a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

ブレヒトカフェ Vol.5 『浜下り外伝』&『水滴』 9

2017-06-16 17:55:18 | 芝居小屋企画
いよいよ本番間近、明日になりました。
朗読『水滴』のメンバー紹介をします。
今回は、朗読ということもあり配役があるわけではないので、
出演者の7人に『水滴』の中の好きな一文章を聞いてみました。




浅井 純彦
「テーブルの上に置かれたパパイアの熟れ過ぎて溶け始めた果肉から、
ねっとりとした匂いが漂い、オレンジ色の皮を被って一匹のカナブンが這い出した。
清裕が指で摘んで窓から放ると、カナブンは緑に輝いて青空に消えて行った。」
汚いもの、綺麗なもの、色の鮮やかさ、匂い、いろんなものが混在している。



雨宮大夢
「舌先が傷口に触れた時、爪先から腿の付根に走ったうずきが、固くなった茎からほとばしった。」
男性の生理現象の射精をここまで文学的に表現してるのは凄いな、と。
他にも、青い草の匂いなど、直接描写しないところが素敵だと思います。



大橋 隆一郎
「降りしきる雨は木々の葉にあたって細かい霧になり、入り口近くの岩陰のくぼみに隠れた石嶺と徳正の体に沁み込んだ。」
「水の粒子がガラスの粉末のように痛みを与えながら全身に広がっていく。」
『水』の表現が好き。



仙石 貴久江
「正面から見つめる睫の長い目にも、肉の薄い頬にも、 朱色の唇にも微笑みが浮かんでいる。」



竹口範顕
「この五十年の哀れ、お前が分かるか」
記憶とともに心の奥に押し込めていたものが、徳正の中から吹き出してくるこの台詞に、
戦が人の心に残す傷の大きさや深さが集約されているように感じます。
こんなことばを吐かずに済むような世の中であって欲しいと思います。



冨山 小枝
「水の粒子がガラスの粉末のように痛みを与えながら全身に広がっていく。」
痛みの表現が凄くよくわかる、同時に美しい。



洪 美玉
50年あまり、胸のうちに抱えなければならなかった秘密、罪悪感。
生者の側が彼らを呼び出したのか、 死者たちの側の思いやりなのか。
この作品に向かいながらユダヤ人の強制収容所で生き残った方々の手記を思い出す。
死んでいった者の分も生きなければという思いと、壮絶ゆえに語れない過去、
語っても分かってもらえないだろうという絶望感で苦しみ、自死する人もいる。
沖縄にも、過去に心をがっちり掴まれたまま人生を終えた人、そして今現在生きている人もいることでしょう。
この物語「水滴」の主人公もそうです。
この国はその責任をとらぬまま、気持ちに寄り添うことすらしないまま、
嘘を嘘で塗り固めながら進んでいく。
そこに小さくても亀裂をはしらせたい。
沖縄の人達の痛みを舞台上に立ち上がらせたい。
演劇でやれることの一つ…。
自分の胸にもきちんと刻みたいという思いです。





洪美玉は、一つに選べず思いを書いてくれました。
目取真さんの素敵な文章に7人とも惹かれています。
みんなの選んだ文章がどんな場面で表現され出てくるか、ひとつお楽しみに来てください。




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東京演劇アンサンブル ブレヒトカフェ Vol.5  
2017.3『沖縄ミルクプラントの最后』に続く ”オキナワ”

2017年
6月17日(土)14:00/19:00 
6月18日(日)14:00 
●お申込みTEL:03-3920-5232 FAX03-3920-4433
●前売り2800円 (当日3300円) ケンタウルスの会1500円 


朗読劇『水滴』 
作=目取真俊 
演出=三木元太 
照明=真壁知恵子

出演
浅井純彦/雨宮大夢/大橋隆一郎/仙石貴久江/竹口範顕/冨山小枝/洪美玉 


浜下り外伝
――そして目覚めると、わたしはこのイノーの海にいた。


作=宮城康博
演出=三由寛子 
舞踊=鷲田実土里
照明=真壁知恵子

出演
町田聡子/和田響き/志賀澤子/松下重人/奈須弘子/永濱渉


お問合せ・お申込
東京演劇アンサンブル劇団事務所
tel:03-3920-5232


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