8月3日、『どん底』稽古場で二度目の学習会として岡田尚弁護士をお招きしました。
その報告をどん底でクワシニャー役の名瀬遙子よりお伝えします。
+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜
岡田先生は1974年から現在まで一貫して弱者の立場に立った様々な労働事件に携わり、
この国の方向を大きく変えた「国鉄闘争」や「オウム事件」、
現役自衛官の内部告発によって劇的勝訴に至った「護衛艦たちかぜいじめ裁判」など多岐にわたる弁護活動と共に、
よこはま九条の会などでも幅広く活躍されています。
劇団では2005年頃から毎回公演を観ていただき、
2012年にはアーノルド・ウェスカー作『大麦入りのチキンスープ』
公演のパンフレットに『サラー持続する志~身軽・尻軽・足軽~』という文章を寄稿していただきました。
今回は「労働弁護士から見た現代のどん底」というテーマで戯曲の中から幾つかの台詞を抜粋し、
その言葉から貧困、人権、戦争法案に至る現況などを自由にお話しいただくという事になりました。
が、抜粋をお渡しするのが直前になり、レジュメはなしでかなりの無茶振りでしたが、
多様な視点から倫しく深いお話を聞くことができました。
『どん底』の時代の失業、仕事自体がない時代の貧困とは違い、
人手不足が叫ばれながら派遣労働やブラック企業の増加など労働の質の低下や働く意欲や誇りの喪失、
相対的貧困率の低さに加え象徴的貧困の問題など《経済大国日本》の中で一見しただけでは分からない、
貧困のありようが違う現在、『どん底』の登場人物たちが皆、
貧民窟からの脱出を願うように、
今の日本のこの閉塞状況から脱出する契機をどう見いだすのか...
その答えは単純ではないけれど、
まず、自分だけ、一人だけの脱出や自分のために一人で闘うことはとても難しく【人権は守りあうもの】という意識が大切で、
貧困・労働・人権・戦争はどれも一体のものであり、
今こそ連帯を求める心が必要だとの事でした。
岡田先生の同僚であり、
オウムに殺害された坂本堤弁護士と殺害の実行犯となった医師の中川智正、
どちらも若く有能だった彼らが、
何故、殺される側、殺す側になってしまったのか。
そこには、「弱者のために...」という言葉を嫌い、
「弱者に寄り添い、共に生き、共に成長する」ことを目指した坂本弁護士と教祖・麻原への帰依、
自己の解脱と組織内での出世のみを目指した中川の生き方の選択に決定的な分岐点があったということ、
加えて組織や共同体は放っておけば必ず腐敗する。対立を恐れず、対話をすること。
時には『どん底』のルカのような異邦人、外部からの波紋を受け入れ、
色んな人が石を投げ込み「イモとイモがぶつかりあって泥が弾ける」ような状況を意識的に作る必要があるというお話しもされました。
更に...最高裁で敗訴したものの、なお闘っているJALの方がある集会で
「かつての国鉄民営化と、JALの不当解雇には同じ構造がある。
あの時、単なる支援ではなく、自分の問題として連帯し闘うべきだった」
と述べた事も紹介されました。
時の政治や状況によって《人権》は後退したり前進したり常にせめぎあう。
権利のための闘いは次世代に対しての義務であり、明日の自分の権利擁護のためでもある。
だからこそ今起きている様々な人権侵害、人間らしさを奪う行為を見逃さず、
自分の問題として捉え、皆で一緒に解決しようとする姿勢が大きな成果へ繋がる。
皆さん、身軽・尻軽・足軽に行動しましょうと熱く話されました。
『どん底』という作品のもつ今日性と共に、
今の危機的な状況を打破するための手がかりとなるような大変示唆に富む時間でした。
尚、岡田先生は先月、
長年にわたる弁護活動や人との繋がりを綴った自伝『証拠は天から地からー人権弁護士の立ち位置』(新日本出版)を上梓されました。
