教会内にアナウンスが流れると、登志子さんは「さあ皆さん、お話は後で楽しみましょう。」と言って、私達を席に着くよう促した。
席に着くと教会はまた静けさを取り戻し追悼ミサが始まった。聖餐台に立った牧師さんが祈りをささげると、皆はこうべを垂れ黙祷した。そして説教を聴いた後、教会員さんの美しい讃美歌を聞き、皆でもう一度祈りをささげた。
不思議と悲しみはない。葬儀の日はとても涙もろかったのに、今日は悲しみという感情がバッサリ切り落とされた感じがしていた。慣れてゆくとはこういうものだろうか。でも、死について慣れてしまっていいのだろうかとも思った。
ミサはお茶会に移り、別室に用意されたテーブルで故人を偲んだ。天沢君は色々な人に挨拶をしつつ、会話を楽しんでいた。おばさまも登志子さんも忙しく動いていて、各テーブルを回り参列された方々にお礼をされていた。
部屋の隅の方では天沢君のお父さんや久貢さんが牧師さんや他の男性を交えて少し難しそうな表情で話しこんでいるのが見えた。
翠さんはこのミサに友達がいたようで、時頼笑い声も聞こえてきて楽しそうに話していた。
私は、品の良いカップに注がれたダージリン・ティーを飲みながら、テーブルに置かれていた手作りクッキーを食べていた。
すると、色々な方から話しかけられ、西さんとの出会いから今の仕事に至った話をすると、皆が口をそろえたように「西さんらしい。」と言っていた。私は、西さんと言う人物は誰にとっても変わらない人なんだなと思った。
しばらくすると、天沢君が私のいるテーブルに来て「ようやく雫に辿り着いたよ。」と言った。
聴きたい事や話したい事は沢山あるけれど、いざとなる何を話していいか分からなくなってしまった。だからと言って沈黙も耐えられなかったから、仕方が無く今後の予定を聞く事にした。
「天沢君は・・・。日本にいつまでいるの。」
「明日、成田発の12時15分の便で帰るよ。」
「あっ、そうなんだ。」
「うん。仕事も片付いたしね。」
「そうかぁ・・・。もう帰っちゃうんだね。」
「うん。せっかくだからゆっくりしていたいんだけれど、バイオリンの修理や調整を待ってくれている人いるからね。」
「待ってくれている人が・・・いるんだね。」そう言った後、私は心のどこかに少し淋しさを感じた。
席に着くと教会はまた静けさを取り戻し追悼ミサが始まった。聖餐台に立った牧師さんが祈りをささげると、皆はこうべを垂れ黙祷した。そして説教を聴いた後、教会員さんの美しい讃美歌を聞き、皆でもう一度祈りをささげた。
不思議と悲しみはない。葬儀の日はとても涙もろかったのに、今日は悲しみという感情がバッサリ切り落とされた感じがしていた。慣れてゆくとはこういうものだろうか。でも、死について慣れてしまっていいのだろうかとも思った。
ミサはお茶会に移り、別室に用意されたテーブルで故人を偲んだ。天沢君は色々な人に挨拶をしつつ、会話を楽しんでいた。おばさまも登志子さんも忙しく動いていて、各テーブルを回り参列された方々にお礼をされていた。
部屋の隅の方では天沢君のお父さんや久貢さんが牧師さんや他の男性を交えて少し難しそうな表情で話しこんでいるのが見えた。
翠さんはこのミサに友達がいたようで、時頼笑い声も聞こえてきて楽しそうに話していた。
私は、品の良いカップに注がれたダージリン・ティーを飲みながら、テーブルに置かれていた手作りクッキーを食べていた。
すると、色々な方から話しかけられ、西さんとの出会いから今の仕事に至った話をすると、皆が口をそろえたように「西さんらしい。」と言っていた。私は、西さんと言う人物は誰にとっても変わらない人なんだなと思った。
しばらくすると、天沢君が私のいるテーブルに来て「ようやく雫に辿り着いたよ。」と言った。
聴きたい事や話したい事は沢山あるけれど、いざとなる何を話していいか分からなくなってしまった。だからと言って沈黙も耐えられなかったから、仕方が無く今後の予定を聞く事にした。
「天沢君は・・・。日本にいつまでいるの。」
「明日、成田発の12時15分の便で帰るよ。」
「あっ、そうなんだ。」
「うん。仕事も片付いたしね。」
「そうかぁ・・・。もう帰っちゃうんだね。」
「うん。せっかくだからゆっくりしていたいんだけれど、バイオリンの修理や調整を待ってくれている人いるからね。」
「待ってくれている人が・・・いるんだね。」そう言った後、私は心のどこかに少し淋しさを感じた。