NHK 高等教育の無償化 学生が通う大学などに“条件” 政府が方針 5月31日 1時33分(2018年)
「低所得世帯を対象とする高等教育の無償化をめぐり、政府は、学生の通う大学などで、卒業に必要な単位の1割以上の授業を実務経験のある教員が担当していることなどを支援の要件とする方針を固めました」
またぞろ、「ヤアヤア、学歴コンプレックスの安倍による高等教育破壊プランが」との声が出よう話である。
「高等教育の無償化をめぐり、政府は、年収380万円未満の世帯を対象に、所得に応じて段階的に大学などの授業料を減免するほか、生活費についても返済のいらない給付型奨学金を支払うなどの支援を行う方針です」
これははっきりとプラスであると評価したい。
…いやあの、親には申し訳ないが、学校出してもらったおかげで、給料の額面は親二人分より以上、貰ってるはずだから、私…。だから、大学・大学院教育の成果は、ハマれば、明らかなのだ。
ともあれこの「ハマれば」、ちゃんと就職にありつければ、というのが大問題。
そこでまず、学生の学業がきちんと進展すること、スキルが身につくことをきちんとチェックしたい:
「学生についても、成績の状況などを毎年確認し、1年間に必要な単位の6割以下しか取得していないときや、成績が下位4分の1に属するときは、大学などから警告を行い、連続して警告を受けた学生への支援は打ち切ると」
さらにそのスキルが、きちんとカネに繋がるようでなければならない―というわけで
「卒業に必要な単位の1割以上の授業を実務経験のある教員が担当していることや、理事に産業界など外部の人材を複数任命していることなどを支援の要件とする方針」
こんな風になる。まあ、言いたいことはわかる。ポピュリズムによりすぎだとは思うが。
実務の現場的には
「卒業に必要な単位の1割以上の授業を実務経験のある教員が担当していること」という条件は大学の教育カリキュラムへの暴力的な介入だと思う。我々は学生が四年間で学ぶべきことを徹底的に吟味してカリキュラムを作っているのだ。https://t.co/cKlmWsyNM0
— Hal Tasaki (@Hal_Tasaki) 2018年6月1日
ということもある。なおこの際、「我々は学生が四年間で学ぶべきことを徹底的に吟味してカリキュラムを作っているのだ」に対して、『だったら新時代に合わせて考え直せよ』という声が投げつけられるだろうことを考えておきたい。まあその、文科省からがんじがらめにされていたりして、こっち(現場の末端公務員)としては裁量の余地なんてろくろくねえや、という言い方もあろうし(私はそっちにあまり関わらない側である)、まあ観測用アドバルーンだよなこの政府案は、と言う感が。
なお実務教員と言う概念については
同志社の神学の先生、牧師でもあって毎週結婚式やってて自分が式やったカップルは離婚率低いんだって自慢してたから、実務家教員だと思う。
— 五味馨 (@keigomi29) 2018年6月2日
ということもあり、神職・僧職の籍のあるひとはばっちり実務家教員であり、つうことは僧侶養成大学はもはや政府提案を満たしてるじゃねえかさっさと援助してやれよ、という話にも。
大学ごとに無償化対象かどうか決めるのが馬鹿げている。
— 増田の准教授 (@ProfMasuda) 2018年6月1日
無償化を希望する学生だけが実務家教員の担当する単位を10%以上取得するようにすればそれで良いではないか。
出世払いになるなら無利子貸与と同じことなので、授業料を先に払って実務家教員のありがたいお話し免除を望む学生もいるだろう。
…これでよくない? という気もだいぶする。大企業から寄付金を募り、「トヨタ自動車記念水素電池研究講座」とか設置し、そうした実務講座の教員の講義を10%以上とること―ということにする。その講座に所属すればほぼ自動的に10%なんてクリアするし、そういうところから親企業・親企業系列の会社に推薦なんてのは見えるコースだ。青田刈りともいえるが刈られるほうにも利益がある。
別に大学の制度的設計にまで手を出す必要はない。なので
「卒業に必要な単位の1割以上の授業を実務経験のある教員が担当していることや、理事に産業界など外部の人材を複数任命していること」←めっちゃ露骨に利権を取りに来たね。これで若手研究者の将来はさらに絶望的になるわけだ。 https://t.co/0M7PCLkiFJ
— Kan Kimura (on DL) (@kankimura) 2018年5月31日
この「利権あさりじゃないか」説は、肌感覚としては「うんもう、そうなるよな、これ」という感がある。
実務家教員採用の制度化については、個人的には、90分授業を週7,8コマ、年間で30週休まずこなし、学生の友人関係や家族関係やバイトや就職の相談に乗り、不登校学生の家まで行って親と面談し、大学の広報イベントを企画運営し、土日はオープンキャンパスと入試業務に携わり(続く)
— Mizzo-Jilly (@penguin_train) 2018年6月1日
複数の委員会に入って複数の会議資料を準備して、教授会と学科会議とコース会議の資料も用意して、文科省向けの資料も作成して、科研費申請の書類を書いて研究費を獲得し、授業がない間は本読んで調査行って学会発表して論文書いてくれる人であれば、別に実務経験があろうがなかろうが大歓迎です。
— Mizzo-Jilly (@penguin_train) 2018年6月1日
現場教員の怨嗟の声が聞こえる思いである。
①学費を無償化しても4年間働けないという機会費用は発生するところ、まともな大学であればそれを埋め合わせるだけの稼得能力向上が見込めるのだがそういう場所だけでもないよな? という問題をどうするかが本質ですよ。
— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2018年5月31日
②貸与奨学金というのはここで、あとで自分が返すことになるからきちんと考えなさいねという形で個々人に評価を委ねるシステム。それを外すのであれば何らかの公的な評価・管理が必要になると、前から言ってるでしょうが。だから無償化は大学にとって毒饅頭なんだよ。
— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2018年5月31日
③しかも公的管理を外せば能力向上も何もなく学生を4年間遊ばせてむざむざ機会費用を無駄に払わせる「大学」が得をするわけで、それこそが定員割れ低レベル大学の延命策にほかならない。指摘すべき問題は現在の案が稼得能力向上の基準としてトンチキであるということで、基準自体ではない。(終)
— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2018年5月31日
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます