ち合わせながら、戦争に対する憎悪という本筋をしっかりと浮かび上がらせるところは、さすがであった。

 例えば、最近のバリー・レビンソンの『グッドモーニング,ベトナム』(87)のように、戦争とは別のコンセプトからストーリーを展開させながら、実は戦争の持つ悲惨さや無慈悲を描いているという作法とも通じるものがある。

 日本の戦争映画は、総じて重苦しく、ひたすら敗戦国日本の悲劇を描こうとするから、無理や風化が生じる。その意味では、こういう戦争映画が撮れる岡本喜八の存在は貴重である。再び、「岡本喜八に光を!」と叫びたい気持ちになった。

 ところで、初期の岡本作品の多くに、佐藤允が出演し、ギラギラとした個性を発揮している。何やら噂では、今は仲違いしているようだ。黒澤明と三船敏郎もそうだが、監督と役者の関係は、残念なことに、深ければ深いほど、一度こじれたらなかなか元には戻れないようだ。

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『ドリーム・ホース』

2023-01-06 21:58:37 | 新作映画を見てみた

『ドリーム・ホース』(2023.1.5.オンライン試写)

 ウェールズの谷あいにある小さな村で、無気力な夫(オーウェン・ティール)と暮らすジャン(トニ・コレット)は、スーパーでのパートの仕事と親の介護という、単調な毎日に飽き飽きしていた。

 ある日ジャンは、馬主経験のあるハワード(ダミアン・ルイス)の話に触発されて競走馬を育てることを思いつき、村民に共同で馬主となることを呼び掛ける。

 週10ポンドずつ出し合って組合馬主となった彼らの夢と希望を乗せ、「ドリームアライアンス(夢の同盟)」と名付けられた馬は、奇跡的にレースを勝ち進み、彼らの人生も変えていくが…。

 実話を基に映画化した、うそのような本当の話。『ブラス!』(96)のブラスバンドや、『フルモンティ』(97)の男性ストリップのように、「片田舎の普通の人々が何事かを成し遂げる」という、イギリス映画お得意のパターンが、ここでは競走馬を媒介にして描かれる。

 個性的な村民たちの点描も面白いが、馬やターフコースが美しく映えるレースの様子が圧巻。実際の“ご本人”も登場する、エンドクレジットのカーテンコールも楽しい。

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加山雄三の映画『俺の空だぜ!若大将』

2023-01-06 16:44:08 | 映画いろいろ

『俺の空だぜ!若大将』(2011.5.21.日本映画専門チャンネル)

 若大将シリーズは結構見ているのだが、これは未見だった。今回のスポーツは、タイトル通りのスカイダイビング。

 ただ、主人公の若大将こと田沼雄一がサラリーマンになったのもさることながら、演じる加山雄三をはじめとするレギュラー陣がやけに老けて疲れて見えるし、演出も雑な感じがする。

 60年代後半と70年代前半に作られた映画とでは、たかが数年しか違わないのに、全く雰囲気が異なる。これは斜陽に向かった当時の映画界の空気が如実に反映されていたということなのか。やはり、明るく能天気な若大将シリーズは60年代の映画なのだ。

 ところで、2代目の若大将は草刈正雄だとばかり思っていたら、ここに大矢茂という2代目がいた。当時は期待の新人だったのだろうか。その影の薄さは、007シリーズの2代目ジェームズ・ボンド役のジョージ・レイゼンビーをほうふつとさせる。おばあちゃん役の飯田蝶子はこれが最後の出演となったという。

 加山は波瀾万丈の人生を歩みながらいまだに現役を続けている。で、NHK BSの『武田鉄矢のショータイム』のこの日のゲストだった小林旭もまた、すさまじい人生を送ってきた人だ。映画スター小林旭の輝きはリアルタイムでは知らないが、この番組でスターとしての矜持や存在感の大きさをあらためて知らされた。

 そして、とても72歳とは思えぬ、あの独特の張りのある高音の歌声、いわゆる“アキラ節”で、「ギターを持った渡り鳥」から「自動車ショー歌」「さすらい」「北帰行」「昔の名前で出ています」「熱き心に」まで、雑多な種類の名曲を披露する姿には圧倒された。特に「北帰行」は、一緒に出ていた浅丘ルリ子じゃなくても、聴いていると泣けてくるぜ。

 この後、日本映画専門チャンネルに戻ったら、武田鉄矢主演の『刑事物語3 潮騒の詩』(84)をやっていた。ジャッキー・チェンを意識したカンフーアクションなどに努力の跡はうかがえるが、これが先の加山や旭なら、何をやっても努力の跡を感じさせないだろう。

 鉄矢には気の毒だが、そこが彼らの大スターたるゆえんなのだ。この映画、製作はキネマ旬報社だが、沢口靖子のデビュー作、共演は若大将シリーズの澄ちゃんこと星由里子と夏木陽介と来れば、これは実質的には東宝映画じゃないか。

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