ぜひご一読ください。
文責:名瀬遙子
+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜
東京演劇アンサンブル公演
どん底
2015年9月10日~20日
ブレヒトの芝居小屋
作……M・ゴーリキイ
訳……神西清
演出……三由寛子
音楽……池辺晋一郎
装置……三木元太
照明……真壁知恵子
効果……大場神
衣裳協力……竹内陽子
宣伝美術……本多敬
舞台監督……三木元太
効果オペレーター…篠原祐哉
制作……小森明子・太田昭・辻尾隆子
制作チーム……TEE運営委員会
演出助手 ……奈須弘子・永濱渉
舞台監督助手……入江龍太・雨宮大夢・大橋隆一郎
料金
前売一般=3800円 前売学生=3000円 Low Price Day=2500円
全席自由
■キャスト
ミハイル・イワーノヴィッチ・コストゥイリョフ=竹口範顕
ワシリーサ・カールポヴナ=折林悠
ナターシャ=星野瑠莉
アブラーム・メドヴェージェフ=尾崎太郎
ワーシカ・ペーペル=小田勇輔
アンドレイ・ミートリイチ・クレーシチ=本多弘典
アンナ=冨山小枝
ナースチャ=山崎智子
クワシニャー=名瀬遙子
ブブノーフ=志賀優寛
サーチン=大多和民樹
役者=熊谷宏平
男爵=坂本勇樹
ルカ=浅井純彦
アリョーシカ=上原和幸
クリヴォイ・ゾープ=和田響き
だったん人=三瓶裕史
浮浪人たち=三浦潤子・上條珠理・正木ひかり・永野愛理・雨宮大夢・大橋隆一郎・永濱渉
9/10 Thu 19:00
9/11 Fri 19:00◆1
9/12 Sat 14:00
9/13 Sun 14:00
9/14 Mon ×××
9/15 Tue 19:00★
9/16 Wed 19:00★
9/17 Thu 19:00
9/18 Fri 19:00◆2
9/19 Sat 14:00
9/20 Sun 14:00
◆1=アフタートーク=堀潤さん
◆2=アフタートーク=白井聡さん
★=Low Price Day=2500円均一
TEE-Web ticket
『どん底』HP
blog
どん底からのことば~1
どん底からのことば~2
どん底からのことば~3
その報告をどん底でクワシニャー役の名瀬遙子よりお伝えします。
+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜
岡田先生は1974年から現在まで一貫して弱者の立場に立った様々な労働事件に携わり、
この国の方向を大きく変えた「国鉄闘争」や「オウム事件」、
現役自衛官の内部告発によって劇的勝訴に至った「護衛艦たちかぜいじめ裁判」など多岐にわたる弁護活動と共に、
よこはま九条の会などでも幅広く活躍されています。
劇団では2005年頃から毎回公演を観ていただき、
2012年にはアーノルド・ウェスカー作『大麦入りのチキンスープ』
公演のパンフレットに『サラー持続する志~身軽・尻軽・足軽~』という文章を寄稿していただきました。
今回は「労働弁護士から見た現代のどん底」というテーマで戯曲の中から幾つかの台詞を抜粋し、
その言葉から貧困、人権、戦争法案に至る現況などを自由にお話しいただくという事になりました。
が、抜粋をお渡しするのが直前になり、レジュメはなしでかなりの無茶振りでしたが、
多様な視点から倫しく深いお話を聞くことができました。
『どん底』の時代の失業、仕事自体がない時代の貧困とは違い、
人手不足が叫ばれながら派遣労働やブラック企業の増加など労働の質の低下や働く意欲や誇りの喪失、
相対的貧困率の低さに加え象徴的貧困の問題など《経済大国日本》の中で一見しただけでは分からない、
貧困のありようが違う現在、『どん底』の登場人物たちが皆、
貧民窟からの脱出を願うように、
今の日本のこの閉塞状況から脱出する契機をどう見いだすのか...
