IT革命の虚妄 (文春新書)森谷 正規文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
平成13年の著書で一世代前のITがほんとうにビジネスとして発展するのか
また否かを当時の視点で述べている。
タイトル「IT革命の虚妄」は、なんともITを背景として発展してる今日の
ビジネスの状況を皮肉る意味あいが強いのか、否定的な見方なのか疑問を
持ちながら読んだ。
内容的には、ITの発展はBtoBに依存し、発展するかが企業の拡大への肝と
いう内容の記述。この辺が今のITビジネスの状況を照らし合わせると面白い。
5年前というとまだインフラの整備がブロードバンドにいたっていなかった。
やはりこれがキーであると感じる。BtoCビジネスもブロードバンド次第という
ところは当時あった。取引そのものは、企業間のもので、コンシュウマーと
企業の取引はなかなか成熟しないのではないかという面は当時の懸念として
あったように思う。しかしADSL、FTTHへと進化したインフラがもたらしたの
は、常時接続、高速のデータ伝送。これによってネット上での商品情報の
展開も早まりいろんな角度からの比較、画像、動画による視覚的な情報の
向上でコンシュウマーへ与える購入動機を促進できる。現在はネットオークション
でのCtoCビジネスも拡大しユーザにも定着している。
興味深かったのは、自動車産業とIT産業の成立ちの違いである。
自動車産業は、長い時間かけて技術を発展させ必要な部材もも増やし
関係企業も発展させてきた。しかも技術革新を繰り返しながら長い時間を
かけて業態を発展させてきた。
IT産業も自動車産業に近い業態の成熟が可能かどうかが重要であると感じた。
著者はその面は否定的に見ていた。一時的な産業への寄与は高いが、その成長
スピードが早く、ある程度の投資後は、その投資効果も定常的なものとなり
成長も飽和するのではというのが著者の懸念である。たしかにITバブル崩壊後
企業の低迷期のころは、そうであった。しかいその後はどうであろうか。
コンシュウマービジネス、Web2.0的なビジネスサイクルの循環もあり
そこそこ成長と産業の牽引にもなってるのではないかと感じるのである。
少し業界をひいき目に見てるかもしれないが、著者の論の内容と比較
しても現状は、だいぶ異なる。
記述してある内容と現状を比較しながら読むとなかなか面白い本であった。