翌朝。彼を送り出してから、依頼されていた雑誌のコラムに取りかかる。こんな私でもコラムを持たせてくれる雑誌社には足を向けて寝れない思いだ。だからいつも全力で挑む。これが私のポリシーであるけれど、今日は一向にキーボードをたたく手が進まない。
不意に携帯を手に取りアドレス帳を見る。そしてため息。
「メール・・・。した方がいいのかなぁ。それとも待っていた方がいいのかなぁ・・・。」
ふいに、「揺れる~想い~ぃから~だじゅう~感じィいてぇ~。」思わず口ずさむ。
「あ~。いけない。雑誌社の方に申し訳ない。集中。集中。」
気持ちを切り替えてパソコンのモニターに向き合う。さらに今日は近くのスーパーの特売日だから、開店と同時に行かなければ本日の目玉商品の卵が売り切れてしまう。なんとしてもこの過酷なミッションを午前中に済ませるのだ。
うんうん唸りながら、コラムを書きあげ雑誌社に送信する。クリック一つで原稿を送れるなんて、なんていい世界なのだろう。インターネットがあって本当によかったと思う瞬間である。
さぁ次に買い物だ。トートバックを手に取りスーパーに向かう。今日も穏やかで日差しが暖かい。もうマフラーはいらないな。そんな事を感じながら団地の階段を下りると同じ棟のおばさまたちが話に花を咲かせていた。
「おはようございます。今日もいい天気ですね。」
「あら、お早う。雫ちゃん。今からお買い物?」
「はい。今日は特売日だから、ちょっと気合入れて行ってきます。」
「気をつけてねぇ。」
「行ってきます。」
子供の頃からの付き合いだから、知っている人ばかりで人間関係は極めて良好だ。これがこの団地に残った理由の一つでもある。
駐輪場に止めてある自転車の前かごにトートバック入れ、自転車のペダルを踏んだ。
通勤時間が過ぎ道行く車も幾分減って自転車を漕いでいても気持ちがいい。歩道の植え込みに咲くスィートピーが風に揺れている。街路樹の桜のつぼみが小さく膨らんでいる。どこかで洗濯機を回す音が聞こえ洗剤のいい香りが漂ってくる。すれ違うお年寄りはゆっくりと散歩をしている。いつもの少し遅めの朝の風景だ。
スーパーの開店と同時に飛び込み、あらかじめ広告でチェックしておいた商品をめざす。
ぐずぐずしているとあっという間になくなってしまうのだから気が抜けない。
何処に何が陳列してあるか私の頭の中にマッピングされているから、わき目も振らずにさくさくと買い物を済ます。これが私のルールだ。
レジを済ませ、トートバッグに戦利品を詰めていると、後ろから誰かが私の名前を呼んだ。
「月島? 月島雫じゃない?」
どこかで聞いた懐かしい声だ。思わず振り返る。
「えっ。あっ。夕子?」
「いゃ~雫~! ひさしぶり~。」
そこにいたのは、中学のクラスメートだった原田夕子だった。
不意に携帯を手に取りアドレス帳を見る。そしてため息。
「メール・・・。した方がいいのかなぁ。それとも待っていた方がいいのかなぁ・・・。」
ふいに、「揺れる~想い~ぃから~だじゅう~感じィいてぇ~。」思わず口ずさむ。
「あ~。いけない。雑誌社の方に申し訳ない。集中。集中。」
気持ちを切り替えてパソコンのモニターに向き合う。さらに今日は近くのスーパーの特売日だから、開店と同時に行かなければ本日の目玉商品の卵が売り切れてしまう。なんとしてもこの過酷なミッションを午前中に済ませるのだ。
うんうん唸りながら、コラムを書きあげ雑誌社に送信する。クリック一つで原稿を送れるなんて、なんていい世界なのだろう。インターネットがあって本当によかったと思う瞬間である。
さぁ次に買い物だ。トートバックを手に取りスーパーに向かう。今日も穏やかで日差しが暖かい。もうマフラーはいらないな。そんな事を感じながら団地の階段を下りると同じ棟のおばさまたちが話に花を咲かせていた。
「おはようございます。今日もいい天気ですね。」
「あら、お早う。雫ちゃん。今からお買い物?」
「はい。今日は特売日だから、ちょっと気合入れて行ってきます。」
「気をつけてねぇ。」
「行ってきます。」
子供の頃からの付き合いだから、知っている人ばかりで人間関係は極めて良好だ。これがこの団地に残った理由の一つでもある。
駐輪場に止めてある自転車の前かごにトートバック入れ、自転車のペダルを踏んだ。
通勤時間が過ぎ道行く車も幾分減って自転車を漕いでいても気持ちがいい。歩道の植え込みに咲くスィートピーが風に揺れている。街路樹の桜のつぼみが小さく膨らんでいる。どこかで洗濯機を回す音が聞こえ洗剤のいい香りが漂ってくる。すれ違うお年寄りはゆっくりと散歩をしている。いつもの少し遅めの朝の風景だ。
スーパーの開店と同時に飛び込み、あらかじめ広告でチェックしておいた商品をめざす。
ぐずぐずしているとあっという間になくなってしまうのだから気が抜けない。
何処に何が陳列してあるか私の頭の中にマッピングされているから、わき目も振らずにさくさくと買い物を済ます。これが私のルールだ。
レジを済ませ、トートバッグに戦利品を詰めていると、後ろから誰かが私の名前を呼んだ。
「月島? 月島雫じゃない?」
どこかで聞いた懐かしい声だ。思わず振り返る。
「えっ。あっ。夕子?」
「いゃ~雫~! ひさしぶり~。」
そこにいたのは、中学のクラスメートだった原田夕子だった。