a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

ジャーナリズムの力

2008-06-30 18:05:00 | Weblog
今日、『セチュアンの善人』の旅班が、
東北公演に旅立ちました。
一方では、
『パパおはなしして』の公演班は、稽古が佳境。
旅公演初日まで、10日。
がんばれ~!!

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最近、
次の公演に向けて読んでる本が何冊かある。

先日読み終わった、
アメリカ人ジャーナリスト、
ジョン・ハーシーの書いた『ヒロシマ』。
敗戦直後の広島で取材し、
6人の被爆者のインタビューを構成して書かれたルポ。
その構成力と圧倒的な筆力に、
時代を越えたエネルギーを感じた。
熱いエネルギーではなく、
非常にクールで乾いたエネルギーだ。

現代では、
日本だけでなく、
世界的にジャーナリズムが信用できない時代になってしまった。
マスコミはまず疑え。
そうしなければ、
自衛できないほど荒んだ状況である。
良心的な反権力的なものや、
タブーを侵すものは排除されている。
受け手である僕らは、
よっぽどの高度な知識を持つか、
ネットのような匿名性を利用した情報から、
真理を追求しなければならない。
しかし、
やはりその場合も、
莫大な情報から取捨選択しなければならず、
やはりその発信源が誰か、
ということになってくる。

つまり、
報道にしろ、
批判にしろ、
評価にしろ
匿名性には疑心暗鬼で、
マスメディアには不信感で、
信頼できる情報源からの発信しかないのが現状だと思う。

『ヒロシマ』がアメリカで出版されたのは、
1947年。
敗戦から僅かに2年。
アメリカでは原爆の事実が正確には伝わっておらず、
新型爆弾が戦争を終わらせた、
という認識が圧倒的だった。

そんな時代に、
この本は大きな衝撃を与えた。
全米中が、
自分たちの軍隊が選択したあまりにも恐ろしい行為を、
初めて知った。

その反響は大きく、
世界各地で出版・翻訳され、
ドラマや芝居になり、
世界がようやく“原爆の真実”を知ることとなった。
読者からは、
インタビューされた人たちへの励ましの手紙や、
様々な形での寄付が寄せられた。

ジョン・ハーシーは、
この本のあらゆる利益を世界平和の為に寄付し、
日本の出版に際しても無料で権利を譲渡した。
日本の出版者たちもまた、
被爆者たちのために、
そのすべての利益を使うことにした。
その流れは、
現在でも続いている。

時代の違いと一言で片付けることは簡単だ。
しかし、
ジャーナリズムには、
人の心を動かす力があるのは確かだ。
書き手の能力はもちろんだが、
やはり、
受け手の能力、
とりわけ、素直さやナイーブさが必要だろう。

僕はもっともっと世界のことを知りたい。
世界で何が起きているのか。
ジョン・ハーシーというジャーナリストの出会いは、
知ることこそ、
僕の大きな欲望の一つなのだと、
あらためて思い出させてくれた。
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