「失われた十年」は乗り越えられたか―日本的経営の再検証 (中公新書)下川 浩一中央公論新社このアイテムの詳細を見る |
バブル崩壊後の低迷した日本経済を実際に体験してきたが、その原因とか理由に
ついては、得に自分としても整理することなく日々の仕事を続けてきた。
ここにきて、これからの日本経済とか、「失われた十年」というキーワードを
良く耳にすることもあって、あらためてこの手の本を探ってみた。
この10年で日本の消化した問題、まだ相変わらず引きづってる問題などについて
金融、各業種、アジア、企業体質という観点で上手く纏めあげてると思う。
個人的には、考えさせられる問題提起がいろいろとあった。
「失われた十年」が長期化したことへの分析は、金融のグローバル化への対応が
遅れたことと、そうさせた政府の金融規制緩和のおくれ、行政の護送船団方式
で金融業を保守的に守るという姿勢が主な理由という記述内容。
銀行業は、リストラと中国市場拡大の背景に各企業体力の一時的回復による
収益の増強で、不良債権の処理と公的資金の返還も進んでいるのであろう。
最近でいうとみずほFCの収益の運用について世論の指摘も出てきてるほど。
しかし銀行そのもの機能としては、相変わらず間接資金の獲得ということが
メインのようにも思え、一部投資信託的な機能等を持ち合わせるよう銀行間
の差別化を図る為、若干の変革は見えるがその本質的な体力改善にはまだまだ
と感じる。感覚的には中国市場の拡大によるたなボタ的な一時的な潤いに
見えてしょうがない。現状も貸付金利は日銀の0金利政策から脱却で上げているが
預金に対する金利については、預金してても意味のないような金利のままで
ある。銀行というところは、民間企業であるが自らは公的機関の意識がぬけない
のではないかと思うところもある。
それに比較して自動車業は、バブル期以前から海外市場を開拓し世界で生き残る
為のすべと格闘してきた。輸出における海外需要掘り起こしから、現地生産に
移行して為替レートの問題をクリアーし、品質と海外でのマーケット開拓と
日本の業態のなかで、もっとも世界を相手に切磋琢磨してきた業種。自動車
産業は、市場掘り起こし方によっては、シェアを大きく変えることもできる
面もあり需要事態は戦略的なもって行きかたで大きく変わるのだと感じた。
家電産業は、韓国のメモリー関連の企業の台頭、アメリカのメモリーから
MPUへの事業展開の脱却などで日本企業が安泰な市場ではない。しかし
そこをこれまでの資産であるH/W、S/Wの設計開発能力で情報家電での
キー製品の展開が今後のポイントとなるのかと思う。
流通産業については、ヨーカー堂、イオンの台頭はあるものの、外資参入の
ハードルは下がってる。現在は日本市場の特性で需要の掘り起こしが独特で
ある為、外国企業の参入も目だったもの無いが今後どうなるかというところ
はある。
そのほか、景気回復というメディアの報道はあるが中国市場の拡大にともなう
たなぼた景気という感は否めなく、身の周りを考えると潤ってるという感は薄い。
リストラも人減らしという感だけで、顧客満足、社員満足ということから
向上する事業展開を推進してる企業も少ないことから、この辺の本質的な
取り組みがあってこそ製品、市場の発展につながると考えるとその道は
まだ遠いように思える。