緩やかな坂を下り、商店街を越えると向原駅が見える。駅周辺は通勤時間がひと段落した後だから人影もまばらだ。
一駅先の杉の宮駅まで切符を買い電車に乗る。椅子に腰かけ、車窓から流れる風景をぼんやりと眺めた。街は一見変わらないように見えたけれど、あの時の記憶をたどってみると、どこかしら少しずつ変化していた。
杉の宮駅で下車し、改札を出る。駅前の横断歩道を渡り、高架をくぐり、道沿いの歩道を歩いてゆくと橋が見えてきた。その先は急につづら折りの登り坂道になっていて、その道を登った中ほどに図書館がある。
景色を見ながらゆっくりと歩いているのにもかかわらず、坂の途中で息が切れた。本当に運動不足だなぁと思った。背を伸ばし一息ついてから再び歩きだす。程なく行くとようやく図書館が見えてきた。
階段を上り図書館の脇を抜け裏口の塀の前に立つ。あの時は「ムーン」を再び見つけてこの塀を懸命の乗り越えていった。
塀に手を掛け「どうしようかなぁ」と少しとまどった。大人だからあの頃のような振る舞いをするのはどうかなと思ったけれど、「此処まで来たのだから行ってみよう!」と決めた。
周りに人がいないことを確かめてから「えいっ」と登ると、意外にも簡単に超える事が出来た。もっと高いイメージがあったけれど、よく考えてみたら、私の身長もあのころに比べれば随分伸びているのだから低く感じて当たり前なんだと思った。
きりとおしを駆け下り、住宅と住宅の間を通るトンネルのような細い路地を行くと、あっさりと閑静な住宅街にでた。こんなものだったかなと思いながら左に折れると、緩やかな坂が続くその先に緑色の屋根の洋館「地球屋」が見えた。
何年振りだろうか。たしか最後に来たのは優一との結婚が決まった時だから、もう3年くらい前かもしれない。幾度となくかよった地球屋。今はもう主がいないのだと思うと少し淋しい気持ちになった。
一駅先の杉の宮駅まで切符を買い電車に乗る。椅子に腰かけ、車窓から流れる風景をぼんやりと眺めた。街は一見変わらないように見えたけれど、あの時の記憶をたどってみると、どこかしら少しずつ変化していた。
杉の宮駅で下車し、改札を出る。駅前の横断歩道を渡り、高架をくぐり、道沿いの歩道を歩いてゆくと橋が見えてきた。その先は急につづら折りの登り坂道になっていて、その道を登った中ほどに図書館がある。
景色を見ながらゆっくりと歩いているのにもかかわらず、坂の途中で息が切れた。本当に運動不足だなぁと思った。背を伸ばし一息ついてから再び歩きだす。程なく行くとようやく図書館が見えてきた。
階段を上り図書館の脇を抜け裏口の塀の前に立つ。あの時は「ムーン」を再び見つけてこの塀を懸命の乗り越えていった。
塀に手を掛け「どうしようかなぁ」と少しとまどった。大人だからあの頃のような振る舞いをするのはどうかなと思ったけれど、「此処まで来たのだから行ってみよう!」と決めた。
周りに人がいないことを確かめてから「えいっ」と登ると、意外にも簡単に超える事が出来た。もっと高いイメージがあったけれど、よく考えてみたら、私の身長もあのころに比べれば随分伸びているのだから低く感じて当たり前なんだと思った。
きりとおしを駆け下り、住宅と住宅の間を通るトンネルのような細い路地を行くと、あっさりと閑静な住宅街にでた。こんなものだったかなと思いながら左に折れると、緩やかな坂が続くその先に緑色の屋根の洋館「地球屋」が見えた。
何年振りだろうか。たしか最後に来たのは優一との結婚が決まった時だから、もう3年くらい前かもしれない。幾度となくかよった地球屋。今はもう主がいないのだと思うと少し淋しい気持ちになった。