その答えは単純ではないけれど、
まず、自分だけ、一人だけの脱出や自分のために一人で闘うことはとても難しく【人権は守りあうもの】という意識が大切で、
貧困・労働・人権・戦争はどれも一体のものであり、
今こそ連帯を求める心が必要だとの事でした。
岡田先生の同僚であり、
オウムに殺害された坂本堤弁護士と殺害の実行犯となった医師の中川智正、
どちらも若く有能だった彼らが、
何故、殺される側、殺す側になってしまったのか。
そこには、「弱者のために...」という言葉を嫌い、
「弱者に寄り添い、共に生き、共に成長する」ことを目指した坂本弁護士と教祖・麻原への帰依、
自己の解脱と組織内での出世のみを目指した中川の生き方の選択に決定的な分岐点があったということ、
加えて組織や共同体は放っておけば必ず腐敗する。対立を恐れず、対話をすること。
時には『どん底』のルカのような異邦人、外部からの波紋を受け入れ、
色んな人が石を投げ込み「イモとイモがぶつかりあって泥が弾ける」ような状況を意識的に作る必要があるというお話しもされました。
更に...最高裁で敗訴したものの、なお闘っているJALの方がある集会で
「かつての国鉄民営化と、JALの不当解雇には同じ構造がある。
あの時、単なる支援ではなく、自分の問題として連帯し闘うべきだった」
と述べた事も紹介されました。
時の政治や状況によって《人権》は後退したり前進したり常にせめぎあう。
権利のための闘いは次世代に対しての義務であり、明日の自分の権利擁護のためでもある。
だからこそ今起きている様々な人権侵害、人間らしさを奪う行為を見逃さず、
自分の問題として捉え、皆で一緒に解決しようとする姿勢が大きな成果へ繋がる。
皆さん、身軽・尻軽・足軽に行動しましょうと熱く話されました。
『どん底』という作品のもつ今日性と共に、
今の危機的な状況を打破するための手がかりとなるような大変示唆に富む時間でした。
尚、岡田先生は先月、
長年にわたる弁護活動や人との繋がりを綴った自伝『証拠は天から地からー人権弁護士の立ち位置』(新日本出版)を上梓されました。
ぜひご一読ください。
文責:名瀬遙子
+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜+..+゜
東京演劇アンサンブル公演
どん底
2015年9月10日~20日
ブレヒトの芝居小屋
作……M・ゴーリキイ
訳……神西清
演出……三由寛子
音楽……池辺晋一郎
装置……三木元太
照明……真壁知恵子
効果……大場神
衣裳協力……竹内陽子
宣伝美術……本多敬
舞台監督……三木元太
効果オペレーター…篠原祐哉
制作……小森明子・太田昭・辻尾隆子
制作チーム……TEE運営委員会
演出助手 ……奈須弘子・永濱渉
舞台監督助手……入江龍太・雨宮大夢・大橋隆一郎
料金
前売一般=3800円 前売学生=3000円 Low Price Day=2500円
全席自由
■キャスト
ミハイル・イワーノヴィッチ・コストゥイリョフ=竹口範顕
ワシリーサ・カールポヴナ=折林悠
ナターシャ=星野瑠莉
アブラーム・メドヴェージェフ=尾崎太郎
ワーシカ・ペーペル=小田勇輔
アンドレイ・ミートリイチ・クレーシチ=本多弘典
アンナ=冨山小枝
ナースチャ=山崎智子
クワシニャー=名瀬遙子
ブブノーフ=志賀優寛
サーチン=大多和民樹
役者=熊谷宏平
男爵=坂本勇樹
ルカ=浅井純彦
アリョーシカ=上原和幸
クリヴォイ・ゾープ=和田響き
だったん人=三瓶裕史
浮浪人たち=三浦潤子・上條珠理・正木ひかり・永野愛理・雨宮大夢・大橋隆一郎・永濱渉
9/10 Thu 19:00
9/11 Fri 19:00◆1
9/12 Sat 14:00
9/13 Sun 14:00
9/14 Mon ×××
9/15 Tue 19:00★
9/16 Wed 19:00★
9/17 Thu 19:00
9/18 Fri 19:00◆2
9/19 Sat 14:00
9/20 Sun 14:00
◆1=アフタートーク=堀潤さん
◆2=アフタートーク=白井聡さん
★=Low Price Day=2500円均一
TEE-Web ticket
『どん底』HP
blog
どん底からのことば~1
どん底からのことば~2
どん底からのことば~3