硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

耳をすませば。 彼と彼女のその後  26

2013-08-03 08:08:36 | 日記
ファッション雑誌から抜け出てきたような出で立ちで、「モデルをやっています。」と言われても不思議ではないくらい綺麗になっていて、容姿端麗とはこういう人の事を指すんだなと思うほどだった。

「お買いもの?」

「あっ。ああっ。そ、そう。今日は特売日だからがんばっちゃった。夕子こそどうして?」

「私? 実は・・・。ちょっと実家に帰ってきてて、今日は母に頼まれてお買いもの。」

「あっ。そう言えば風の便りに聞いたけれど結婚したんだってね。」

「まぁ・・・。そうね。」

何やら浮かぬ顔をしている。夕子にとってこの話はタブーだったのか。そう思っていると夕子が話を続けた

「そうだ! 雫。今から時間ある? よかったらちょっと話さない?」

「いいね。いいよ。久しぶりだしね。それにきょうは冷凍食品買わなかったから大丈夫。」

少し曇った顔をしていた夕子が笑った。それを見てなんだかほっとした。

「雫らしいね。そういうの。」

「そうかなぁ。自分では分かんないんだけどね。」

「じゃあ、私の車に乗って。話し込むんだったらファミレスがいいと思うけど。それでいい?」

さすが夕子。美しいうえに、即断即決。私とは対照的だ。だから彼女についてゆけば間違いないなと思った。

「あれが私の車。」そう言って指差す夕子。

指差す方向には真っ赤な可愛い左ハンドルの車があった。「どうぞっ」と言われドアを開けて助手席に座る。しかし、普段乗っている車の運転席側が助手席だと不思議な感じがする。私が物珍しそうに車を見ている横では、颯爽と真っ赤な車を走らせる夕子の姿があった。一瞬見とれてしまい、おもわずかっこいいなと思ってしまった。