夕食になってすぐ「明日病院へ行く」と母に言った。食事中、何かにせかされている気がした。
食べ終えて「今から行ってくる」と病院へ。父は急な訪問に驚いたが、笑顔だった。
消灯近くになった。帰り支度を始めた時、「お母さんを頼む」と言った言葉が最後になった。くも膜下出血の再発。当直は主治医だったが、2時間後に父は両親のもとへ逝った。
なぜ夕食後、急に病院へ急いだのかわからないが、これを虫の知らせというのだろう。そのため父の最期の言葉を聞き、臨終に立会えた。40年前のことだが、父の享年を10歳超えた今も思い出す。
(06.12.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
(写真は新聞掲載の様子)