地球屋に向かって歩いてゆくと、わずかにお店の扉が開いているのが見えた。誰かいるのだろうかと思いながら扉の隙間から中を覗くと女性の姿が見えた。
地球屋の中はがらりとしていて、沢山あったアンティークはすべて無くなっていた。
どうやら女性はほうきと塵取りを持っていて掃除をしているようであった。危険な人じゃないと判断した私は勇気を振り絞って中にいる女性に声をかけた。
「あの~。すいませ~ん。」
その女性は振り返り、「はい?」と返事をした。少し細みで肩まで伸びた黒髪。綺麗と言うか可愛いという感じだろうか。クリーム色のダウンジャケットに白いタートルネックのセーター、スキニーのデニムにスニーカーというラフな格好の大学生くらいのお嬢さんだった。
「あの、此処のお店の関係者の方ですか?」と尋ねると、「う~ん。まぁ、そうかな。」と、答えた。
でも、それだけじゃあ誰だかわからないから、もう少し尋ねる事にした。
「えっと。西司朗さんのご関係の方ですか? 」と尋ねると、「いえ。」と、そっけない返事が返ってきた。どうしたものかなと考えあぐねていると、その女性が「あなたは?」と問いかけてきた。
「あっ。すいません。突然で失礼しました。私はこのお店のファンで西さんにとてもお世話になったもので、名前は杉村雫って言います。」そう言ってお辞儀をした。すると、彼女は固かった表情を柔和にして「私は北翠っていいます。」と言って挨拶をしてくれた。
「北?」どこかで聞いた名字だ。そうだ、アトリエで一緒に楽器を演奏していた人に北さんがいた。だから、「あの。北さんて此処のアトリエで西さんとよく演奏していらした方ですか。」と聴くと、「そうです。その北です。私は北の孫になります。」と、言った。
それで、ようやくどういう人なのかわかったけれど、北さんのお孫さんがどうしてこのお店にいるのかという疑問が残った。だから私はその辺りを知りたくなった。
「北さんのお孫さんだったんですね。私、北さんの演奏を何度も聴かせていただいたんですよ。本当に素敵でした・・・。それで・・・。北さんは今でもご健在なのですか?」
そう尋ねると彼女の表情は少し硬くなり「今、入院してる。」と、短く答えた。
これ以上、北さんの事を聞いてはいけないと感じた私は、慌てて話を変えようとしてみたけれど、上手く出来るわけがなく、おもわず口からこぼれたのは私の本音だった。
地球屋の中はがらりとしていて、沢山あったアンティークはすべて無くなっていた。
どうやら女性はほうきと塵取りを持っていて掃除をしているようであった。危険な人じゃないと判断した私は勇気を振り絞って中にいる女性に声をかけた。
「あの~。すいませ~ん。」
その女性は振り返り、「はい?」と返事をした。少し細みで肩まで伸びた黒髪。綺麗と言うか可愛いという感じだろうか。クリーム色のダウンジャケットに白いタートルネックのセーター、スキニーのデニムにスニーカーというラフな格好の大学生くらいのお嬢さんだった。
「あの、此処のお店の関係者の方ですか?」と尋ねると、「う~ん。まぁ、そうかな。」と、答えた。
でも、それだけじゃあ誰だかわからないから、もう少し尋ねる事にした。
「えっと。西司朗さんのご関係の方ですか? 」と尋ねると、「いえ。」と、そっけない返事が返ってきた。どうしたものかなと考えあぐねていると、その女性が「あなたは?」と問いかけてきた。
「あっ。すいません。突然で失礼しました。私はこのお店のファンで西さんにとてもお世話になったもので、名前は杉村雫って言います。」そう言ってお辞儀をした。すると、彼女は固かった表情を柔和にして「私は北翠っていいます。」と言って挨拶をしてくれた。
「北?」どこかで聞いた名字だ。そうだ、アトリエで一緒に楽器を演奏していた人に北さんがいた。だから、「あの。北さんて此処のアトリエで西さんとよく演奏していらした方ですか。」と聴くと、「そうです。その北です。私は北の孫になります。」と、言った。
それで、ようやくどういう人なのかわかったけれど、北さんのお孫さんがどうしてこのお店にいるのかという疑問が残った。だから私はその辺りを知りたくなった。
「北さんのお孫さんだったんですね。私、北さんの演奏を何度も聴かせていただいたんですよ。本当に素敵でした・・・。それで・・・。北さんは今でもご健在なのですか?」
そう尋ねると彼女の表情は少し硬くなり「今、入院してる。」と、短く答えた。
これ以上、北さんの事を聞いてはいけないと感じた私は、慌てて話を変えようとしてみたけれど、上手く出来るわけがなく、おもわず口からこぼれたのは私の本音だった。