硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

耳をすませば。 彼と彼女のその後  27

2013-08-04 07:42:30 | 日記
幹線道路沿いにあるファミレスに向かう。 車内のステレオはFMラジオがついていて、DJが身近な話題を面白おかしく軽快に話していた。夕子はステレオのタッチパネルに指を伸ばしボリューム下げて話し出した。

「ほんと・・・。久しぶりねぇ。」

「そうだねぇ。」

「最後に会ったのはいつだっけ。」

「う~ん。たしか高校に入って、最初の夏休みに遊んだ以来じゃない?」

「ああ。そうそう。あの日ね。たしか・・・久しぶりに会わないって電話したんだっけ。それで、お買い物行って、映画観て・・・」

もう、17年くらい前の話なのに昨日の事のように記憶が蘇ってくる。私と夕子は親友だったけれど進む道は違った。成績優秀だった彼女は都内のお嬢様学校へ進学した。そして、その年の夏休みに再会したのだが、私の知らない世界へと踏み出していた夕子に圧倒されっぱなしだった事を今でも覚えている。

「あの時は、ほんと面白かったわぁ。」

「うん。楽しかったね。今思うとくだらない事でもよく笑ってたね。」

「そうそう・・・。雫とはいい想いでしかないわぁ。」

そう言って、夕子はとても楽しそうに話していたけれど、私の胸がちくっと小さく痛んだ。

ファミリーレストランの駐車場に車を止めお店に入る。店員さんが禁煙席と喫煙席のどちらが良いか尋ねると夕子は「私はタバコ吸うけれど、あなたは?」と、聴いてきた。
「あの夕子が」と、タバコを吸う事に驚きを感じたけれど、私は「すわないよ。」と答えると、「じゃあ、禁煙席へ」と返事をした。彼女の一挙手一投足には感動してしまう。

窓側の席に座りメニューを手に取る「とりあえずドリンクかなぁ」といって、私を見た。

「あっ、そうね。それでいいと思うよ。」

「じゃぁ、とりあえずね。」といって、ボタンを押した。そして、間髪いれず、

「で、最近どうなの? 雫の本が出版された時は本当に驚いたけれど、今でも何か書いているの?」と、聞いてきた。

「うん。今、雑誌のコラムを担当させてもらってて、今日も朝からそれをやっつけてきた所。後、次回作を考えてるんだけれど、なかなか思うように進まないんだぁ。」

「へぇ。そう言えばあの頃、暇があれば図書館へ通ってたし、文才あるなぁとは思ってたけれど、職業にしちゃったのね。すごいわ。」

「ううん。 すごくないよ。かろうじてやれているだけだよ。それより、夕子は今何してるの?」

夕子は目の前にあった水を口に付けて、一つため息をついた。

「実はね。今、夫と別居中なのよ。」

「えええっ!」

「ふふふ。驚いた。」

「そりぁ、普通、驚くでしょう。」

「そうか・・・。雫は驚いちゃうんだね・・・。」

それがどういう意味を持っているのか私にはわからなかったが、あえて聞くことはせず夕子が発する次の言葉を静かに待った。